足指ドクターによる解説

YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗
理学療法士(Physiotherapist)、足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、ひろのば体操・YOSHIRO SOCKS・ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(10万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。東京大学 石井直方 名誉教授の弟子でもある。
はじめに|あなたの“足の指”、本当に地面についていますか?
突然ですが、立った状態のご自身の足を真正面から写真をとってみてください。
足の指、特に親指や小指の爪が見えていますか?
もし、指先が床から浮いていたり、爪が見えていない場合──
それは「浮き指」かもしれません。
浮き指とは、足の指が本来あるべき“地面との接地”を失ってしまった状態を指します。
近年では、足の不調に留まらず、猫背・反り腰・O脚・外反母趾・ひざ痛・腰痛・肩こり・呼吸の浅さ・不眠・冷え性といった多くの全身不調と関連していることがわかってきました。
本記事では、足指研究歴20年・理学療法士として病院勤務歴を持ち、独自の構造靴下「YOSHIRO SOCKS」を開発した湯浅慶朗が、浮き指の原因・見分け方・改善体操・対策グッズ・症例データまでを、写真・動画付きで徹底解説します。
浮き指とは?
浮き指とは、足の指が地面に接地しておらず、常に浮いてしまっている状態です。



足の指は、歩行時や立位時に「地面をつかむ」機能を担っており、姿勢保持やバランス制御において重要な役割を果たしています。
しかし、浮き指になると──
しかも、日本人の9割以上が自覚なくこの「浮き指」になっているというデータもあります。
東京大学との共同研究の中で、168名を対象とした浮き指の調査では、99.4%の人が「浮き指」という結果でした。多くの人が気づいていないだけで、実はあなたも浮き指の可能性が非常に高いのです。(足指研究所 2017)
山梨大学の調査によると、小学生の約9割以上に「浮き指」が確認されており、足指の機能低下が子どもの年代から広く進行している実態が明らかになっています(山梨大学 2021)。
ペーパーテスト(紙で簡単にセルフチェック)
用意するもの:名刺またはやや厚めのカード
- 椅子に座って膝を90度に曲げる
- 素足のまま、足の裏を床にしっかりつける
- 名刺を、親指の下にそっと差し込む
名刺がスッと奥まで入る → 浮き指の可能性が高い
指にひっかかって途中で止まる → 正常
この方法は、第2~5指(人差し指〜小指)でも同様にチェック可能です。
親指の浮き指チェック

基本的に真正面から見て足の爪が見えない場合は浮き指と判定します。スマホなどで写真を撮影してみてみると良いでしょう。

親指の爪を深く切りすぎていると浮き指になりやすいです。真上から見て親指の皮膚が隠れるくらいまで爪を伸ばすのが理想的です。

名刺サイズの紙(少し厚手のもの)を用意しましょう。

それを親指の下に入れていきます。

親指の爪の根元より奥に入ると「浮き指」と判定します。
2〜4指の浮き指チェック

第2〜4指の浮き指をチェックするには、親指のチェックと同じように名刺サイズの紙を用意します。それが第2〜4指の爪の根元より奥に入ると「浮き指」と判定します。
小指の浮き指チェック

小指の浮き指をチェックするには、親指のチェックと同じように名刺サイズの紙を用意します。それが小指の爪の根元より奥に入ると「浮き指」と判定します。
スマホ撮影で確認する方法
親指の浮き指

正面から足を撮影して、親指の爪が見えていなければ浮き指
小指の浮指

横から見ると、小指が地面から浮いていれば小指の浮き指
足底圧測定器での浮き指の判別方法
足底圧測定器は率維持・歩行時の足の圧力分布を測定する装置であり、足の健康状態や歩行時の姿勢を評価する際に使用されます。これにより、足底の圧力バランスを改善し、歩行や走行時の負担を軽減することが可能となります。

足指が写っておらず、全ての指が浮き指になっています。

足指がすべて写っており、健康的な足の一例です。
浮き指の症状とリスク
浮き指は見た目の問題だけでなく、足のバイオメカニクス全体に影響を与えます。
浮き指になると、立った時に「踵重心」になります。指の付け根からかかとまでの距離が短くなるためです。理想的な重心割合は前方に60%、後方に40%と言われていますが、浮き指の方はほとんどの体重(70〜90%)がかかとに乗ります。


そうなると踵だけでバランスをとるような形になるので、上体を反らせたり(反り腰)曲げたりして(猫背)バランスを取ろうとします。姿勢反射とか立ち直り反応と呼ばれる体に備わった機能の一つです。そしてその状態が慢性的に続くと背中や腰の筋肉が過緊張を起こしたままとなるので、腰痛や首こり、肩こりを起こすようになります。ストレートネックと呼ばれるものもこれが原因です。
よくある症状
・歯並びや口呼吸、顔のゆがみにも影響
・靴の中で足がズレやすい
・足指のつり・冷え
・足裏の痛み(モートン病、足底筋膜炎)
・扁平足・側弯・歩行異常
・ふくらはぎや膝の痛み
・姿勢の乱れ(猫背・反り腰・ストレートネック)
・呼吸が浅くなる、睡眠の質低下
・運動機能・集中力・姿勢保持力の低下
浮き指の原因とは?|“足指が浮く”根本的な理由
浮き指は単なる筋力不足ではなく、日常生活での積み重ねや体の使い方のクセ、履物の選び方・履き方に根本原因があります。ここでは主な6つの原因を詳しく解説します。
1. 靴や靴下の「滑り」
▶ 靴が大きすぎる・紐やベルトが緩い

足に対して大きすぎる靴を履いていると、歩行中に靴の中で足が前後に滑ってしまいます。これを防ぐために、人は無意識に足指を反らせて“踏ん張る”ような使い方をするようになります。これが常態化すると、次第に足指が地面に接地しなくなり、浮き指となります。
▶ 靴下の素材が滑りやすい

滑りやすいポリエステルやナイロン系の靴下以外にも、純綿やシルクの素材の靴下でも、常に“前滑り”が起きてしまいます。これにより、指を使わない歩き方が習慣化され、足底の感覚や筋肉活動も低下。最終的に足指が浮きやすくなります。
素材・製品 | 摩擦係数(N) | 備考 |
---|---|---|
綿靴下(一般) | 0.8 | やや滑る |
シルク | 0.6〜0.8 | 非常に滑りやすい |
市販スポーツソックス | 0.7〜0.9 | 見た目より滑る |
YOSHIRO SOCKS | 2.3N | 足裏感覚を最大限刺激・神経入力を促進 |
足と靴・靴下の間に適度な摩擦とフィット感がないと、足指は接地しにくくなり、浮きやすくなります。
2. 外反母趾・ハンマートゥなどの足趾変形
外反母趾や屈み指(ハンマートゥ)などの変形は、足指の正常な可動域や接地能力を奪います。

- 外反母趾:母趾(親指)が外側に曲がることで、接地ポイントがずれ、他の指に過剰な負荷がかかる
- 屈み指:中足関節の湾曲により、指先が地面につかなくなる
こうした変形が進行すると、足指の“使いづらさ”が固定化され、結果的に接地しない=浮き指となるケースが多く見られます。
3. 深爪・巻き爪による機械的支点の喪失

爪は単なる保護構造ではなく、足指の先端に圧を伝える「支点」でもあります。
深爪によって爪の面積が極端に小さくなると、歩行時の荷重を爪が支えられなくなり、足指に力が入りにくくなります。
同様に、巻き爪による痛みを避けるために“浮かせて歩くクセ”がつくと、これも浮き指の引き金になります。
4. スリッパ・サンダルの常用
スリッパやサンダル、下駄、草履などの“固定力のない履物”を日常的に使うことも大きな原因です。






これらの履物は踵や甲のホールドが弱いため、歩行中に脱げないように足指を反らせて押さえつけるような使い方になります。
すると、足の甲(足背)にある「長趾伸筋」や「長母趾伸筋」など、足指を背屈(反らす)方向に引く筋群が過緊張を起こします。これらの筋が過活動になると、足指が常に甲側に引っ張られたままの状態になり、接地しにくくなるのです。
5. 手術後の後遺症(中足骨短縮術・腱切離など)
足部の手術(特に中足骨短縮術や関節固定術)では、指や骨の構造を意図的に調整することがありますが、術後に足指が地面に届かなくなるケースがあります。
これは骨の長さや靭帯のバランスが変わったことによるもので、術後ケアを怠ると、浮き指が「構造的に固定されてしまう」リスクもあるため注意が必要です。
6. 足底腱膜炎や筋の過緊張による牽引

足底には、「足底腱膜」や「短趾屈筋」「長趾屈筋」「長母趾屈筋」など、足指を屈曲(床側に曲げる)させる筋や腱が走っています。
これらが硬くなったり、炎症(足底腱膜炎)を起こすと、足指を甲側に引っ張るテンションが生まれ、足趾がまっすぐに伸びなくなります。
特に足底腱膜が硬くなると、足指の柔軟な運動が制限されて地面に届かない=浮き指になるというメカニズムが生じます。
浮き指という診断名は存在するのか?
現時点(2025年現在)において、日本の保険診療や国際的な診断基準(ICD-10やICD-11)においては、「浮き指(うきゆび)」という正式な診断名は存在していません。つまり、「腰椎椎間板ヘルニア」や「変形性膝関節症」のように、保険病名としてカルテに記載したり、診療報酬請求に用いることはできない状態です。
浮き指は、現在の日本の医療制度では正式な診断名ではないため、病院で診断や治療を受けることが難しいのが実情です。ですが、放置すると姿勢の崩れや膝・腰の痛みにつながるリスクがあるため、早期のセルフケアが重要です。
浮き指は矯正できるのでしょうか?
浮き指の治療には 2 つの方法があります。手術で治す方法と、侵襲性の低い技術で治す方法です。どちらが優れているというわけではありません。
「浮き指」は正式な診断名としては存在しないにもかかわらず、手術で治療されることがあります。これは医学的に「浮き指」という名称で手術が行われているわけではなく、その原因となっている足の構造異常や変形(例:ハンマートゥ、中足骨の長さの不均衡など)に対して外科的に処置する形です。
臨床データ(科学的根拠)
50名を対象に浮き指に対する、「ひろのば体操」と「YOSHIRO SOCKS」の効果検証を行った。結果、2ヶ月後には浮き指率が92%だったものが9.6%まで減少し、有意差が認められました。

ほとんどの場合には、低侵襲な「足指体操:ひろのば体操」と「矯正靴下:YOSHIRO SOCKS」で解決することができます。












浮き指を治す自宅でできるセルフケアの方法
病院や治療院での治療方法は対症療法であるため、根本的に治ることはありません。大切なことは、浮き指の明確な原因を理解した上で、継続的にセルフケアを行っていくことで、症状の緩和や変形の改善を目指すことが可能です。
浮き指は「足指の変形」なので、足指に原因があると考えがちですが、実は足指が原因ではありません。そこには「靴下の素材・構造」「靴の種類・靴の履き方」という原因があり、結果として「浮き指」という変形を起こしているだけなのです。
特殊素材と構造の「YOSHIRO SOCKS」で矯正サポート
浮き指を改善するには、ただ足指を広げるだけでは不十分です。重要なのは、「正しい足指の形に戻し、それを脳と神経に再学習させること」。

YOSHIRO SOCKSはこのプロセスを支えるために、構造と素材に徹底的にこだわって設計されています。
浮き指改善に必要な「理想の靴下構造」一覧表
項目 | 理想値(範囲) | なぜ必要か(機能的理由) | 浮き指における役割 |
---|---|---|---|
摩擦係数 | 1.5〜2.3N以上 | 靴や床で滑らず、足裏の感覚刺激がしっかり脳に届く | 足指の接地を促進し、「滑り」からくる浮き指を防ぐ |
圧迫力①(足指間) | 5.5〜9.0 gf/cm² | 血流や神経を妨げず、軽度の圧迫刺激が感覚受容器を活性化 | 指の間隔を保ち、神経入力を促して筋活動を誘発 |
圧迫力②(アーチサポート部) | 15〜25 gf/cm² | アーチを軽く支えることで、足指が地面につきやすくなる | 足底筋群の過緊張を軽減し、踵重心を是正する |
伸長率 | 1.5〜1.8倍以上 | 指の動きや広がりに追従し、筋出力や関節可動性を妨げない柔軟性 | 指を締めつけず、足指のグー・パーを自然にサポート |
総合要件 | 感覚入力・神経伝達・筋活動を妨げない構造 | 靴下自体が“神経-筋-骨格のフィードバックループ”を補助する役割を持つ | “履くだけで足指機能が回復する”構造の土台となる |
ひろのば体操で、足指機能を取り戻す
ひろのば体操は5分間行うだけでも浮き指が44%改善します。長期的に続けることにより浮き指率は9%まで減少しています。足指を矯正するための靴下を併用するとさらに効果的です。
ひろのば体操をやってみよう!
「ひろのば体操」とは、足指を広げて(=ひろ)伸ばす(=のば)、足指と足のストレッチのこと。左右の足を合わせて1日1回、5分もやれば効果があります。驚くほどかんたんにできるので、まずは映像を見ながら実践してみましょう!やり方さえおぼえてしまえば、寝る前でも、お風呂の中でも、テレビを見ながらでも、いつでも、気軽にできる体操です。まずは、3ヶ月を目標に続けてみてください。
足指がひらかない人は長めに
足指のパーができない、足指の変形がひどい場合には1日30分を目安に頑張ってみましょう。ひろのば体操の直後が足の筋肉が柔らかいので「パー」の練習をすると効果的です。まずは30秒間の「パー」が綺麗にできることを目標にやってみてください。
STEP1 いす、または床の上に座り、片方の足を太ももの上に乗せる

・膝をなるべく倒す
・足首が上に反らないようにする
・ももの上にきちんと足の乗せる

・足の甲はしっかり反らせましょう
・足首が少し太ももから出るようにします
STEP2-1 足指の間に、手の指を入れる

・手指の根元に、1本ずつ足指の先端を入れていきます
・足指の根元にすきまができるようにします

・手の根元に足指の先端だけが乗るような感じです
・手の根元にぴったりと足指先を密着させましょう
STEP2-2 足指の間に、手の指を入れすぎないように
OK

・足指が手の指から出ないくらいが理想です
NG

・足指の根元まで手指を入れてしまうとうまく曲げられなくなります
STEP3 足指を入れた手を優しく握る
OK

・足指の付け根より少し上に手がくるよう、優しく握る
・手の親指で足の親指を軽く押さえる
NG

・手の指を足の付け根いっぱいまでさし込んでいると反らせにくい
STEP4 足指を甲のほうへ反らす

・優しく、ゆっくりと反らせる
・手の根元で足指先を押すようなイメージで
・足指の関節が90度になると理想的
(かたい場合には無理をしない)
・反らせたら5秒以上キープ
(かたい場合には30秒キープする)

・やさしく、ゆっくりと
・甲を伸ばすイメージで反らせていく
・手のひら全体で足裏を軽く押す
・反らせたら5秒以上キープ
(かたい場合には30秒キープ)
STEP5 STEP4を繰り返す
STEP4を繰り返し行ったら、逆の足も同じように反らせる。両足で最低5分ほどできればOK。かたい場合には片足10分ほど行うと効果的です。

自分で行うことが難しい場合には、誰かにやってもらいましょう。
ひろのば体操応用編
浮き指を改善させる矯正インソールと矯正靴
私が推奨している浮き指を改善させるインソールと靴は、「YOSHIRO INSOLE」と「YOSHIRO SHOES」です。YOSHIRO INSOLEはハンドメイドのインソールで、ひろのば体操・YOSHIRO SOCKSを併用することで、矯正速度が6倍以上に速くなるメリットがあります。YOSHIRO SHOESはハルメクと開発した矯正靴で、YOSHIRO INSOLEが標準装備されています。
YOSHIRO INSOLE

YOSHIRO SHOES

浮き指が改善した症例と体験談
症例①:30代女性/浮き指+腰痛+O脚
Before

右の親指が上に反り上がっています。左の2・3指が地面から離れています。
After

ひろのば体操+YOSHIRO SOCKSで浮き指が改善しました。
後ろからの姿勢

若干ですが、O脚だった両膝がつくようになりました。
横からの姿勢

反り腰が強かったのですが、改善しています。

23歳で手足が痛むようになり、病院でリウマチと診断されました。足の痛みが特にひどく、歩くときはつま先を浮かせてかかとで歩いていました。無理な姿勢を続けたせいで腰痛やひざ痛、O脚に。義母から私を紹介されカウンセリングにいらっしゃいました。ひろのば体操を続けて5ヶ月後には浮き指が治り、しっかり地面を蹴って歩けるようになりました。手足の痛みも消え「22kgある小学3年生の娘を抱っこでき、幸せをかみしめています」と嬉しいご報告をいただきました。
症例②:60代女性/両膝痛と正座不能
Before

After

Before

After


整形外科では半月板が切れ、内側側副靱帯が伸びていると診断されました。両膝が痛み正座もできない状態でした。湯浅先生に治療をしてもらい、家ではひろのば体操を毎日行っていると、徐々に膝の痛みがなくなり、今では正座もできるようになりました!
よくある質問(FAQ)
- 浮き指は病院で治療できますか?
-
日本の保険診療では「浮き指」という診断名がなく、整形外科では治療されないことが多いです。
- 自分で治せますか?
-
正しい方法であれば、自宅で十分に改善可能です。
- YOSHIRO SOCKSだけで改善しますか?
-
筋の再教育には「ひろのば体操」との併用がベストです。
- 浮き指の子どもにも効果がありますか?
-
はい。保育園児を対象とした研究では、浮き指率が44% → 9%まで改善しました。
最後に
浮き指は、足の“機能的土台”が崩れているサインです。
足指が使えないことで、全身のバランス、呼吸、姿勢まで乱れていきます。
しかし、正しくケアすれば多くの方が数ヶ月で改善しています。
「たかが足指」とあなどらず、「だからこそ足指」──
今この瞬間から、浮き指改善ケアをはじめてみませんか?