足底腱膜炎(足裏の痛み)の症状と原因|自分で治す治療法・セルフケア・予防法

足指ドクターによる解説

YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗

足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(7万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。

知っておくべきこと

・足底筋膜炎は、歩行や足の動きの際に使用される足の組織である足底筋膜の炎症です。
・一般的な医学では足底筋膜炎の原因は完全には明らかではありません。
・足底筋膜炎は、靴の種類や履き方、靴下の種類、足の構造、使いすぎ、歩行面の種類など、さまざまな要因によって引き起こされる可能性があります。
・足底筋膜炎の主な症状はかかとの痛みです。
・一般人口の4%〜7%が常にかかとの痛みを抱えており、そのうちの約 80% は足底筋膜炎が原因です。
・足底筋膜炎の治療には通常、手術は必要ありません。

目次

概要

足底筋膜炎は、かかとの痛みを引き起こす最も一般的な症状の 1 つです。足底筋膜 (足の裏に沿って走る丈夫で線維性の組織の帯) の炎症が関係しています。足底筋膜はかかとの骨 (踵骨) と足の指の付け根に付着しています。土踏まずを支えるのに役立ち、歩行中の足にかかる衝撃を吸収するクッション、吸収した衝撃を蹴り出す際のエネルギーとして活用するなどの重要な役割を果たします。

足底筋膜の緊張やストレスは、足に体重をかけたとき (耐えるときなど) に増加します。足の指の付け根とつま先を蹴り出すときにも緊張が高まります。これらの動きはどちらも、通常の歩行やランニング中に起こります。足指が変形したまま使いすぎたり時間が経過すると、筋膜の弾力性や弾力性が失われ、日常生活で刺激を受けることがあります。

通常は自分で痛みを和らげることができますが、かかとや足の痛みが2週間以内に改善しない場合はこの記事を読んでみてください。

原因

足底筋膜は、歩いたり、走ったり、スポーツをしたりするときに足にかかる大きな負荷を吸収するように設計されています。ただし、圧力がかかりすぎると、組織が損傷したり裂けたりすることがあります。損傷に対する体の自然な反応は炎​​症であり、その結果、かかとの痛みと足底筋膜炎の硬さが生じます。

足指が変形(外反母趾・内反小趾・かがみ指・浮きゆび)していたり、偏平足、ハイアーチ、足の筋力が低下、太りすぎまたは妊娠していて重心が踵寄りになっている、アーチサポートが不十分または靴底が硬い靴・踵の支えが不十分な靴(ヒールカウンターが浅い・柔らかい)を履いている場合、ふくらはぎの筋肉が硬くなったり、足底腱膜に大きな負荷がかかり、足底腱膜炎の原因になることがあります。

足底腱膜炎と足指変形について

実は、足底筋膜炎の痛みの原因は、「足指の変形」にあります。「足底腱膜」とは、かかとの骨から5本の指のつけ根の骨に向かってと腱が扇状に広がっている組織のこと。足底腱膜は足のアーチ構造を保持し、スプリングのように荷重時にショックを吸収する役目があります。

ここで注目して欲しいのは、足底腱膜が付着している部分が「足指」であること。つまり足指が「浮き指」「かがみ指」になると、足底の筋肉が硬くなり、筋肉がくっついている「かかとの骨の部分」と「足指の付け根の部分」が引っ張らたままになったり、過度に緊張したままになります。

筋肉などの組織が硬くなると、歩いたり走ったりジャンプしたりする時に、本来は柔軟なはずの組織がうまく伸び縮みできずに、無理にギュッと引っ張られて、足底筋膜がくっついているかかとの骨の部分や足指の付け根の部分辺りに小さな筋断裂が起きて痛みを引き起こしているのです。

また、足底腱膜炎にはどのように靴を履いているかが大きく影響することがあります。特に以下のような靴を履いている方は要注意です。

足底筋膜炎の要因となるもの

・室内でスリッパ・サンダル・草履などを履いている
・紐を緩めにして靴を履いている
・靴底や踵の支え(ヒールカウンター)が柔らかい靴
・クッション性がありすぎる靴
・幅が広い靴
・凹凸(おうとつ)のある中敷(インソール)の靴
・滑りやすい素材(綿やシルク)の靴下を履く

かかとがない靴やかかとが脱げやすい靴などは、靴の中で足が滑り、靴が脱げないように無意識に足指に力を入れます。この状態が長期間・長時間続くと足指が変形していきます。立っている状態で足指をギュッと握ってみるとわかると思いますが、ふくらはぎや太ももだけでなく、足裏の筋肉が硬くなることがわかります。これが足底筋膜炎の症状につながってしまうのです。

足指が変形する原因は?

残念なことに、ほとんどの現代人は、間違った靴の選び方、履き方などによって足指が変形し、土台が崩れています。靴の中で足が前後に滑ると、足指が滑りを止めようとして、かがみ指(ハンマートゥ)や浮き指になるのです。また、靴下やスリッパによっても、足指が曲がることがあります。

また、足の骨はたくさんの筋肉で支えられてまっすぐな形をしていますが、ほとんどの筋肉が足指に付着しています。そのため、足指を機能的に使わず歩くと、足の筋力が落ちていくことも医学的にはあまり知られていません。

靴下の盲点

世界中のほとんどの人が履いている通常の筒型の靴下(チューブソックス)では、足指に4g~9gf/㎠の力がかかり、足指を圧迫していきます。また多くの綿やシルクの靴下にはシルケット加工が施されているので、靴や靴下の中で足が滑りやすくなります。滑りやすく、足指に圧力のかかる靴下は、足指機能不全を引き起こし、かがみ指や浮き指になりやすくなります。逆にブカブカのチューブソックスでは、靴下の中で足がズルズルと滑るので、かがみ指や浮き指になってしまいます。

症状

足底筋膜炎の痛みは通常徐々に増加し、通常はかかとまたは足の裏に沿った痛みを引き起こします。足を踏み外したり、高所から飛び降りたりした後に痛みが突然起こることもあります。ベッドから起き上がった後の最初の一歩や、長時間座った後の最初の一歩で症状が最も強くなることもあります。症状は、日中の活動やウォーミングアップ後に軽減されることがありますが、長時間または激しい活動の後は悪化する可能性があります。また、裸足やサポートが最小限の靴を履いていると、痛みがより強く現れる場合もあります。

検査・診断

身体検査では、医師がかかとや足の裏の他の部分を触診して押し、問題がないかどうかを評価し、痛みが発生している場所を確認します。足を曲げて、感じている感覚や痛みを説明する必要がある場合もあります。医師は、足の痛みを避けるために歩き方を変えているかどうかを確認するために歩くように指示することもあります。

疲労骨折などの他の足の痛みの原因を除外するために、骨の画像を作成するX線検査を指示することがあります。超音波検査またはMRI検査 (いずれも軟部組織の画像を作成する) により、足底筋膜炎の診断を確定することができ、特に非外科的治療でまだ痛みが軽減していない場合に有効です。これらの画像検査では、炎症を起こした筋膜ではなく、神経の刺激や炎症が痛みの原因になっているかどうかも判断できます。

ポイント

かかとの棘(とげ)=骨棘(こつきょく)はレントゲンで確認できます。かかとの骨棘は、足底筋膜付着部 (足底筋膜が付着しているかかとの骨の場所) の長期にわたる緊張の結果である可能性があります。しかし、かかとに骨棘がある人のほとんどはかかとに痛みを感じません。かかとの骨棘は足底筋膜炎の原因ではないため、足底筋膜炎の痛みは骨棘を除去しなくても治療できます。また、足底筋膜の過緊張や伸長した状態が改善されると、自然に消失することがあります。

治療

その他の保存的アプローチには、安静、マッサージ、温熱、アイシング、ふくらはぎの強化運動、過体重または肥満の減量、アスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID) などがあります。また、足底筋膜炎の治療にNSAIDの使用が一般的ですが、その使用では患者の推定20%には症状の軽減が見られません。

より保存的な処置に抵抗性であることが証明された足底筋膜炎の症例には、ときにコルチコステロイド注射が使用される。コルチコステロイドの注射は、1カ月までの短期的な疼痛緩和には有効ですが、それ以降は無効であるというデータもあります。

もう1つの治療法は、足底イオン泳動法として知られています。この方法では、デキサメタゾンや酢酸などの抗炎症物質を足に局所的に塗布し、電流を流してこれらの物質を皮膚を通して伝達します。6か月持続した足底筋膜炎の痛みを軽減するために1~3か月間のナイトスプリントの使用を支持するエビデンスもあります。ナイトスプリントは、足首をニュートラルな位置に固定し、睡眠中にふくらはぎと足底筋膜を受動的にストレッチするように設計されています。

いずれも一時的な効果はありますが、対症療法のため再発を繰り返します。根本的な解決、再発予防のためにはセルフケアによる足ゆびストレッチをお勧めします。それに合わせて正しい靴の選び方、靴の中で足が滑らないようにするための正しい靴下選びも大切です。

セルフケア

足底筋膜炎の症例の約90% は、保存的治療で6か月以内に改善し、治療に関係なく1 年以内に改善します。しかし、スポーツをしていたり、立ち仕事や力仕事をしている人にとっては、1日でも早く改善させたいと思うはず。足ゆびストレッチは足底筋膜炎の最良の治療法の1つです。

一般的にストレッチは足底筋膜とアキレス腱に重点を置く必要がありますが、ストレッチやマッサージをしているにも関わらず、足底筋膜炎が治らないという方は多いはずです。そこには2つの理由があります。

  1. 筋肉を柔らかくするための治療方法が間違っている
  2. 筋肉を硬くしてしまう原因が解消されていない

足底腱膜とアキレス腱が硬くなった原因が足指の変形である場合、一番最初に行ったほうが良いストレッチは足指です。足ゆびストレッチは足底の筋肉(足底筋膜など)を伸ばしていくので、下腿の筋肉も強化し、足首を安定させるのに役立ちます。多くの方は2週間〜4週間以内に足底筋膜炎の症状が改善しています。

足底筋膜を伸ばすストレッチ「ひろのば体操」

1日1回5分を目安にやってみましょう。2〜3日やってみて症状に変化が見られないときは、1日2〜3回に回数を増やしてみることをお勧めします。

 

STEP1 いす、または床の上に座り、片方の足を太ももの上に乗せる

・膝をなるべく倒す
・足首が上に反らないようにする
・ももの上にきちんと足の乗せる

 

STEP1-2 上から見て、足の位置が正しいかを確認しましょう

・足の甲はしっかり反らせましょう
・足首が少し太ももから出るようにします
 

STEP2-1 足指の間に、手の指を入れる

・手指の根元に1本ずつ足指の先端を入れる
・足指の根元にすきまができるようにします

 

STEP2-2 入れた指の位置を確認しましょう

・手の根元に足指の先端だけが乗る感じです
・手の根元にぴったりと足指先を密着させる

 

STEP2-3 手の指を入れすぎないように

・足指が手の指から出ないくらいが理想です

 

NG 足の根元まで入れないように注意する

・足指の根元まで手指を入れてしまうとうまく曲げられなくなります

 

STEP3 足指を入れた手を優しく握る

・足指の付け根より少し上に手がくる
・手の親指で足の親指を軽く押さえる

 

NG

・手の指を足の付け根いっぱいまでさし込んでいると反らせにくい

 

STEP4 足指を甲のほうへ反らす

・優しく、ゆっくりと反らせる
・手の根元で足指先を押すようなイメージで
・足指の関節が90度になると理想的
(かたい場合には無理をしない)
・反らせたら5秒以上キープ
(かたい場合には30秒キープする)

 

STEP5 足指を甲のほうへ反らす

・やさしく、ゆっくりと
・甲を伸ばすイメージで反らせていく
・手のひら全体で足裏を軽く押す
・反らせたら5秒以上キープ
(かたい場合には30秒キープ)

 

STEP6 STEP4と5を繰り返す

STEP4と5を繰り返し行ったら、逆の足も同じように反らせる。両足で最低5分ほどできればOK。かたい場合には片足10分ほど行うと効果的です。

自分で行うことが難しい場合には、誰かにやってもらいましょう。

その他のストレッチ

ふくらはぎのストレッチ
片膝を伸ばし、かかとを地面につけて、壁に寄りかかります。もう一方の脚を前に置き、膝を曲げます。ふくらはぎの筋肉とかかとのコードを伸ばすには、制御された方法で腰を壁に向かって押します。10秒間その位置を維持し、リラックスします。このエクササイズを片足ごとに 20 回繰り返します。ストレッチ中にふくらはぎが強く引っ張られるのを感じるはずです。

足底筋膜ストレッチ
このストレッチは座った姿勢で行います。患部の足をもう一方の足の膝の上に交差させます。痛みのある足のつま先をつかみ、制御された方法でゆっくりと自分の方に引っ張ります。足に手が届きにくい場合は、足の親指にタオルを巻き、足の指を手前に引き寄せやすくします。もう一方の手を足底筋膜に沿って置きます。筋膜を伸ばすと、足の裏に沿ってしっかりとしたバンドのように感じられるはずです。ストレッチを10秒間保持します。これを片足ごとに20回繰り返します。このエクササイズは、朝に立ったり歩いたりする前に行うのが最適です。

予防

足底腱膜炎の原因は、トレーニング量の増加や体重の増加による足底腱膜への負担の増加(オーバーユース)と言われていますが、どんなにトレーニングをしても症状が出ない人や、体重が軽くても症状が出る人もいるため、医学的にはっきりとした原因がわかっていません。

扁平足やハイアーチ、回内足、足底の筋力や柔軟性の低下などもその原因と言われていますが、それも全て足指が変形した結果として起こるもの。つまり根本的な再発予防には足指を本来の状態に戻し、足指の機能を最大限に発揮できるようにすることが大切なのです。トレーニングの強度・時間を見直すことも大切ですが、練習不足で試合に出られなかったり、足指のことをないがしろにしてしまい、再発を繰り返すことでスポーツを諦めた方を多く見てきました。

インソールやテーピングを利用して負担を軽減させることも大切だし、タオルギャザーなどの筋力の維持向上のためのエクササイズ、竹踏みやゴルフボールを利用した足裏のマッサージなどのリラクゼーションを行うことを病院で勧められると思いますが、まずは何よりも足指ストレッチがオススメです。

正しい靴の選び方

足指が変形するいちばんの原因は、靴の選び方と履き方にあります。足腰などのトラブルの多くは、足の指をちゃんと使っていないことが原因です。靴をはいた状態で脚の指の動きを保つには、正しい靴選びが重要です。

正しい靴下の選び方

純綿やシルク素材のものは滑りやすい

シルケット加工(またはマーセライズ加工)というものがあります。シルケット加工とは、シルクの様な光沢を持たせる加工のことで、糸を苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)の液に浸し、手延べうどんのように糸を伸ばして糸の断面を整える加工のこと。主に綿やシルク繊維(コットン)に対して加工をすることが圧倒的に多いです。

綿の断面が整い発色性もよくなり、加工をすると毛羽も抑えられるため、見た目に高級感があります。なめらかですべるような履き心地なのですが、なめらか(滑らか)ですべる(滑る)というように読んで字が如く、靴の中や靴下の中で足が滑りやすくなります。つまりは足指の変形を起こしやすい素材ということなのです。

もちろんシルケット加工をしていない綿やシルク素材もありますので、そういった素材を選ぶことも足底腱膜炎の予防には大切な要素です。

5本指靴下で足指の機能を発揮させる

一般的な靴下はチューブソックスとも呼ばれ、世界中の方のほとんどがこのタイプの靴下です。長年使われてきた形状なのですが、チューブタイプは足指をうまく使うことができなくなります。そのため5本に分かれた靴下が良いのですが、このタイプにも色々なものがあります。

一番大切にしたいのは、自分自身の足にジャストフィットするか。指先や甲まわりがゆるかったりすると、せっかくの5本指靴下でも「滑り」が発生してしまいます。逆にフィットしすぎて圧迫感を感じる5本指靴下も血行を妨げてしまうためオススメできません。自分が使ってみて「心地よい」と感じる5本指靴下を見つけることが大切です。

矯正力のある靴下も増えてきましたが、試してみると意外にも強力に圧迫するものが多いと思いました。特に土踏まずの部分。アーチをサポートすることは大切なのですが、アーチ構造というのは強く持ち上げすぎると機能を失ってしまう特性があるので、アーチ部分もあまり圧迫感がないものを選ぶようにしましょう。

脱いだ時に「は〜、スッキリした!」と感じたら圧迫が強いということになります。

足底腱膜炎を最適にサポートするYOSHIRO SOCKS

これまで綿やシルクで機能性5本指靴下を製作し、臨床現場で多くの患者様に試してきましたが、靴や靴下の中で足が滑るという問題を解決することができませんでした。そこで、繊維会社と2年の歳月をかけて理想的な繊維を完成させ、矯正5本指靴下「YOSHIRO SOCKS」が誕生しました。

湯浅慶朗
足指博士
足指研究の第一人者。足指研究所所長。日本足趾筋機能療法学会理事長。ひろのば体操、YOSHIRO SOCKS、YOSHIRO INSOLE、ハルメク靴の開発者。東京大学や国際医療福祉大学で研究を行う。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長・通所リハビリテーションセンター長。足指のスペシャリストとしてNHKガッテン・NHKサキどりに出演。著書多数。テレビ出演は『ガイアの夜明け』『NHKガッテン』『NHK BS 美と若さの新常識』『NHK サキどり』ほか多数出演、著書は『たった5分の「足指つかみ」で腰も背中も一生まがらない!』(PHP出版)など多数。ハルメクとオシャレな矯正靴を共同開発しています。

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