足指ドクターによる解説

YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗
理学療法士(Physiotherapist)、足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、ひろのば体操・YOSHIRO SOCKS・ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(10万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。東京大学 石井直方 名誉教授の弟子でもある。
1. 浮き指と腰痛──一見関係なさそうな“意外な関係”

「腰が痛くて整形外科を受診したが、レントゲンでは異常なし」
「整体に通っても、一時的に軽くなるだけで、すぐに痛みが戻る」
「骨盤矯正を受けたのに、結局また同じところが痛くなる」
──そんな経験をお持ちの方は、決して少なくありません。
腰痛は日本人が抱える慢性的な身体の不調ランキングで常に上位にあり、厚生労働省の調査では成人の約4人に1人が腰痛を訴えているというデータもあります。しかし、そのうち原因が特定できるものはわずか15%程度。

つまり、85%以上の腰痛は「原因不明」とされているのです。
なぜ原因がわからないのか?
それは、「腰に原因がある」という前提から抜け出せないからです。

蛇の生殺しのように通い続けさせるビジネスであれば、腰や姿勢だけにアプローチした方が儲かります。医療って治すためじゃなくて、儲けるために運営しているところがほとんど。
「足指が浮いている」ことと腰痛──本当に関係あるの?
“浮き指”とは、立っているときに足の指が地面に接地しておらず、指の関節が浮き上がった状態を指します。

一見、「そんな小さなことが腰に関係あるわけない」と思われがちです。
しかし実際には、姿勢・バランス・筋肉の連鎖(筋連鎖)において、足指は全身の動きの“起点”となる重要なパーツです。
足指が機能不全に陥ると、身体はそれを補うために別の場所に負荷をかけます。その“補う場所”が腰であることが非常に多いのです。

運動連鎖とか姿勢制御とも言いますが、足指の変形がカラダの別の場所で負荷がかかっていることは神経生理学分野の論文でも明らかになっています。
目に見えない「姿勢の司令塔」──それが“足指”
多くの人は、「姿勢が悪いのは背中や骨盤のせい」と考えがちですが、それはあくまで“結果”です。
本当の原因は、もっと下、つまり「足の接地」にあるケースが多く見られます。

私が臨床の現場で観察してきた限りでも、腰痛患者の8割以上に浮き指や足趾の機能不全が見られました。
そしてその足趾機能を回復させると、腰の症状が改善する例は決して珍しくありません。
たとえば──
- 腰に常に重だるさを感じていた50代男性が、YOSHIRO SOCKSの着用と体操だけで2週間以内に症状消失
- どこに行っても「年齢のせい」と言われていた40代女性が、足元からのアプローチで姿勢改善&腰痛解消

これらのケースに共通しているのは、腰を直接治療していないという点です。

私は2006年から2022年までの臨床現場で、足指にしかアプローチしてきませんでした。周囲の医師や理学療法士は驚かれましたが、結果こそ全てで、ほとんどの人が改善しています。
なぜ足指が腰に影響するのか?
それは、「足指が体全体の安定性と神経の入力を司っている」からです。
この記事では、以下の流れで「浮き指が腰痛につながる」メカニズムを専門的かつわかりやすく解説していきます。
・どのように対策すべきか
・そもそも浮き指とは何か? なぜ起こるのか?
・足指が浮くと、どのように姿勢が崩れるのか?
・なぜ腰が“代償的に”負担を背負うのか?
・実際に足から腰痛を改善したケース
2. 【浮き指とは】足指が地面につかない“現代病”
「浮き指」とはどんな状態か?


浮き指とは、立っているときに足の指(特に母趾や小趾)が地面に接地していない状態のことを指します。医学的な病名ではなく、現場での観察や臨床報告から生まれた言葉ですが、その影響は決して軽視できません。
人間の足指は、本来「地面に接地することで姿勢を安定させるセンサー」として機能します。
しかし、浮き指の状態では足指が浮き上がり、地面の情報を脳に伝える“感覚入力”が大きく損なわれるのです。
その結果、姿勢が不安定になり、膝や腰、肩など他の部位に代償的な緊張が生まれるようになります。

見た目上浮いていなくても、足底圧測定器で見ると「浮き指」の人は9割を超えています。
自覚のない“無接地状態”が、なぜ危険なのか?
実は、浮き指は本人がほとんど自覚していないことが大半です。
それどころか、「足指なんて普段意識したことがない」という方も多いでしょう。
以下に当てはまる方は、知らず知らずのうちに浮き指になっている可能性があります。
- 足の小指がいつも靴下に穴をあける
- 立っていると自然に重心がかかと寄りになる
- 歩くときに「足音が大きい」と言われたことがある
- 長時間立つと腰や膝が痛くなる
- 足の裏が疲れやすい、あるいはタコ・魚の目がある
こうした症状は、すべて足指がうまく使えていない結果として現れる“警告サイン”です。
浮き指チェックの方法(ご自宅で簡単に)
以下のような方法で、自分の足が浮き指かどうかをチェックすることができます。
【浮き指セルフチェック】
① 靴下を脱ぎ、真っすぐ立つ
② 足裏全体が床に接しているか観察

③ 足の指(特に親指・小指)が床から浮いていないかを確認
④ 難しい場合は、紙を指の下に差し入れてみて、スッと入るようなら浮いている証拠

また、前に体重をかけようとすると、バランスが取りにくく「ふらつく」ような感覚がある人も、足趾機能が低下している可能性があります。
なぜ現代人に浮き指が増えているのか?

浮き指は、子どもから高齢者まで幅広い年代に見られる“現代型姿勢不良”の一種です。
その背景には、次のような生活習慣の変化があります。
❶ クッション性の高い靴の普及
→ 地面の情報が足に伝わりにくくなり、足指を使う必要がなくなる

❷ 椅子中心の生活・床で座らない文化
→ 足の屈曲や指の動きが制限され、足趾の使用頻度が極端に低下
❸ 靴下・靴の素材やサイズのミスマッチ
→ 締め付けすぎる靴下、滑る素材の靴下やインソールなどが“接地感覚”を奪う
❹ 大股歩き(つま先を使わない歩き方)
→ つま先で蹴り出す動作が減り、足趾屈筋群が衰えていく
このように、現代人は“使わない生活”の中で、徐々に足指の機能を退化させています。
その結果、足の接地機能が失われ、バランス保持や姿勢維持に異常が生じるようになるのです。

まさに現代病ですね。靴や靴下を履く文化でなければ、歩き方なんて意識する必要もないのです。
足指の機能不全が「感覚の空白」を生み出す
足指が浮いているということは、地面からの情報が脳に届いていないということでもあります。
この“感覚の空白”が生じると、脳は不安定さを感じ取り、身体のどこかでそれを補おうとします。
その補正が、「反り腰」や「骨盤の過前傾」、「腰椎の緊張過多」といった腰痛の原因となる代償的な運動パターンを引き起こすのです。
3. 【姿勢への影響】足から始まる姿勢のドミノ崩壊
「姿勢が悪い」のは、背中や骨盤のせいではない?

多くの方は、猫背や反り腰、骨盤の傾きといった姿勢不良の原因を「背筋の弱さ」や「骨盤のゆがみ」に求めます。
しかし、そうした考え方は“結果だけを見ている”に過ぎません。
姿勢は「頭→体幹→骨盤→膝→足」という上からの制御だけでなく、「足→膝→骨盤→背骨→頭」という下からのフィードバックによってもコントロールされています。
この“下からの力”の起点が、まさに足指の接地です。

20代の頃はウエイトトレーニングをやっていましたが、まさかのヘルニアになり、筋トレの無意味さを知ることになりました。
浮き指が起こす“重心の後方化”

浮き指になると、足の前方(特に母趾球・小趾球)への荷重ができなくなり、自然と重心がかかと側へ逃げます。
この「後方重心」によって身体全体のバランスが崩れ、以下のような代償的な運動パターンが起こり始めます。
崩れた要素 | 身体の反応 |
---|---|
足指の不接地 | 重心が後ろにずれる |
後方重心 | 骨盤が前に倒れる(前傾) |
骨盤前傾 | 腰椎の前弯が強くなる(反り腰) |
反り腰 | 腰部筋(脊柱起立筋、腰方形筋)の緊張が増大 |
腰の緊張 | 痛み・疲労・違和感の慢性化 |
これが、私が臨床で「姿勢のドミノ崩壊」と呼んでいる現象です。
わずか1枚のドミノ(=足指の浮き)から、全身が崩れていくのです。
骨盤の角度と腰痛の関係
骨盤の傾き(前傾・後傾)は、腰椎の角度=腰の反り具合に直結します。


とくに浮き指によって骨盤が前傾しすぎると、腰椎の前弯(=反り腰)が強くなり、椎間関節や椎間板へのストレスが増加します。
これが、腰痛の根本原因となることが非常に多いのです。
さらに、骨盤が過前傾になると、腸腰筋や大腿直筋といった股関節周囲の筋が過剰に緊張し、
結果として「立っているだけで腰が疲れる」という慢性腰痛パターンを引き起こします。
「筋連鎖」が崩れると、使わなくていい筋肉を使ってしまう
本来、人間の動きや姿勢は、複数の筋肉が協調しながら滑らかに働く“筋連鎖”によって支えられています。
しかし、足指が浮いて接地しなくなると、下記のような連鎖が乱れてしまいます。
崩れた筋連鎖の例
足底筋群(母趾外転筋・虫様筋・足底方形筋)
↓
下腿三頭筋(ヒラメ筋・腓腹筋)
↓
大腿後面(ハムストリングス)
↓
骨盤周囲(腸腰筋・中臀筋)
↓
背部(多裂筋・脊柱起立筋)
これにより、本来姿勢保持に使わないはずの“深層筋”に、過度な負担が集中します。
その代表格が、「多裂筋」「腰方形筋」など腰部のインナーマッスルです。
無意識に「腰で姿勢を支える」癖がついていく
このように浮き指は、筋肉の連携と骨格の配列を崩し、
やがて「腰が常に緊張している」という慢性疲労型の姿勢を生み出します。
さらに厄介なのは、これが“無意識”のうちに習慣化されるという点です。
感覚が薄れている分、「今、腰が無理している」という実感すらないまま、身体は腰に頼る動きを覚えていきます。
これはまさに、姿勢制御の“誤学習”です。
だからこそ、足指の接地を回復させることで、「姿勢の再学習」が必要になるのです。

運動連鎖とか姿勢制御のことは学生時代に習うのですが、肝心の足指のことを習わないので、つながりが見出せずに、臨床では役に立たないんです。
5. 【症例紹介】腰の治療で治らなかった人が「足」で改善した実例
「腰の痛みは腰にはなかった」──Aさん(58歳・女性)の場合
Aさんは介護職を30年以上続けてきた女性で、ここ数年は慢性的な腰痛に悩まされていました。
整形外科を受診したものの、「骨に異常はありません」「加齢による筋力低下ですね」と言われ、湿布と痛み止めの処方だけ。
整体やマッサージにも通いましたが、良くなるのはその日限り。
「年齢のせいだから仕方ない」と、半ばあきらめかけていました。
しかし、初診時の姿勢と歩行を確認した私が注目したのは、腰ではなく“足指の状態”でした。
決定的だった“浮き指”の発見
Aさんは立位時、両足の母趾と小趾が完全に接地しておらず、明らかな浮き指の状態。

足趾の屈曲運動(指を曲げる動き)もほとんど見られず、「足の指なんて動かせるんですか?」と本人も驚いていたほどでした。
さらに、かかと重心で立ち、骨盤は前方に傾き、明確な反り腰姿勢。
実はこの状態こそが、Aさんの腰椎に慢性的なストレスを与え続けていた元凶だったのです。
足元から姿勢を変える──YOSHIRO SOCKSと体操の導入
Aさんには、まずYOSHIRO SOCKSを日常生活で着用していただきました。
この靴下は、足趾の接地と足裏三点支持を自然に促すよう設計されており、履くだけで足指の形と機能が再教育されます。
さらに、ひろのば体操を毎日5分間だけ実施。
足趾屈筋群(母趾屈筋・長趾屈筋など)を意識的に動かすことで、「感覚入力」と「運動出力」の両面から足の機能を活性化していきました。
2週間後-「腰の重さが違う」
1ヶ月後-「たちっぱなしでも楽になった」
3ヶ月後-「腰痛のことを忘れて生活できている」
Aさんの感想は次第に変化していきました。
「今までは“腰が支えていた”んだなって初めてわかりました」
「足の指が地面についてる感じがあると、自然と腰がラクなんです」
「靴下と体操だけで、こんなに変わるなんて…最初は信じられませんでした」

Aさんの姿勢評価でも、骨盤前傾角の改善と重心位置の前方移動が確認され、明らかに“腰の代償”から“足指主導の支持”へとパターンが切り替わっていたのです。

足指のことを話すと、最初の頃は「はぁ?」という感じでした。でも病院では効果が見られなかったので、真面目に取り組んでくれたことが幸いでした。
他にも多くの方が、“足”で腰を変えている
このような例は、決して珍しくありません。
- 「長年の腰の重さが、足指の接地だけで解消した」
- 「整体よりも、靴下を変えた方が効果があった」
- 「運動嫌いでもできるから続けられる」
浮き指を改善することは、全身の姿勢制御を再構築する“核”のようなアプローチです。
6. 【対策】腰痛を“足から”解決するための3つのステップ
「腰痛は腰が原因とは限らない」
「足指が浮くだけで姿勢全体が崩れる」
──ここまで読んでくださったあなたは、すでに“本質的な腰痛の原因”に気づいているはずです。
では、実際にどうすれば良いのでしょうか?
ここからは、浮き指を解消し、腰への負担を根本から減らすための具体的な3ステップをご紹介します。
【STEP 1】足指の“接地感覚”を取り戻す(YOSHIRO SOCKS)

腰痛の根本には「足が接地できていない=体が支えられない」という問題があります。
その最初の対策は、足指が自然に地面をとらえる状態を“履くだけ”で再現することです。
- 足指がしっかり地面に接するよう設計された特殊構造
- 滑らない素材・伸縮制限のない設計で接地感覚が復活
- 浮き指が自然と地面に導かれ、かかと重心が改善
日常生活の中で「履いているだけ」で足指の使い方を脳に再教育できるのは、継続性と効果の両面で非常に優れています。
POINT:ただし、普通の五本指ソックスや市販の着圧靴下では同じ効果は得られません。
【STEP 2】足の筋肉を目覚めさせる(ひろのば体操)
次に必要なのが、足指を自分の意思で動かせるようにすること。
これに最も適しているのが、私が提唱している「ひろのば体操」です。
- 足底筋群(母趾外転筋、足底方形筋、虫様筋など)を自発的に使う
- 筋肉と神経の連携を強化し、接地感覚をより安定させる
- 脳が「足でも支えられる」と認識し、姿勢制御をリセット
POINT:地面をつかむような足指の感覚を取り戻すことが鍵です。
【STEP 3】靴・靴下・歩き方を“姿勢主導”に見直す
最後に、足指や足裏を“壊さない”環境を整えることが必要です。
靴の見直しポイント
- 前足部がしっかり曲がる柔軟性
- インソールが滑らず、つま先に十分なスペースがある
- 厚底・過度なクッションはNG
靴下の素材と構造
- すべらない素材で足指の動きを妨げない
- 締めつけすぎないものを選ぶ
- 安易なサポーター型は逆効果の場合も

歩き方・立ち方のポイント
- 足の指を使って「蹴り出す」ことを意識する
- 地面を感じながら立つ=“無意識の安定”を思い出す
7. 【まとめ】「腰が痛いから腰を見る」はもう古い
腰痛がつらいとき、私たちはつい「腰」にばかり目を向けてしまいます。
しかし実際には、腰を直接治療しても根本改善しないケースが数多くあります。
その理由は、腰は“被害者”であって“加害者”ではないからです。
原因は、ずっと下の“足指”にあった
浮き指によって足指の接地感覚が失われると、体のバランスは崩れ、重心は後方へ。
その影響で骨盤が前に倒れ、腰椎に過剰なカーブ(反り腰)が生まれ、
結果として腰の筋肉が“無理やり姿勢を支える”状態に追い込まれます。
つまり、あなたの腰は、本来なら足指が担うはずだった“姿勢の安定”を代償的に背負っていたのです。
解決の鍵は、「感覚」と「学習」にある
腰の痛みを本質的に解決するには、
単に筋肉をほぐすのではなく、「感覚入力」を正しく取り戻すことが最優先です。
- 足指がしっかり接地して地面を感じること
- 足裏からの情報が脳に届き、体が安定を取り戻すこと
- 姿勢を腰ではなく「足」から再学習すること
これらが実現されてはじめて、あなたの身体は「無理のない支え方」を思い出すことができるのです。
あなたの腰痛は、「足から治す」ことができる
YOSHIRO SOCKSやひろのば体操は、単なるグッズや体操ではありません。
それは、身体が本来持っていた“自然な姿勢と動き”を思い出させるためのツールです。
もしあなたがこれまで、
「いろんな治療を試しても腰痛が治らなかった」
「もう歳だから仕方ないとあきらめていた」
そう思っていたなら、ぜひ一度、“足”を見直してみてください。
足が地面をつかみ、姿勢が変わる。
姿勢が変われば、腰は自然と解放されていく。
その第一歩が、今日からでも始められることを、どうか忘れないでください。