椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症で神経が圧迫されても「痛みは出ない」

足指ドクターによる解説

YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗

足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(7万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。

目次

はじめに

神経圧迫と聞いたら、皆さんはどんなことを思い浮かべますか?飛び上がるほどの痛みが出るのではないか?そう思う人も多いかと思います。神経圧迫が痛みの原因としてよく挙げられる症状として、椎間板ヘルニア、坐骨神経痛、脊柱管狭窄症、分離症、すべり症などがあります。手術を薦められることも多い症状だと思うのですが、もし手術を薦められたとしても、少しだけ待ってください。手術をする前に本当にその痛みの原因が、神経を圧迫していることによって起きているのか、少しだけ考えてみませんか?

椎間板ヘルニアの画像診断のウソ①

1990年、ジョージ・ワシントン大学メディカルセンターのScott D. Bodenらの研究で、腰痛や坐骨神経痛がまったくない無症状の人の67名のMRIを撮影しました。

無症状の人のMRIの診断結果

【結果】
・椎間板ヘルニア:20-39歳は21%、40-59歳は22%、60-80歳は36%
・椎間板の膨らみ:20-39歳は56%、40-59歳は50%、60-80歳は79%
・椎間板の変性:20-39歳は34%、40-59歳は59%、60-80歳は93%
・脊柱管狭窄症:20-39歳は1%、40-59歳は0%、60-80歳は21%

豆知識1

椎間板変性とは、脊椎の椎間板が年齢や身体の負担などによって変化し、軟骨組織が退化する症状のことを指します。椎間板は、椎骨と椎骨の間に存在し、ショック吸収や脊椎の柔軟性を保つ役割を果たしています。しかし、椎間板が変性すると、脊椎の動きが制限されたり、神経に圧迫がかかるために痛みや痺れなどの症状が生じることがあります。

豆知識2

椎間板のふくらみは、椎間板内部のゼリー状の物質(核と呼ばれる)が、外層である繊維輪状軟骨の裂け目や変形によって、椎間板から飛び出してしまう状態を指します。これにより、周囲の神経や血管に圧迫を与えて腰痛やしびれなどの症状が現れることがあります。

豆知識3

脊柱管狭窄症は、脊柱管内の神経の圧迫によって引き起こされる症状を指す。脊柱管は脊椎骨や椎間板などによって形成され、そこには脊髄や神経根が通っている。脊柱管狭窄症では、脊柱管が狭くなって神経組織が圧迫され、脊柱管内の血流が制限されることが原因となる。主な症状としては、脊柱管狭窄部位による痛み、感覚異常、筋力低下、歩行困難などが挙げられる。

要するに、腰痛がない人でも、椎間板ヘルニアを持った人は多く、年齢を重ねるごとにその割合が増えるということです。椎間板ヘルニアとは、椎間板の状態を示しているに過ぎず、痛みとは、直接関係はありません

米国国立医学図書館 J Bone Joint Surg Am. 1990 Mar;72(3):403-8.

椎間板ヘルニアの画像診断のウソ②

モーリン・ジャンセン率いる研究チームが「ニューイングランド医学雑誌」に発表した、無症状の98名を対象に、腰椎をMRIで調べた研究です。

【結果】
・椎間板に異常なし:36%
・椎間板ヘルニア:27%
・椎間板の膨らみ:52%
・髄核の突出:1%

豆知識4

背骨の髄核の突出とは、脊髄の中心部に位置する髄核が脊髄管から突出する状態を指します。これは脊髄の構造の一部であり、脊髄の重要な機能を担っています。髄核が脊髄管から突出することで、脊髄の機能が適切に維持されるとともに、身体の運動や感覚を調節する役割を果たしています。突出が過剰に進行した場合、脊髄の機能や健康に影響を及ぼす可能性があります。

この研究では、「MRIによって腰痛患者に椎間板のふくらみや突出が見つかったとしても、多くは偶然によるものである」と結論付けています。 椎間板の異常と腰痛やしびれとは、関係性はありませんというものです。

米国国立図書館 N Engl J Med. 1994 Jul 14;331(2):69-73.

椎間板ヘルニアの画像診断のウソ③

1995年にBoos Nによって発表された研究で、強い症状を訴える椎間板ヘルニア患者46名と、年齢、性別、職業などを一致させた健常者46名の腰部椎間板をMRIで撮影し、内容を知らない2名の神経放射線医が読影。

その結果、健常者の76%に椎間板ヘルニアが、85%に椎間板変性が認められ、椎間板ヘルニア患者と健常者の間にヘルニアのタイプの差はなかったのです。この研究は、腰痛研究のノーベル賞と言われているVolvo賞を受けた世界的評価の高い研究です。

米国国立図書館 Spine (Phila Pa 1976). 1995 Dec 15;20(24):2613-25.

椎間板ヘルニアの画像診断のウソ④

55歳以上の無症候性被験者は腰椎磁気共鳴画像検査を受けました。被験者の病歴を知らされていない 2 人の放射線科医が、異常の有無を独自にスキャン画像を読み取りました。

【結果】
・椎間板ヘルニア:18.2%
・椎間板変性:76%
・椎間板隆起:84%
・靭帯の肥厚:67%
・脊柱管狭窄症:68.5%

豆知識5

椎間板隆起(ついかんばりゅうき)とは、脊椎の椎間板が圧迫されたり、ずれたりして周囲の神経や筋肉に影響を与える症状のことを指します。椎間板は脊椎の間にあるクッションのような役割を持ち、身体の衝撃を吸収しているため、様々な原因で椎間板自体や周囲の組織が変形することで隆起が生じることがあります。症状としては腰痛や坐骨神経痛などが挙げられます。

豆知識6

背骨の靭帯の肥厚(ひこう)とは、脊椎の周囲に存在する靭帯が過度に肥厚する状態を指します。通常、靭帯は脊椎を支え、安定させる役割を果たしていますが、長期間の負担や過度なストレス、炎症などが原因で靭帯が肥厚することがあります。肥厚した靭帯は、脊椎の可動域を制限したり、神経の圧迫を引き起こすなどの症状を引き起こす可能性があります。

無症状の人の76%が「椎間板変性」、84%が「椎間板隆起」、67%が「椎間板の肥厚」、68.5%の人は「脊柱管狭窄症」と診断されているにも関わらず、腰痛や神経圧迫による神経症状は出ていないのです。形状的な異常が今の症状と直接的な関係があるかどうか不明です。

椎間板ヘルニアの画像診断のウソ⑤

無症状の94名(男性48名、女性46名、平均年齢48.0±13.4歳)が胸椎および頸椎のMRI検査を受けてMRI画像で椎間板い異常がないかを調査した日本の研究です。

豆知識7

椎間板腔狭窄症は、椎間板の膨らみや椎間板の変形によって椎間板から硬膜管への周囲の神経組織に対する圧迫が起こる疾患です。これにより、脊椎の構造が変形し、脊椎の周囲の神経が圧迫されることで痛みや脚のしびれ、脊椎の柔軟性の低下などの症状が現れます。

【結果】
・椎間板ヘルニア:31%
・椎間板変性:37%
・脊柱管狭窄症:29%
・椎間腔狭窄症:4%

このデータからも、トータルで91%の人のMRI画像になんらかの異常があったにも関わらず、症状自体はないのです。また、85 人 (90.4%) の患者において、頸椎のMRI所見で変性が見つかっています。

レントゲンやMRIに写る「異常」のほとんどが痛みやしびれの原因ではない

整形外科での痛みやしびれの治療は、行き詰まっているのが現状です。なぜ整形外科では治らないのか?1番の問題はレントゲンやMRIに写る「異常」を痛みやしびれの原因と考えるためです。この「異常」とは、脊柱管の狭窄、椎間板ヘルニア、軟骨のすり減りや関節の変形などのことです。

NHKガッテンで「腰痛の原因はMRIに写るヘルニアではない」と説明され、慶應大学病院の医師が手術が必要と判断したほどのヘルニアが出ているのに痛くない人がいる一方で、出ているヘルニアを手術しても良くならない人が多かった。実はヘルニアだけでなく、狭窄、すべり症、膝や股関節の変形、軟骨のすり減りなども、同様に痛みやしびれの原因ではないことがほとんどです。

本当の原因は足指変形による仙腸関節の機能障害

関節の内部がねじれたり、炎症を起こして正常に動かなくなったりした状態を「関節機能障害」といいます。これが体の中心にある関節、例えば仙腸関節や椎間関節などに起こると、その関節の周囲だけでなく、遠く離れた部位にまで痛みやしびれ、コリを生じます。

こうしたしびれやコリを含めたものを関連痛といいますが、この症状は足指の変形や機能を取り戻し、悪かった姿勢を理想姿勢に近づけていくことで、関節内の動きが正常となって取れてしまいます。

エックス線やMRIなどで、変形性腰椎症や脊柱管狭症、椎間板ヘルニア、変形性股関節症、膝関節症などが原因と診断された痛みやしびれ、コリに効果が期待できます。YOSHIRO SOCKSやひろのば体操は「関節運動学的アプローチ」の一つとして開発し、関節内の動きが障害された状態を改善させることができるのです。

仙腸関節とは?

仙腸関節は、骨盤の中央部にある関節で、腰椎と連なる仙骨と、左右に大きく張り出した腸骨をつないでいる関節です。約2〜3mmしか動かない、可動域の小さな関節のこと。仙腸関節は上半身の重さがかかっているため、脚長差(脚の長さの左右差)があると骨盤がゆがみ、機能障害を起こしやすい。そのため、足指の機能を取り戻し、足部の回内足・回外足などの変形を改善することが大切となる。

原因不明というのは画像診断に頼りすぎて筋肉や関節を見ていないだけ

椎間板ヘルニアによる腰痛は腰痛全体の5%しかなく、原因が不明というものが85%。医師が画像診断に頼りすぎて、筋肉や関節の状態を見ていないことが原因となっています。

腰痛医学の歴史では、20世紀半ばに椎間板ヘルニアが発見されて以来、半世紀にわたって世界中で椎間板ヘルニアの研究がなされ、椎間板こそが腰痛の原因だと誰もが信じてきました。医学の教科書、多くの腰痛本にそう書かれています。この定説にさらに拍車をかけたのが1990年代に普及したMRI(核磁気共鳴撮像法)です。「椎間板の変形」がみごとに撮影できたため、これが腰痛の原因だと〝画像信仰〟を加速させました。ここに腰痛治療の落とし穴があったのです。21世紀になると、ようやく腰痛の常識が変わり始めました。目に見える画像だけに注目して腰痛治療を考えること自体が間違いだったという声が海外でも高まりつつあります。

腰痛(椎間板ヘルニア)の本当の原因

腰痛に悩む人は全骨で2000万人ともいわれています。これほど身近な病気であるにも関わらず、「腰痛が完全に治った」という人は意外と少数です。更なる治療を求めて病院を転々とする「腰痛難民」も少なくありません。

整形外科では、腰痛の原因を「神経の圧迫や炎症、あるいは椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・関節や骨の老化」などに求めます。しかしレントゲンやMRIといった画像診断で異常が認められても、全く痛みを感じず健康そのものの人もいます。

椎間板ヘルニアの治療に整形外科の常識は通じません。私もその一人でしたが、民間療法を含むさまざまな治療を試した結果、AKAが効果が高いと結論に達しました。AKAは1970年代に米国で生まれた関節運動学を基礎とし、リハビリテーション専門医と理学療法士が独自の方法論として考案した治療法です。

しかしここで私が疑問に思ったのは、「なぜ仙腸関節がズレてしまうのか」ということでした。その疑問は「足指」と「姿勢」に隠されていました。難治性・複雑性関節炎という方は特に姿勢が悪い方に多いです。どんなにAKAの手技をマスターしていても姿勢の悪い状態では動くものも動かないのです。

私もAKA博田法を習得して、AKA専門クリニックで1日30人ほどの治療にあたっていました。驚くほど治療成績は良いのですが、再発を繰り返す人が多かったのです。何が原因なのかを試行錯誤しながら探って行きましたが、足指に対してアプローチを行い足裏バランスを良くしていくと、再発率が低く、難治性の方や複雑性関節炎の方もスムーズに改善して行きます。

最近ではAKAを行わなくてもセルフケアのみで仙腸関節を動かすことができることも判明しました。神の手と言われるAKAですが、自分自身がどんなに神の手であっても死んでしまえばお困りの方を救うことはできません。そのためにいつでも・どこでも・誰にでも・簡単にできる方法を開発してものが、「ひろのば体操」であり「Yoshiro Socks」なのです。

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