はじめに
こんにちは。足指研究家の湯浅慶朗です。
「この指、もう手術しかないですか?」
屈み指(かがみゆび/ハンマートゥ)の相談を受ける中で、
この言葉を聞かない日はありません。
インターネットで調べると、
- 手術の説明
- 手術写真
- 術式の比較
が数多く出てきます。
その一方で、
「本当に手術しか選択肢はないのか?」
「今の状態で、何を基準に判断すればいいのか?」
この部分を、構造的に整理している情報はほとんど見当たりません。
結論からお伝えします。
多くの屈み指は、直ちに手術が必要な状態ではありません。
しかし同時に、手術が合理的なケースが存在するのも事実です。
この記事では、
- なぜ病院では「経過観察」と言われることが多いのか
- なぜ手術をしても、別の問題が起きることがあるのか
- 保存療法とは「何をして、何をしない」考え方なのか
- どんな人が手術を選ぶべきなのか
を、医療と生活の境界線を整理する視点で解説します。
医療現場での「一般的な判断基準」とは何か
まず、医療機関で屈み指がどのように評価されるかを整理します。
整形外科で主に確認されるのは、
- 痛みの強さ
- 靴が履けるかどうか
- タコ・マメ・潰瘍など皮膚トラブルの有無
- 日常生活への支障
です。
これらが軽度であれば、
「今すぐ治療は必要ありません」
「しばらく様子を見ましょう」
と説明されるケースが多くなります。
これは決して“冷たい対応”ではありません。
医療としては、非常に合理的な判断です。
なぜ「経過観察」になることが多いのか
ここには、医療構造上の理由があります。
① 命や機能を直ちに脅かす病態ではない
屈み指は、
- 命に関わらない
- 内臓疾患ではない
- 緊急性が低い
という特徴があります。
医療はまず「危険度の高いもの」から対応します。
そのため、痛みや皮膚障害が軽度であれば、
積極的な介入が行われにくいのです。
② 画像検査だけでは判断しにくい
レントゲンでは、
- 骨の配列
- 関節の変形
は確認できます。
しかし、
- なぜ曲がったのか
- 日常でどう使われているか
- どんな環境が続いてきたか
といった 「原因の多く」は写りません。
その結果、
「今は手術適応ではありません」
という説明に落ち着きやすくなります。
手術が検討されるケースとは
ここは誤解のないよう、明確に書いておきます。
屈み指に対する手術は、
決して“最後の手段だから悪い”わけではありません。
一般的に、次のような場合には手術が検討されます。
- 強い痛みが持続している
- タコ・潰瘍が繰り返しできる
- 靴に常に当たって日常生活に支障がある
- 保存的対応では改善が見込めない
このような場合、
手術によって生活の質が大きく改善するケースもあります。
ただし重要な前提があります
ここで必ず理解しておいてほしいことがあります。
👉 手術=原因が解決する、ではありません。
手術で行われるのは主に、
- 骨の配列を変える
- 腱のバランスを調整する
- 関節を固定する
といった 「形を変える」処置です。
一方で、
- なぜその形になったのか
- なぜその使い方が続いたのか
この部分は、手術では変わりません。
手術後に別の問題が出ることがある理由
臨床の現場では、
- 屈み指の手術後
- しばらくして
- 別の足指、膝、腰に違和感が出る
というケースを一定数見てきました。
これは手術が失敗した、という話ではありません。
原因は「使い方と環境」が変わっていないことにあります。
- 靴の中で足が滑る
- 指でつかむ癖が続く
- 重心の取り方が変わらない
こうした条件が残っていれば、
身体は別の場所で代償を始めます。
保存療法とは「治すこと」ではない
ここで言う保存療法とは、
- 手術を避ける
- 我慢する
という意味ではありません。
保存療法とは、
進行しやすい条件を取り除き、足指がこれ以上“壊れない環境”をつくること
です。
具体的には、
- 靴・靴下・室内履きの見直し
- 足指の使い方の再学習
- 無意識に続いている癖の整理
といった 生活構造の調整 が中心になります。
なぜ保存療法で「変化傾向」が出る人がいるのか
屈み指の多くは、
「結果として曲がっている」
状態です。
- 滑る
- つかむ
- 曲がる
この流れが長期間続いた結果、
形が固定化していきます。
逆に言えば、
- 滑らない
- つかまなくていい
- 伸びる・接地する
という条件が整えば、
進行が止まったり、違和感が減るケースがあるのは自然なことです。
※もちろん、すべての人に当てはまるわけではありません。
私の立場:手術を否定しない理由
私は、屈み指の手術を否定しません。
むしろ、
- 痛みが強い
- 生活に支障が大きい
こうした方にとって、
手術は非常に合理的な選択肢だと考えています。
ただし同時に、
「なぜ、そこまで進行したのか」
この問いを置き去りにしたままでは、
本当の意味での解決にならないとも感じています。
手術を選ぶかどうかの判断軸
最後に、判断の目安を整理します。
手術が合理的になりやすいケース
- 強い痛み・皮膚障害がある
- 保存的対応を十分行っても改善がない
- 日常生活の制限が大きい
保存療法・経過観察が向いているケース
- 痛みが軽度
- 生活習慣・履物に明確な課題がある
- まずは進行を止めたい
どちらが「正しい」ではなく、
どちらが「今の自分に合っているか」 が重要です。
まとめ
- 屈み指=即手術、ではない
- 医療の「経過観察」には合理的な理由がある
- 手術は形を変える手段
- 保存療法は環境と使い方を変える選択肢
- 両者は対立ではなく、補完関係
👉 屈み指の原因・セルフケア・全体構造については
【▶ 屈み指の全体像はこちら】

