【医療監修】変形性膝関節症は歩かない方がいい?― 安静が膝OAを進めてしまう誤解 ―

はじめに
こんにちは。足指研究家の湯浅慶朗です。
膝が痛くなると、多くの方がまずこう考えます。
「これ以上悪くしないために、歩かない方がいいのでは?」
「動かすと軟骨がすり減りそうで怖い」
実際、変形性膝関節症と診断された方ほど、
“安静にしている時間”が増えていく
傾向があります。
しかし臨床で膝を観ていると、
歩かないことで、かえって不安定になっていく膝
を数多く見てきました。
この記事では、
- なぜ「安静=膝に優しい」と思われているのか
- なぜ歩かないことが膝OAを進めてしまうのか
を、構造の視点から整理していきます。
「歩かない方がいい」と言われてきた背景
変形性膝関節症に対して、
- 痛みがあるときは無理をしない
- 炎症があるときは安静に
- 負担を減らすことが大切
こうした説明を受けた経験がある方は多いと思います。
確かに、強い炎症期や急性期では、
一時的な安静が必要な場面もあります。
しかし問題なのは、
痛み=常に動かさない方がいい
という理解が、そのまま習慣化してしまうことです。
膝は「使わないと安定しない関節」
膝関節は、
- 筋肉
- 靭帯
- 足元からの感覚入力
によって安定する関節です。
歩くことで初めて、
- 太もも・下腿の協調
- 重心移動
- 関節位置の微調整
が行われます。
つまり膝は、
動くことで「安定の仕方」を学習している関節
でもあります。
安静が続くと、膝に起きること
歩かない期間が続くと、次の変化が起こりやすくなります。
- 下肢筋群が協調して使われなくなる
- 膝の位置感覚が鈍る
- 立位でのバランスが不安定になる
- いざ動いたときに、力が一気に膝へ集中する
結果として、
「久しぶりに歩いたら、前より不安定」
「少し動いただけで膝がつらい」
という状態が生まれます。
これは
膝が悪化したというより、
“支え方を忘れた”状態
と考えた方が構造的に一致します。
なぜ「歩くと痛い → 歩かない」が悪循環になるのか
安静が続いた膝は、
- 足元での支えが弱く
- 重心制御が不十分で
- 衝撃を逃がせない
状態になっています。
そのまま動くと、
- かかと荷重が強くなる
- 膝を突っ張って立つ
- 動作がぎこちなくなる
結果、一歩ごとの負担が増え、
「やっぱり歩くと痛い」と感じやすくなります。
これが、
痛い → 歩かない → さらに不安定 → もっと痛い
という悪循環です。
重要なのは「歩く・歩かない」ではない
ここで誤解してほしくないのは、
「どんどん歩けばいい」
という話ではないという点です。
問題なのは、
- どう歩いているか
- どこで身体を支えているか
- 足元の環境がどうなっているか
です。
足指が使えない
足部が不安定
生活環境が崩れている
この状態で歩けば、確かに膝はつらくなります。
つまり、
歩行そのものではなく、
“支え方が崩れたままの歩行”が問題
なのです。
生活環境と「安静の誤解」の関係
歩かないことで問題が深刻化する背景には、
- 室内でスリッパ生活
- 滑りやすい靴下
- 柔らかすぎる靴
といった足元環境の影響も重なっています。
これらが組み合わさると、
- 歩かない
- 立つのも不安
- 動作を避ける
という流れが固定化しやすくなります。
生活環境と膝OAの関係を
構造的に整理した全体像については、
こちらの記事で総合的に解説しています。
▶︎ 【医療監修】生活環境と変形性膝関節症
― 日常動作が痛みを固定化するメカニズム ―

まとめ|膝OAに必要なのは「正しい安静」ではなく「正しい再開」
変形性膝関節症において、
- 完全な安静
- 動かさない生活
は、膝を守るどころか、
不安定さを助長する要因
になり得ます。
大切なのは、
- 足元の支えを整え
- 無理のない形で
- 膝が“支えを思い出せる動き”を再開すること
膝OAは「動いたから進む」のではなく、
支えを失った状態で動くから不安定になる。
その視点を持つことが、
生活と膝の関係を見直す第一歩になります。


