はじめに
こんにちは。足指研究家の湯浅慶朗です。
「屈み指ですか?浮き指ですか?」
足の相談を受ける中で、私はこの質問を本当によく受けます。
そして私は、ほぼ例外なくこう答えます。
「多くの場合、両方です」
この答えに、驚かれる方も少なくありません。
なぜなら一般的には、
- 屈み指(ハンマートゥ)=指が曲がる変形
- 浮き指=指が床に接地しない状態
と、別々の問題として説明されているからです。
しかし、私が10万人以上の足を見てきた経験から言えるのは、
この2つは独立した問題ではなく、ほぼ必ず“同時に存在する”という事実です。
この記事では、
- なぜ屈み指と浮き指が同時に起こるのか
- なぜ見た目がまっすぐでも安心できないのか
- 医療や一般情報で見落とされてきた視点は何か
- 「足指の機能不全」とは何を意味するのか
を、構造・荷重・神経制御・臨床経験をもとに統合的に解説します。
なぜ屈み指と浮き指は「別物」として扱われてきたのか
まず、この2つがなぜ別々に語られてきたのかを整理します。
医療や一般的な情報では、
- 屈み指:骨や関節の変形
- 浮き指:接地の問題、筋力低下
というように、評価軸が異なる形で説明されてきました。
これは医療が悪いわけではありません。
医療は基本的に、
- 形態(骨・関節)
- 画像所見
- 痛みや炎症
を中心に評価します。
そのため、
- 「曲がっているかどうか」
- 「骨配列がどうか」
といった “静的な形” が主な判断材料になります。
一方、浮き指は、
- 見た目では分かりにくい
- 画像にも写りにくい
という特性があり、
結果として 屈み指とは別カテゴリ として扱われやすくなったのです。
見た目がまっすぐ=正常ではない
足指評価で、私が最も危険だと感じている判断があります。
それが、
「立っているときにまっすぐ見えるから大丈夫」
という評価です。
実際の現場では、
- 立位では一見まっすぐ
- しかし体重をかけた瞬間に曲がる
- 指先が床に触れていない
- 踏ん張りが効かない
こうした “機能不全型”の屈み指・浮き指 が非常に多く見られます。
これは、
形ではなく「使われ方」が壊れている状態です。
私はこれを、
「足指機能不全」と呼んでいます。
足指の本来の役割とは何か
ここで、足指の本来の役割を整理します。
足指は単なる「おまけ」ではありません。
人間の足指は、
- 体重を受け止める
- 前方への推進力を生み出す
- 重心を微調整する
という役割を担う、
センサー兼スタビライザーです。
この役割を果たすためには、足指に次の3つの機能が必要です。
- 伸びること
- 広がること
- 床に接地すること
この3つがそろって初めて、
足指は「使われている」と言えます。
なぜ屈み指と浮き指は同時に起こるのか
では、なぜこの3要素が同時に失われるのでしょうか。
多くのケースで見られる流れは、次の通りです。
靴の中で足が滑る
↓
安定させようとして指でつかむ
↓
屈筋群が優位になる
↓
関節が屈曲位で固定される(屈み指)
↓
指先が床に届かなくなる(浮き指)
ここで重要なのは、
屈み指と浮き指は「原因が同じ結果」
だということです。
どちらか一方が起きているのではなく、
同じ生活環境・使い方の結果として、同時に現れているのです。
「屈み指だけ治す」「浮き指だけ気にする」危険性
ここで、非常に多い誤解があります。
それは、
- 屈み指だけを無理に伸ばす
- 浮き指だけを気にして筋トレをする
といった 部分的な対応です。
実際の臨床では、
- 指の形は少し変わった
- でも接地は戻らない
- 歩き方は変わらない
- 体の不調も変わらない
というケースを、私は何度も見てきました。
これは当然の結果です。
形だけを変えても、使われ方(機能)が変わっていないから
です。
「隠れ屈み指 × 浮き指」という見落とされやすい存在
特に注意が必要なのが、
隠れ屈み指 × 浮き指
の組み合わせです。
- 見た目はまっすぐ
- 痛みもない
- しかし荷重時に崩れる
このタイプは、
- 本人も気づきにくい
- 医療機関でも見逃されやすい
という特徴があります。
しかし実際には、
- 踏ん張りが効かない
- 推進力が出ない
- 重心が後ろに残る
といった 機能的問題を抱えています。
機能不全が全身に及ぼす影響
足指の機能不全が続くと、体はどうなるでしょうか。
- 前に進めない
- 推進力が足りない
- 重心が踵側に残る
この状態を補うために、体は代償を始めます。
- 膝を過剰に使う
- 股関節で引き上げる
- 腰や背中でバランスを取る
その結果、
- 膝の違和感
- 股関節の詰まり感
- 腰痛
- 姿勢の崩れ
といった問題につながることがあります。
これは「足指が原因で起こる」と断定するものではありません。
しかし、足指の機能不全が“関与している可能性”は高いと、私は考えています。
私が「絶対に分けて考えない」と言う理由
私が屈み指と浮き指を
必ずセットで見る理由はシンプルです。
- 屈み指だけを見ても不十分
- 浮き指だけを見ても不十分
- 両方を同時に見て、初めて全体像が見える
からです。
これは理論だけでなく、
10万人以上の足を見てきた経験則です。
足指を見るときに本当に大切な視点
最後に、私が最も伝えたいことをまとめます。
足指を見るときに大切なのは、
- まっすぐかどうか
- 曲がっているかどうか
ではありません。
「使われているかどうか」です。
- 伸びているか
- 広がっているか
- 床を感じているか
この視点を持つだけで、
屈み指と浮き指は「別の問題」ではなく、
同じ構造の表裏として見えてくるはずです。
まとめ
- 屈み指と浮き指は別々の問題ではない
- 多くの場合、同時に存在している
- 見た目だけでは判断できない
- 本質は「足指機能不全」
- 形よりも、使われ方を見ることが重要
👉 屈み指の原因・セルフケア・全体構造については
【▶ 屈み指の全体像はこちら】

