はじめに|「膝が悪い」「腰が悪い」だけでは説明できない人へ
こんにちは。
足指研究所の湯浅慶朗です。
臨床で膝の痛みや腰痛を訴える方を診ていると、必ずと言っていいほど、ある共通点に気づきます。
それは、
- レントゲンやMRIでは説明がつかない
- 治療しても再発を繰り返す
- 「姿勢を意識しても安定しない」
というケースの多くで、足元の力の使われ方=足底圧が崩れている という事実です。
この記事では、
- 足底圧とは何か
- なぜ足で処理できなかった負荷が、膝や腰へ移るのか
- その結果、なぜ「膝の痛み」「腰痛」「ヘルニア」「狭窄症」と呼ばれる状態が生まれるのか
を、治療論ではなく「構造」だけで 解説します。
第1章|足底圧とは「姿勢制御の最下層」にある仕組み


足底圧とは、単に「足の裏にかかる圧」ではありません。
姿勢制御の観点で見ると、足底圧は
地面から返ってくる力を、最初に受け止め・調整する場所
です。
人の姿勢制御は、原則として次の順番で行われます。

足 → 足関節 → 膝 → 股関節 → 骨盤 → 脊柱
つまり、足で処理できれば、上は動かなくて済む。
逆に言えば、
足底圧が崩れる =姿勢制御の最初の関門が機能していない
という状態になります。
第2章|足底圧が崩れる代表的な3つのパターン
臨床でよく見られる「足底圧の崩れ方」には、典型的なパターンがあります。
① 母趾が使えない(前足部で止められない)
本来前後方向の制御を担う 母趾が地面をとらえられない 状態です。
結果として、
- 前後の揺れを足で止められない
- 重心が常に後方へ流れる
という姿勢になります。



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② 前足部中央に圧が集中する
母趾で受け止められない圧が、
第2〜第4中足骨頭部へ逃げるパターンです。
これは足底圧研究でも一貫して示されている典型例で、
- 前足部痛
- モートン病
と構造的に重なります。

③ かかと依存型(足全体で支えられない)
足指が使えず、
「かかとで立っている」状態が常態化すると、
- 衝撃を逃がせない
- 微調整ができない
という、非常に硬い姿勢制御 になります。
第3章|足で止められない力は、どこへ行くのか
ここがこの記事の核心です。
足底圧が崩れると、
力そのものが消えるわけではありません。
処理できなかった力は、必ず「上」に移動します。
正常な状態
- 足部で前後・左右の揺れを吸収
- 足関節で完結
- 膝・腰はほとんど動かない
足底圧が崩れた状態
- 足で止められない
- 足関節では足りない
- 膝が姿勢制御を引き受ける
- さらに腰が使われる
つまり、
膝や腰が「悪い」のではなく本来やらなくていい仕事をさせられている
という構造になります。
第4章|なぜ膝は痛くなりやすいのか
膝関節は本来、
- 前後の大きな動き
- 推進力の伝達
を担う関節であり、
細かい姿勢制御には向いていません。
しかし足底圧が崩れると、
- 常に微調整を強いられる
- 同じ角度・同じ筋が使われ続ける
結果として、
と呼ばれる状態と構造的に重なる 姿勢になります。


第5章|腰は「最後の代償装置」
足でも膝でも処理できなくなると、
最後に使われるのが 骨盤と腰椎 です。
この状態では、
- 骨盤の前後傾が大きくなる
- 腰椎の動きが増える
- 体幹筋が常に緊張する
という姿勢が固定化されます。
これが長期間続くと、
と診断される状態と、構造的に一致 してきます。




重要なのは、
足底圧が崩れたから「病気になった」のではなく、そういう負担のかかる姿勢条件が続いた
という点です。
第6章|坐骨神経痛・放散痛が起きる理由
足底圧が崩れると、
- 推進力が不安定
- 股関節・骨盤で補う割合が増える
結果として、
- 臀部周囲の筋緊張
- 骨盤帯の固定
が生じやすくなります。
この分布は、
坐骨神経痛と呼ばれる痛みの出方と重なることが多く、
神経が原因というより、姿勢制御の結果として現れている
ケースが少なくありません。

第7章|疾患名は「原因」ではなく「結果のラベル」
ここまで見てきたように、
- 膝
- 腰
- 神経
に現れる症状の多くは、
足底圧という“最初の分岐点”で処理できなかった結果
として理解できます。
疾患名は、
- 壊れた場所
- 痛みを感じた場所
につけられた名前であり、
力の流れそのものを示しているわけではありません。
まとめ|姿勢は「どこで止められるか」で決まる
姿勢は、意識や筋トレで作るものではありません。
- どこで力を受け止められるか
- どこで微調整できるか
によって、自動的に決まります。
その起点が 足底圧 であり、
足底圧が崩れると、
足 → 膝 → 骨盤 → 脊柱
という 代償の連鎖 が始まります。
膝や腰に違和感を感じたとき、
真っ先に見るべき場所は「痛い場所」ではありません。
足元で、力が正しく処理されているか。
ここを見直すことが、
構造的に最も合理的な第一歩です。
足指の研究から生まれた「環境づくり」という視点
足指研究所では、20年以上の臨床経験と、東京大学・石井直方名誉教授と実施した観察研究を通して、
「足指が使いやすい環境が整うと、姿勢・重心の安定性に関わる“変化傾向”が見られることがある」
という視点を大切にしています。
足指は本来、「広がる・伸びる・接地する」という生理的な動きを持ちますが、
靴・靴下・床の滑りやすさなどによって、その働きが阻害されることがあります。
私たちは、
「どうすれば日常で足指が動きやすい環境を作れるか」
という点を中心に開発と研究を続けています。
【研究データ|足指・姿勢・筋活動の観察記録】

2020〜2022年、東京大学・石井直方名誉教授の指導下で実施。
延べ96名を対象に、以下の構造的特徴の推移を多角的に観察しました。
- 足指の動き・配置
- アーチ構造
- 姿勢指標
- 体幹支持筋・口腔周囲筋・下肢筋の活動傾向
“足指が使いやすい環境づくり”を行った際、
足指・姿勢・呼吸に関連する筋活動などに構造的な変化傾向が見られました。
【足指が使いやすい体へ|4つのアプローチ】
日常で“足指が働きやすい環境”をつくるための基本ポイントです。
1. ひろのば体操(足指をゆるやかに伸ばす)
2. 靴の見直し(足指が押しつぶされない設計)
3. 小股歩き(足指が自然に使いやすい歩き方)
4. 室内環境の調整(滑りやすい床・スリッパを避ける)
【YOSHIRO SOCKS|構造とものづくり】

——足指が使いやすい“環境づくり”をめざした生活用品
足指の働きを妨げる「環境」そのものに着目し、
奈良の専門工場とともに、糸・密度・摩擦・張力などを精密に検証してきました。
● 構造のポイント

姿勢の安定性に配慮した
摩擦構造

自然な足指の開きを支える
立体フォルム

重心バランスを考慮した
密度・張力設計
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“広げる・伸ばす”動きを引き出す
テンション配置
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開帳・扁平傾向に配慮した
縦横方向テンション

母趾〜小趾が整列しやすい
張力バランス
※ いずれも医療的効果を示すものではなく、あくまで「足指が働きやすい状態をサポートする生活用品としての構造」の説明です。
● 製造のポイント

日本製
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高密度
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極薄
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高耐久

高グリップ
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吸湿・速乾
- 日本製:専門工場が ±1mm 単位でテンション管理
- 高密度:700nmクラスの極細繊維
- 極薄:約2mmの軽さと安定性
- 高耐久:生活用品としての強度
- 扇形フォルム:足指が自然に広がりやすい形状

