内側側副靱帯損傷とは?|症状と原因|自分で治す治療法・セルフケア・予防法

足指ドクターによる解説

YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗

足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(7万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。

目次

はじめに

内側副靭帯は膝にかかる負荷や圧力(stress)を軽減して安定性(stability)を高める役割があります。X脚のような不自然な脚の形になると、膝の外側に負担がかかることで内側側副靭帯に過度のストレスがかかる可能性があります。そのため、膝の関節や周囲の組織に問題を引き起こす可能性があります。X脚を改善させることが内側側副靱帯損傷を予防する唯一の方法です。

概要

膝は、次の主要な構造で形成されています。

膝の構造

1)骨:膝は大腿骨(大腿骨)、脛骨(脛骨)、腓骨(腓骨)の3つの骨で構成されています。大腿骨の上端で脛骨と接続し、下端で脛骨と腓骨と接続します。

2)靭帯:膝の周囲には、靭帯と呼ばれる組織があります。靭帯は関節を安定させ、サポートします。最も重要な靭帯には、前十字靭帯(ACL)、後十字靭帯(PCL)、内側側副靭帯(MCL)、外側側副靭帯(LCL)があります。

3)軟骨:膝関節には、軟骨と呼ばれる滑らかで弾力性のある組織があります。軟骨は骨同士が摩擦するのを防ぎ、関節のスムーズな動きを可能にします。

4)坐骨筋:膝の後ろにある坐骨筋は、関節の安定性を提供し、膝の伸展を助けます。

これらの構造がうまく連携して働くことで、膝関節は正常に機能し、体重を支え、歩行や走行などの動作を行うことができます。

内側側副靱帯損傷とは?

内側側副靱帯損傷とは、膝の内側に位置する側副靱帯が損傷を受けた状態のことを指します。側副靱帯は膝の安定性を保つための重要な組織であり、内側側副靱帯が損傷すると膝関節の安定性が損なわれ、痛みや腫れ、機能障害が起こることがあります。

内側側副靱帯損傷は、スポーツや急激な動きによる捻挫などが原因となることが多いのですが、起こしやすい人とそうでない人がいます。その違いは、膝関節のアライメントが正しい位置にあるかどうかなのです。そのため、スポーツなどで内側側副靭帯を損傷しにくくするカラダ作りのためにも、この記事を読んでいただければ幸いです。

症状

内側側副靱帯損傷の症状には、以下のようなものがあります。

内側側副靱帯損傷の症状

1)膝の内側に痛みや圧迫感がある

2)膝が不安定に感じる

3)膝を曲げたり伸ばしたりすると痛む

4)膝の腫れや内出血がある

5)歩行や走行時に膝が痛む

6)膝の可動域が制限される

7)膝の関節の安定感が低下する

これらの症状がある場合は、早めに適切な足指の治療を受けることが重要です。

原因・発症のメカニズム

内側側副靱帯損傷の発生要因

内側側副靱帯損傷の発生要因としては、一般的な医学では以下のようなものが挙げられます。

原因

1)突然の激しい捻挫: 足首を急激に捻ることで内側側副靱帯に負荷がかかり損傷を引き起こすことがあります。

2)スポーツや運動時の負荷: サッカーやバスケットボールなどのスポーツや、ランニングなどの運動中に強い負荷がかかることで内側側副靱帯に損傷が生じることがあります。

3)足首の弱さや不安定さ: 足首の筋力が不足していたり、過去に足首の捻挫を経験している場合には、内側側副靱帯が弱くなり、損傷しやすくなります。

4)足首の歪みや骨の異常: 足首の骨や関節に問題がある場合、内側側副靱帯に過度の負荷がかかり、損傷を引き起こす可能性があります。

5)過度な疲労や過剰な負荷: 長時間立ち続けたり、激しい運動を続けたりすることで足首の筋肉が疲労し、内側側副靱帯に負荷がかかりやすくなります。

突発的な外力による損傷以外では、上記の5つが発生要因となります。しかし、同じ運動(スポーツなど)をしていても、損傷しやすい人とそうでない人がいます。そこには何の違いがあるのかを考えてみることが大切です。

内側側副靱帯損傷の力学的なメカニズム

正しい姿勢での内側側副靭帯

ニュートラルポジションは、正しい姿勢を維持するための基本的な姿勢のことです。この姿勢は、身体の各部位が正しい位置に保たれ、体重が均等に分散されている状態を指します。身体 ( 関節、筋肉、靭帯 ) への負担が最小限で全身の運動機能や循環機能の働きがバランス良く円滑に発揮し易い状態になります。

この状態であれば、膝関節のアライメント(膝の正しい位置や角度)はまっすぐなので、内側側副靭帯には負荷がかかりません。

悪い姿勢での内側側副靭帯

ところが、親指の機能不全(外反母趾)で回内足(足が内側に倒れる)が起こると、X脚になり内側側副靭帯の損傷を起こす可能性が高くなります。

小指は基本的に「足が内側に倒れないようにするための役割」があるため、外反母趾や親指機能不全(親指のパーができないなど)があると、歩く(足を蹴り出す)ときに足が内側に倒れてしまうのです。

親指と小指が正常に働くことで、人はまっすぐに立って、まっすぐに歩くことができます。つまり、外反母趾や親指機能不全の状態で歩くことは、X脚になることと直結するのです。

豆知識

足が内側に倒れる原因として、内反足という変形もあります。これはかがみ指や浮き指によって足裏の筋力が低下し、踵の骨が外側に傾くことをいいます。踵が外側に傾くと、踵の上に位置する下腿骨が内側に倒れてバランスを取ろうとします。そうすることでX脚変形になることもあります。

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回内足
内反足

内側側副靭帯は膝の内側に位置し、膝の安定性を保つ役割を果たしています。親指の機能不全(外反母趾)→回内足→X脚になると、膝が内側に大きく捻じれることで内側側副靭帯が過度に伸展されたり断裂することがあります。これによって膝の安定性が損なわれ、痛みや腫れ、機能障害が生じることがあります。

検査・セルフチェック

内側側副靭帯損傷を疑う場合、以下のような症状が見られるかどうかチェックしてみてください。

セルフチェック

1)膝の急な腫れや内出血

2)膝の安定性の低下や不安定感

3)膝を捻ると痛みが生じる

4)膝の動かし方に制限がある

5)歩行時や運動時に膝の痛みや不快感がある

6)膝の腫れや痛みが長引く

姿勢のセルフチェック

まずは骨盤から下の写真をスマホでも良いので撮影してみましょう。撮影するときには「両足をそろえる」ことに注意します。

「踵の中心」から垂直線を引きます。理想的には、この線が「膝の中心」を通ります。ほとんどの人が膝の中心よりも外側を通っていたのではないでしょうか?

次に、通っている線が左右で違いがないかをみます。踵の中心からの垂直線は、左脚の方が膝の中心よりも離れていることがわかりますね。この場合、左脚のX脚の方が進行しているので、左脚の内側側副靭帯損傷を起こしやすいことを意味します。

足指の変形チェック

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外反母趾
内反小趾
親指の浮き指
小指の浮き指
かがみ指
寝指

ほとんどの現代人は、間違った靴・靴下の選び方、履き方などによって足指が変形し、土台が崩れています。詳細は以下のサイトに記載しているので参考にされてください。特に親指の浮き指がある人は要注意です。

簡易的に親指の変形を確認できるチェックシートも用意しています。ダウンロードをして、自分の足を乗せて確認してみてください。

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治療

内側副靭帯損傷の治療法は、損傷の程度や症状によって異なりますが、一般的に以下の方法が行われます。下記の治療(保存療法)は一時的に症状が緩和することもありますが、再発を繰り返すことが少なくありません。

一般的な治療

1)保存療法:患部の安静と保護が必要です。アイシングや圧迫、挙上を行うことで炎症を軽減し、腫れや痛みを和らげることができます。

2)物理療法:リハビリテーションや理学療法を行うことで、関節の可動域を回復させ、筋力を強化することができます。また、テーピングやサポーターを使用することで関節の安定性を保つことも重要です。

3)投薬治療:痛みや炎症を抑えるために、痛み止めや抗炎症薬を服用することがあります。

4)外科手術:重度の損傷や回復が十分に見込めない場合には、外科手術が必要となることがあります。手術によって損傷した靭帯を修復するか、再建することが行われます。

内側副靭帯損傷の治療には多くの場合、保存療法で良好な結果が得られますが、再発させずに根治させるには足指ケアを行い、X脚を改善させることで膝の内側に負担をかけず、内側側副靭帯に過度のストレスをかからないようにすることが大切です。

内側副靭帯損傷を改善する足指ストレッチ「ひろのば体操」

1日1回5分を目安にやってみましょう。2〜3日やってみて症状に変化が見られないときは、1日2〜3回に回数を増やしてみることをお勧めします。目標は足指のパーが30秒間できるようになることです。

小指と薬指の間に自分の手の指がスッポリと入るくらいひらくことが理想

 

X脚を最適にサポートする矯正5本指靴下

これまで綿やシルクで機能性5本指靴下を製作し、臨床現場で多くの患者様に試してきましたが、靴や靴下の中で足が滑るという問題を解決することができませんでした。そこで、繊維会社と2年の歳月をかけて理想的な繊維を完成させ、矯正5本指靴下「YOSHIRO SOCKS」が誕生しました。内側副靭帯損傷に悩んでいる方は、試してみてください。

靴下選びの注意点

純綿やシルク素材のものは滑りやすい

シルケット加工(またはマーセライズ加工)というものがあります。シルケット加工とは、シルクの様な光沢を持たせる加工のことで、糸を苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)の液に浸し、手延べうどんのように糸を伸ばして糸の断面を整える加工のこと。主に綿やシルク繊維(コットン)に対して加工をすることが圧倒的に多いです。

綿の断面が整い発色性もよくなり、加工をすると毛羽も抑えられるため、見た目に高級感があります。なめらかですべるような履き心地なのですが、なめらか(滑らか)ですべる(滑る)というように読んで字が如く、靴の中や靴下の中で足が滑りやすくなります。つまりは足指の変形を起こしやすい素材ということなのです。

もちろんシルケット加工をしていない綿やシルク素材もありますので、そういった素材を選ぶこともひざ痛の予防には大切な要素です。

5本指靴下で足指の機能を発揮させる

一般的な靴下はチューブソックスとも呼ばれ、世界中の方のほとんどがこのタイプの靴下です。長年使われてきた形状なのですが、チューブタイプは足指をうまく使うことができなくなります。そのため5本に分かれた靴下が良いのですが、このタイプにも色々なものがあります。

一番大切にしたいのは、自分自身の足にジャストフィットするか。指先や甲まわりがゆるかったりすると、せっかくの5本指靴下でも「滑り」が発生してしまいます。逆にフィットしすぎて圧迫感を感じる5本指靴下も血行を妨げてしまうためオススメできません。自分が使ってみて「心地よい」と感じる5本指靴下を見つけることが大切です。

また、アーチをサポートすることは大切なのですが、アーチ構造というのは強く持ち上げすぎると機能を失ってしまう特性があるので、アーチ部分もあまり圧迫感がないものを選ぶようにしましょう。

正しい靴の選び方

足指が変形するいちばんの原因は、靴の選び方と履き方にあります。背骨のトラブルの多くは、足の指をちゃんと使っていないことが原因です。足と方は遠く離れた場所にあるので、ピンとくる人は少ないと思います。「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないですが、足先から頭までカラダは全てつながっているので、内側副靭帯損傷で悩まれている方はこの機会に足元を見直してみてください。

適度なウォーキングが内側側副靭帯への負担を軽減する

より効果的にするために

足指ストレッチや矯正5本指靴下(YOSHIRO SOCKS)を履きながら、日常生活を少し変えることで、姿勢を正しい状態で保持し、内側副靭帯損傷を改善させ、再発を予防することができます。正しい姿勢は、正しい筋肉によって作られていきます。正しい筋肉は「足指を広げて伸ばした状態」で歩くことでしか作ることができません

日常生活で気をつけること

・小股で歩くようにする
・坂道や階段を上るなど足指先を使う
・室内で履き物を履かないようにする
・1日6,000歩以上歩くように心がける
・靴紐をしっかり絞めるようにする
・オーダーの枕やマットを使わない
・正しい靴選びを心がける
・靴べらを使って靴を履くようにする


足指のストレッチや矯正5本指靴下(YOSHIRO SOCKS)を履いて歩くことで、足指を機能的に使うことができます。①足指変形が改善→③重心が中心に→④X脚が改善→⑤脚長差が改善→⑥内側側副靭帯へのストレスが改善という流れです。

参考文献

1. 外反母趾の機能解剖学的病態把握と理学療法.湯浅慶朗.理学療法 第31巻 第2号 2014.2 P159-165
2.『足指をそらすと健康になる』湯浅慶朗/著 PHP研究所 2014.6
3.『たった5分の「足指つかみ」で腰も背中も一生まがらない!』湯浅慶朗/著 PHP研究所 2021.6

湯浅慶朗
足指博士
足指研究の第一人者。足指研究所所長。日本足趾筋機能療法学会理事長。ひろのば体操、YOSHIRO SOCKS、YOSHIRO INSOLE、ハルメク靴の開発者。東京大学や国際医療福祉大学で研究を行う。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長・通所リハビリテーションセンター長。足指のスペシャリストとしてNHKガッテン・NHKサキどりに出演。著書多数。テレビ出演は『ガイアの夜明け』『NHKガッテン』『NHK BS 美と若さの新常識』『NHK サキどり』ほか多数出演、著書は『たった5分の「足指つかみ」で腰も背中も一生まがらない!』(PHP出版)など多数。ハルメクとオシャレな矯正靴を共同開発しています。

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