【医療監修】足底圧の使い方で、足の健康は決まる――アフリカとヨーロッパの比較研究が示す本質

目次

はじめに|なぜ「足が健康な人」と「不調が多い人」が生まれるのか

こんにちは。足指研究所の湯浅慶朗です。

私は理学療法士として、これまで10万人以上の足と姿勢を見てきました。

その中で、ずっと抱いてきた疑問があります。

「なぜ、足に悩まない人と、慢性的な不調を抱える人がいるのか」

年齢や体重、運動量だけでは説明できない違いが、確かに存在します。

そのヒントの一つが、

“どこで体重を支えて歩いているか”

――つまり 足底圧の分布 にあります。

この視点を強く裏付ける研究が、

アフリカ(マラウイ)とヨーロッパ(オランダ)の成人を比較した足底圧研究です。

足の健康は「アーチの高さ」では決まらない

多くの人は、足の健康を語るとき、

  • 扁平足かどうか
  • アーチが高いか低いか

に注目します。

しかし、この研究が示しているのは、

「形」よりも「使われ方」 の重要性です。

マラウイとオランダの成人各77名を対象にした比較研究では、

  • 静的な足の形状
  • 歩行中の足底圧分布
  • 足圧の移動(ロールオフ)

が詳細に解析されました。

その結果、非常に興味深い違いが明らかになっています。

マラウイ人の足に共通していた「圧の使い方」

① 中足部で“長く”体重を支えている

マラウイの参加者は、

  • かかとで強く着く
  • つま先で強く蹴る

という歩き方ではありませんでした。

足の中央(中足部)で、比較的長い時間体重を受け止める

これが大きな特徴です。

図3.平均足底圧
左パネル: マラウイグループのMP分布。
中央パネル: オランダグループのMP分布。
右パネル: マラウイグループとオランダグループのMPの差。

結果として、

  • 前足部への急激な負荷が少ない
  • かかとへの衝撃が分散される

という足底圧パターンが形成されていました。

② アーチは「低い」のに、足は不安定ではない

静的な計測では、

  • マラウイ人の内側縦アーチは低め
  • 扁平足に分類される割合も高い

という結果が出ています。

足の幅と長さの比率
スクロールできます
項目マラウイ平均(SD)オランダ平均(SD)
内側角度 (°)*139.69 (9.47)144.05 (8.83)
舟状骨高さ/足長比率*0.17 (0.03)0.20 (0.03)
舟状骨高さ (mm)*44.88 (6.56)52.76 (7.87)
足長 (mm)266.02 (15.77)270.22 (17.59)
足幅/足長比率*0.46 (0.03)0.44 (0.02)
アーチインデックス (AI)*0.28 (0.03)0.21 (0.06)
低アーチ (%)76.626.0
通常アーチ (%)22.133.8
高アーチ (%)1.340.3

しかし重要なのは、

アーチが低い=機能していない、ではない

という点です。

マラウイ人の足では、

  • 足底全体で圧を受け止め
  • 一点に負担を集中させない

という “機能的に働くアーチ” が形成されていました。

③ ロールオフが「なめらか」

歩行中の足圧中心(CoP)の軌跡を見ると、

  • かかと → 足中央 → 前足部 への移動が非常に滑らかです。
図4.圧力中心の軌道
左上のパネル: オランダ人マラウイの CoP パスを含むオランダ人グループの MP 分布。
右上のパネル: 相対 vCoP 比較: マラウイ グループからオランダ人を待ったもの。
下のパネル: 内外側 (左のパネル) と前後 (右のパネル) 方向の CoP パス差。

これは、

  • 歩行中に急激なブレーキがかからない
  • 足部で衝撃を吸収できている

ことを意味します。

一方、ヨーロッパ型の足で起きやすいこと

オランダの参加者では、

  • 前足部・かかとへの圧が強く
  • 中足部の関与が短い

という傾向が見られました。

これは、現代の日本人の足底圧分布ともよく似ています。

臨床では、このような足に、

  • 前足部痛
  • 足底筋膜への負担
  • 足指が使われない歩き方

が重なっているケースを多く見ます。

重要なのは「裸足かどうか」ではない

この研究で誤解してはいけない点があります。

マラウイ人も、

決して一日中裸足で生活しているわけではありません。

違いを生んでいるのは、

  • 足裏で感じ取れる情報量
  • 足指が自由に使える時間
  • 足底全体で支える習慣

といった 生活環境の積み重ね です。

現代人の足で起きている構造的な問題

現代の靴・靴下環境では、

  • 足指が広がりにくい
  • 足底感覚が遮断されやすい
  • かかと・前足部に圧が集中しやすい

という条件が揃いやすくなっています。

その結果、

  • 中足部が使われない
  • 足指が姿勢制御に参加できない
  • 上位(膝・腰)でバランスを取る

という 代償的な姿勢戦略 が起こります。

このとき、身体に起きているのは
「足で処理できなくなった負担の移動」です。

本来、足底全体と足指で吸収・制御されるはずだった前後方向の揺れは、
足部で処理できなくなると、次の関節へと押し上げられます。

まず膝関節が前後ブレーキを担わされ、
次に股関節・骨盤の動きが制限され、
最終的に腰椎がバランス制御の役割を代償的に引き受ける。

これは臨床でも非常によく見られる流れです。

では、
足底圧の分散が失われたとき、
なぜ膝や腰が“負担の受け皿”になってしまうのでしょうか。

▶ 足底圧が崩れると、なぜ膝・腰に行くのか

アフリカ人の足が教えてくれる本質

この研究が教えてくれるのは、

「アフリカ人の足が特別」という話ではありません。

足は、本来こう使われる構造を持っている

という事実です。

スクロールできます
問題のある圧分布
理想的な圧分布
  • 足底全体で圧を受け止める
  • 足指が制御に参加する
  • 一点に負担を集中させない

この環境が整えば、

足は「壊れにくい構造」で働きます。

足元の環境をどう整えるかという視点

私はこの研究を、

  • 裸足に戻るべき
  • 特定の民族を真似るべき

という話にはつなげません。

現代の生活の中で、

「足が本来の働きをしやすい環境をどう作るか」

この視点こそが重要だと考えています。

足指と足底感覚を邪魔しない「環境設計」の一例

YOSHIRO SOCKSは、

こうした研究や足底圧データ、臨床観察をもとに、

  • 足指が使われやすい状態
  • 足底感覚を妨げにくい素材
  • 圧が一点に集中しにくい設計

を目指して作られています。

これは治療ではなく、

日常環境を整えるための一つの選択肢 です。

まとめ|足の健康は「使われ方」で決まる

このアフリカとヨーロッパの比較研究が示しているのは、

  • 足の健康は形ではなく使われ方
  • 足底圧の分布が姿勢と動作を左右する
  • 足指が参加できる環境が重要

という、非常にシンプルな事実です。

足元の違和感や不安定さを感じたとき、

まず見直すべきなのは「鍛え方」ではありません。

どこで、どう体重を支えているか。

そこに、すべての出発点があります。

足指の研究から生まれた「環境づくり」という視点

足指研究所では、20年以上の臨床経験と、東京大学・石井直方名誉教授と実施した観察研究を通して、

「足指が使いやすい環境が整うと、姿勢・重心の安定性に関わる“変化傾向”が見られることがある」

という視点を大切にしています。

足指は本来、「広がる・伸びる・接地する」という生理的な動きを持ちますが、

靴・靴下・床の滑りやすさなどによって、その働きが阻害されることがあります。

私たちは、

「どうすれば日常で足指が動きやすい環境を作れるか」

という点を中心に開発と研究を続けています。

【研究データ|足指・姿勢・筋活動の観察記録】

2020〜2022年、東京大学・石井直方名誉教授の指導下で実施。

延べ96名を対象に、以下の構造的特徴の推移を多角的に観察しました。

  • 足指の動き・配置
  • アーチ構造
  • 姿勢指標
  • 体幹支持筋・口腔周囲筋・下肢筋の活動傾向

“足指が使いやすい環境づくり”を行った際、

足指・姿勢・呼吸に関連する筋活動などに構造的な変化傾向が見られました。

研究データの詳細はこちら

【足指が使いやすい体へ|4つのアプローチ】

日常で“足指が働きやすい環境”をつくるための基本ポイントです。

1. ひろのば体操(足指をゆるやかに伸ばす)

2. 靴の見直し(足指が押しつぶされない設計)

3. 小股歩き(足指が自然に使いやすい歩き方)

4. 室内環境の調整(滑りやすい床・スリッパを避ける)

詳しいケア方法はこちら

【YOSHIRO SOCKS|構造とものづくり】

——足指が使いやすい“環境づくり”をめざした生活用品

足指の働きを妨げる「環境」そのものに着目し、

奈良の専門工場とともに、糸・密度・摩擦・張力などを精密に検証してきました。

● 構造のポイント

姿勢の安定性に配慮した
摩擦構造

自然な足指の開きを支える
立体フォルム

重心バランスを考慮した
密度・張力設計

“広げる・伸ばす”動きを引き出す
テンション配置

開帳・扁平傾向に配慮した
縦横方向テンション

母趾〜小趾が整列しやすい
張力バランス

※ いずれも医療的効果を示すものではなく、あくまで「足指が働きやすい状態をサポートする生活用品としての構造」の説明です。

● 製造のポイント

日本製

高密度

極薄

高耐久

高グリップ

吸湿・速乾

  • 日本製:専門工場が ±1mm 単位でテンション管理
  • 高密度:700nmクラスの極細繊維
  • 極薄:約2mmの軽さと安定性
  • 高耐久:生活用品としての強度
  • 扇形フォルム:足指が自然に広がりやすい形状

YOSHIRO SOCKS の構造と設計はこちら

免責事項

本記事は一般的な情報提供であり、治療や効果を保証するものではありません。個人差があります。医療が必要な際は専門医へご相談ください。商品は医療効果を目的としたものではありません。

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