足の健康と足底圧の研究:アフリカとヨーロッパの比較から得られるヒント

足指ドクターによる解説

YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗

足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、YOSHIRO SOCKS・ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。MRC認定歯科医院の顧問の経歴もあり。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(7万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。東京大学石井直方名誉教授の弟子でもある。

目次

はじめに

こんにちは、湯浅慶朗です。私は、理学療法士として足指の機能不全が体全体に与える影響について長年研究し、その改善方法を模索してきました。この文章では、アフリカとヨーロッパの足の特性を比較した興味深い研究を紹介しながら、私が手掛けているYOSHIRO SOCKSやYOSHIRO MODELの開発にどう生かしているかをお話しします。

西洋諸国では、多くの人々が足の問題に悩まされています。一方で、アフリカでは足の不調が非常に稀です。この違いには、足への負荷のかかり方や靴の履き方が影響している可能性があります。本研究では、アフリカのマラウイとヨーロッパのオランダに住む成人77名ずつを対象に、足の形状や足底圧力(足の裏にかかる圧力)の違いを調査しました。この結果は、足の健康を考える上で重要なヒントを与えてくれるかもしれません。

研究の背景

過去の研究では、靴が足に与える影響について議論されてきました。1905年、フィル・ホフマンは「現代の靴が足の形状に悪影響を与える」と主張しました。その後の研究でも、特に足の前部への過剰な負荷が足の問題を引き起こすことが示されています。さらに、靴を日常的に履くグループと裸足のグループの間では、足の構造や負荷のパターンが異なることもわかっています。しかし、民族的な背景や足の形状、負荷パターンの違いについては、十分な研究が行われていませんでした。

研究の目的

この研究では、足の健康に問題がないマラウイとオランダの成人を対象に、以下の点を比較しました。

1. 静的足形状(立った状態での足の形)

2. 動的足底圧分布(歩いているときの足裏の圧力分布)

3. 足のロールオフ(歩行中の足の動き方)

研究方法

被験者

マラウイから77名、オランダから77名が参加しました。両グループともに足の不調歴がなく、普段靴を履く生活を送っています。ただし、マラウイの参加者は主に病院の従業員やその家族で、日常的に靴を履く一方、裸足で歩く時間もありました。一方、オランダの参加者は靴を履く時間が多い傾向にありました。

足底圧の測定

足底圧は特別なプレートを使用して計測されました。被験者は好みの速度で裸足で歩き、そのデータを収集しました。

静的足形状の測定

足の形状は、特別な装置で撮影した写真を分析して計測しました。舟状骨の高さや内側縦アーチ(MLA)の角度などを記録しました。

図2A:内側角度。内側果の中心、舟状骨結節、第 1 遠位中足骨頭の内側中心間の角度。
図2B:舟状骨の高さと足の長さの比。

研究結果

1. 足底圧分布の違い

マラウイの参加者は中足部(足の中央部分)にかかる負荷が長く、前足部(つま先周辺)の負荷が短いことがわかりました。また、かかとや前足部の圧力はオランダの参加者よりも低い傾向がありました。

図3.平均足底圧
左パネル: マラウイグループのMP分布。
中央パネル: オランダグループのMP分布。
右パネル: マラウイグループとオランダグループのMPの差。

2. 静的足形状の違い

マラウイの参加者のMLA(内側縦アーチ)はオランダの参加者よりも平坦であり、アーチインデックス(AI:アーチの高さを示す値)が高いことが確認されました。

図 5. 3 つの最も重要な予測因子 (AI (左パネル)、グループ (中央パネル)、NF 比 (右パネル)) に対する各センサーの回帰係数。

3. ロールオフの違い

マラウイの参加者は歩行時に足全体で圧力を均等に分散させ、かかとからつま先への動きが滑らかであることが特徴でした。これにより、足の前部にかかる負担が減少する可能性があります。

図4.圧力中心の軌道
左上のパネル: オランダ人マラウイの CoP パスを含むオランダ人グループの MP 分布。
右上のパネル: 相対 vCoP 比較: マラウイ グループからオランダ人を待ったもの。
下のパネル: 内外側 (左のパネル) と前後 (右のパネル) 方向の CoP パス差。

4. 足の幅と長さの比率

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項目マラウイ平均 (SD)オランダ平均 (SD)
内側角度 (°)*139.69 (9.47)144.05 (8.83)
舟状骨高さ/足長比率*0.17 (0.03)0.20 (0.03)
舟状骨高さ (mm)*44.88 (6.56)52.76 (7.87)
足長 (mm)266.02 (15.77)270.22 (17.59)
足幅/足長比率*0.46 (0.03)0.44 (0.02)
アーチインデックス (AI)*0.28 (0.03)0.21 (0.06)
低アーチ (%)76.626.0
通常アーチ (%)22.133.8
高アーチ (%)1.340.3

マラウイの参加者は足がやや広めで、これが足全体の圧力分散に役立っている可能性があります。

考察

この研究で明らかになった、マラウイ人の足底圧分布や足形状の特徴は、足の健康を保つ要因となっている可能性があります。特に、以下のポイントが注目されます。

注目ポイント

• 中足部に負荷を分散させることで、前足部やかかとへの過剰な圧力を防ぐ。

• 平坦なアーチが足全体の圧力分布を助ける。

• ロールオフ時の滑らかな動きが足への負担を軽減する。

これらの特徴は、西洋社会で一般的に見られる足の問題(中足骨痛や足底筋膜炎など)の予防に重要であると考えられます。

この研究から、マラウイの参加者に見られる足の負荷分散のパターンや足形状の特徴が、足の不調を防ぐ一因である可能性が示されました。これらの結果は、足の健康を考慮した新しい靴のデザインや治療法の開発に役立つかもしれません。特に、靴下やインソールによる圧力の均等な分散を目指した治療と一致する点は注目に値します。

YOSHIRO SOCKSの役割

YOSHIRO SOCKSは、このような研究結果と私自身の足底圧測定データの蓄積をもとに、以下のような目的で設計されています。

1. 足趾の正しい動きをサポート

足趾(そくし)がしっかりと機能することは、全身のバランスと健康に直結します。YOSHIRO SOCKSでは、足趾が自然に広がり、正しい位置で地面を捉えられるような設計を採用しました。これにより、足全体の圧力分布が均等化され、アフリカ人のような健康的な足の状態に近づけることを目指しています。

2. 圧力分布の最適化

YOSHIRO SOCKSの効果
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BEFORE

重心がやや後方に位置し、かかと部分に圧力が集中しているのがわかります。足指の圧力分布が少なく、アーチ部分には適度な圧力が見られず、アーチのサポート不足が懸念されます。

AFTER

この足底圧分布は理想的です。重心前後左右ともに対照的で、足趾まで圧力がしっかり分布しています。アーチ部分も適切に機能しており、全体的にバランスの良い状態です。

足底圧測定を繰り返し行い、足の特定部位に過剰な負担がかからない設計を実現しています。特に中足部をしっかりと支えることで、前足部やかかとへの負担を軽減し、足の疲労を和らげる効果を目指しています。

3. 疲労軽減と快適性

立ち仕事や長時間の歩行で足にかかる負担を軽減し、足全体の疲れを和らげることが可能です。これにより、日常生活での快適さを大幅に向上させます。

科学的検証の重要性

YOSHIRO SOCKSの開発には、数えきれないほどの足底圧測定を伴う検証を行いました。その過程で得たデータは、すべて科学的根拠に基づいています。アフリカ人の足の特性に着目し、圧力分布の均等化が足の健康に及ぼす効果を、具体的な数値で確認してきました。

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これらの検証結果は、私が以前から提唱している「足趾機能が全身の姿勢やバランスに与える影響」の理論とも完全に一致しています。YOSHIRO SOCKSは、足趾を活性化しながら、足底の圧力分布を均等化し、足の負担を軽減するために設計されています。

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アフリカの知恵を日常生活に取り入れる

アフリカのマラウイ人の足が健康的である理由には、足底圧が均等に分散され、前足部への負担が少ないことが挙げられます。YOSHIRO SOCKSは自身の長年の研究と、この研究特性を併せ現代の生活に適応させるためのアイデアを形にしたものです。

特に、私たちが普段履いている靴が足に与える影響を最小限に抑え、足本来の形状や機能をサポートすることを目指しています。この靴下を履くことで、まるでアフリカの土を裸足で歩くような自然な足の使い方を取り戻すことができるのです。

結論

YOSHIRO SOCKSは、足底圧測定による科学的検証と、長年の理学療法士としての経験を基に開発されました。この靴下を履くことで、足の負担を軽減し、健康的で快適な日常生活をサポートします。足元から全身の健康を見直したいと考える方に、ぜひ一度試していただきたい製品です。

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