はじめに|なぜ私は小指から診るのか
こんにちは、足指研究家の湯浅慶朗です。
内反小趾と聞いて、
多くの専門家が最初に思い浮かべる筋肉が「小趾外転筋」です。
それほど重要な筋肉でありながら、
現場では今もなお、
「小指はなくても歩ける」
「そこまで重要ではない」
と軽視されることがあります。
しかし私は、
足首・膝・姿勢の問題に対して、最優先で機能を取り戻したい筋肉は小趾外転筋だ
と考えています。
ひろのば体操で「パー」を徹底する理由もここにあります。
小指が開いた瞬間に、
- 足首の不安定感
- 膝の違和感
- 立位時のふらつき
がその場で変わるケースを、
私は臨床で何度も見てきました。
今日は、
足裏第1層にある 小趾外転筋 を、
「なぜそこまで重要なのか」という視点で解説します。
小趾外転筋とは?

小趾外転筋(Abductor Digiti Minimi)は、
足の小指を 外側へ開く ための筋肉です。
足指の動きで言えば「パー」を担う筋肉であり、
単なる指の運動ではなく、
足の外側安定性を支える要 となっています。
豆知識
小趾外転筋は、
- 踵
- 小指の付け根
を結ぶ筋肉です。
つまり、
踵から地面反力を受け取り、小指へ伝える筋肉
でもあります。
どこにあるの?
- 起始:踵骨(踵骨隆起外側部)
- 停止:小趾基節骨底
作用
- 小趾の外転
- 小趾の屈曲
この筋肉は、
「小指を開きながら、地面に押し付ける」
という、非常に重要な役割を担っています。
小趾外転筋の役割|外側を“支える”筋肉
小趾外転筋の役割は、単に小指を動かすことではありません。
主な役割は次の3つです。
① 小指を地面につなぎ止める

歩行中、体重は
かかと → 小指側 → 親指側
へと移動します。
このとき、小指が地面に接していなければ、
体重は一気に外側へ流れます。
② 外側縦アーチを支える

小趾外転筋は、外側縦アーチの構成要素です。
この筋が働かないと、
足は外に倒れやすくなります。
③ 内反小趾を防ぐ

小指を外側に保つ張力が失われると、
小指は内側へ巻き込まれます。
なぜ小趾外転筋が重要なのか
小趾外転筋が働かなくなると、
- 外側重心
- 回外足
- 足首の不安定
- 膝のねじれ
が連鎖的に起こります。

結果として、
という 構造的な負担の連鎖 が生まれます。

これは「言い過ぎ」ではなく、
小指が使えない足に共通して見られる流れです。
Hand-Standing理論との接続|小指は「外側の支点」である
ここまで読むと分かる通り、
小趾外転筋の重要性は
「小指を動かすかどうか」という話ではありません。
私は足の構造を
「逆さまに置かれた手」
として捉えています。
これが Hand-Standing理論 です。
手で物を持つとき、
- 親指だけ
- 人差し指だけ
では安定しません。
外側の指(小指側)が支点として働くことで、
はじめて手全体が安定します。
足も同じです。
小指は「外側から体重を受け止める支点」
Hand-Standing理論では、
- 親指側:前進・推進の支点
- 小指側:安定・制御の支点
と考えます。
このとき小趾外転筋は、
踵から伝わる地面反力を小指で受け止め、外側の支点を作る筋肉
です。
小指が地面につながらない足は、
- 面で接地できない
- 外側支点が消える
- 体重が逃げる
という状態になります。
小趾外転筋が止まる=外側支点が消える
小趾外転筋が働かなくなると、
- 小指が開けない
- 外側で踏めない
- 足が内外どちらにも安定しない
という状態になります。
これは
筋力の問題ではありません。
Hand-Standing構造において
外側支点が失われている
という、構造の問題です。
その結果として、
回外足→足関節捻挫→膝のねじれ→姿勢の不安定
が連鎖的に起こります。
「小指から診る」理由はここにある
私が
小指から診る
小趾外転筋を最優先で戻したい
と考える理由はここにあります。
外側支点が戻ると、
- 足首が落ち着く
- 立位が安定する
- その場で姿勢が変わる
という変化が起こりやすくなります。
これは経験論ではなく、
Hand-Standing構造上、当然の結果です。
小趾外転筋は「弱る」のではなく「止まる」
多くの場合、小趾外転筋は
- 筋力がない のではなく
- 使えない状態に追い込まれている
という表現の方が正確です。
原因は「滑る環境」
靴や靴下の中で足が滑ると、
- 指を曲げて踏ん張る
- 小指を開く余裕がなくなる
この状態が続くと、
- 小趾外転筋は過緊張
- 動かなくなる
- 結果として内反小趾が進行
します。
歩行の中で起きていること
本来、歩行の Mid-Stance期 では、
- 小指が外に開き
- 足幅が一瞬広がり
- その後、親指側へ体重が移る
という流れが必要です。
しかし小趾外転筋が機能しないと、
- 足指が開けない
- 体重がそのまま外へ流れる
これが
内反小趾・寝指・外側重心歩行
の始まりです。
セルフチェック|小指は「パー」で判断する
グー(筋力の目安)

- 小指までしっかり握れるか
パー(機能チェック)

- 小指が外側に開くか
- 他の指と同じように動くか
パーができない場合、
小趾外転筋は「使えない状態」にあります。
アプローチの順番|鍛える前に整える
小趾外転筋は、
- いきなり鍛える のではなく
- まず動ける状態に戻す
ことが重要です。
そのために行うのが ひろのば体操 です。
足指を広げることで、
- 固まった筋
- 止まった関節
- 失われた可動
を取り戻していきます。
▶ ひろのば体操の正しいやり方
環境を変えなければ再発する
小趾外転筋は、
環境の影響を最も受けやすい筋肉です。
- 滑りやすい靴下
- かかとの緩い靴
この2つが揃うと、
どれだけ体操をしても機能は戻りにくくなります。
定期チェックを習慣に
ひろのば体操を続けながら、
- グー
- パー
を定期的に確認してください。
小指が自然に開くようになってきたら、
足は「外側から安定し始めている」サインです。

