【医療監修】変形性膝関節症|立ち上がるときに膝が痛くなる理由― 毎日の動作が“膝の不安定さ”を固定化するメカニズム ―

はじめに
こんにちは。足指研究家の湯浅慶朗です。
椅子から立ち上がるとき、
「よいしょ」と無意識に膝へ手をついていませんか。
立ち上がり動作は、1日に何十回、何百回と繰り返される生活動作です。
変形性膝関節症(膝OA)の方にとって、この動作は
膝にとって最も負荷が集中しやすい瞬間
でもあります。
しかし多くの場合、
「筋力が落ちたから」
「年齢のせいだから」
と説明され、動作そのものが見直されることはほとんどありません。
ここでは、
なぜ立ち上がり動作が膝OAを固定化しやすいのか
その構造を、足元から丁寧に解説していきます。
立ち上がり動作で起きている“3つの力”
立ち上がりは、単なる上下運動ではありません。
実際には、次の3つの力が同時に発生しています。
- 体重が一気に膝へ集まる力
- 前後方向への重心移動
- 左右差(利き足・足指機能差)によるねじれ
膝OAの方では、この3つが
膝関節だけで処理されてしまう構造
になっていることが非常に多いのです。
なぜ膝に“集中的に”負担がかかるのか
本来、立ち上がり動作では
負担は次の順で分散されるべきです。
- 足指 → 足裏
- 足首 → 股関節
- 体幹 → 最後に膝
ところが、変形性膝関節症の方では
この順序が逆転しています。
足指が使えない
↓
踵重心・後方重心になる
↓
股関節が使えない
↓
膝を前に突き出して立つ
この結果、
膝が「主役」になってしまう立ち上がり
が完成します。
「太ももを鍛えましょう」が解決にならない理由
よく言われるアドバイスに、
「大腿四頭筋を鍛えましょう」
があります。
しかし実際には、
立ち上がりがつらい方ほど、
太ももはすでに過剰に使われています。
問題は筋力不足ではなく、
- 太ももしか使えない
- 太ももに頼らざるを得ない
- 足元と股関節が機能していない
という構造的な偏りです。
この状態で筋トレを重ねると、
一時的に楽になることはあっても、
動作の癖は固定されやすくなります。
立ち上がりで膝が痛くなる人に共通する足元
立ち上がりがつらい方を観察すると、
足元には共通点があります。
- 足指が床をつかめない
- 親指・小指が接地していない
- 靴下や室内履きで足が滑っている
- 立ち上がる瞬間、踵に体重が残る
これらが重なると、
膝が前に突き出る動作
になりやすくなります。
膝OAにおける痛みは、
関節そのものよりも
こうした動作の繰り返しによる微細な炎症が
蓄積した結果として感じられることが多いのです。
立ち上がり動作が「不安定さ」を覚えさせてしまう
人の身体は、
繰り返された動作を「正解」として学習します。
- 膝に頼る立ち上がり
- 膝をかばう立ち上がり
- そっと逃げるような立ち上がり
これらが日常になると、
身体は「この動作が安全だ」と認識してしまいます。
結果として、
- 膝を使わないと立てない
- 膝を曲げ伸ばしするたびに不安になる
- 動作そのものに恐怖が残る
という状態が形成されます。
これは
膝OAが“進んだ”のではなく、
動作が固定された状態
だと捉える方が適切です。
立ち上がりを見直す視点は「膝」ではない
ここで大切なのは、
「膝をどう守るか」
ではありません。
見るべきは、
- どこから体重を押し出しているか
- 床を感じているのはどこか
- 立ち上がりの最初の一瞬で何が起きているか
つまり、
足元と重心のスタート位置
です。
この視点を持つだけで、
「鍛える」「安静にする」という
二択の世界から抜け出すことができます。
次に読むべき記事
立ち上がり動作と深く関係するのが、
膝の前側に集中する痛みです。
動作と症状の関係を、
より具体的に知りたい方は
次の記事も参考にしてください。
▶︎【医療監修】変形性膝関節症|膝の前が痛くなる原因と体の使い方
― しゃがみ・立ち上がりで膝がつらい人へ ―

まとめ
立ち上がり動作は、
変形性膝関節症の「原因」ではありません。
しかし、
- 足元が使えない
- 重心が後ろに残る
- 膝だけで立ち上がる
この条件が揃うと、
膝の不安定さを毎日“再学習”してしまう動作
になります。
膝をどうにかしようとする前に、
まずは
「立ち上がり方そのもの」を構造的に見直すこと。
それが、
膝OAと向き合ううえでの
最も現実的な第一歩です。


