【医療監修】脊柱管狭窄症はなぜ「歩くとつらい」のか― 歩行と重心移動の構造的問題

はじめに
こんにちは。足指研究家の湯浅慶朗です。
脊柱管狭窄症の相談で、最も多い訴えの一つがこれです。
- 「歩くとだんだんつらくなる」
- 「立っているより、歩いている方が悪い」
- 「休むと少し楽になる」
この症状はしばしば、
- 神経が圧迫されるから
- 年齢による変化だから
と説明されます。
しかし臨床的には、
「歩く」という動作そのものが原因ではない
ケースが非常に多く見られます。
この記事では、
- なぜ歩行中に症状が出やすいのか
- どこで負担が生まれているのか
- 歩くほど悪化する人に共通する構造
を整理します。
歩行は「動き」ではなく「連続した荷重移動」
まず重要な前提があります。
歩行とは、
- 足を動かす動作 ではなく
- 体重を前へ移し続ける連続動作
です。
つまり歩くたびに、
- 体重がどこに乗るか
- どこで受け止めるか
- どこで逃がすか
が繰り返し問われます。
脊柱管狭窄症で問題になるのは、
この荷重の通り道が、腰に集中しているかどうか
です。
「歩くとつらい人」に共通する第一条件
歩行で悪化する人を観察すると、
ほぼ共通して次の特徴があります。
- 一歩ごとに腰に力が入る
- 歩行中、腰が主役になっている
- 脚より先に腰が疲れる
これは、
歩行の重心移動を、腰椎で処理している状態
です。
本来、歩行では、
- 足裏
- 足指
- 下肢
- 骨盤
が順番に重心移動を引き受けます。


それが機能しないと、
腰椎が「調整役」を押し付けられる
という構造が生まれます。
なぜ歩くほど症状が増すのか
脊柱管狭窄症では、

- 神経の通り道に余裕が少ない
- 微細なズレにも影響を受けやすい
という前提があります。
歩行中に、
- 腰椎が前後に揺れる
- 体重移動が腰主導になる
- 同じ方向の剪断力が繰り返される
と、
歩くほど、同じ刺激が蓄積される
ことになります。
これが、
- 最初は大丈夫
- しばらくするとつらい
- 休むと少し楽
という症状の正体です。
「歩き方」ではなく「支え方」の問題
ここでよくある誤解があります。
- 歩き方が悪い
- フォームを直せばよい
という考えです。
しかし実際には、
歩行フォーム以前に、支えの土台が崩れている
ケースがほとんどです。
具体的には、
- 足指が地面を捉えられていない
- 前足部で体重を受け止められない
- 重心が後ろに逃げる
という状態です。
この状態では、
どんな歩き方を意識しても、
腰椎が代償役になります。
足元との関係については、以下の記事で詳しく整理しています。
▶︎ 【医療監修】脊柱管狭窄症を慢性化させる足指変形― 外反母趾・浮き指・屈み指という共通土台

骨盤が「歩行の中で動けない」とどうなるか
歩行中、骨盤は本来、
- わずかに回旋する
- 前後に揺れる
- 衝撃を分散する
役割を担っています。
しかし、
- 骨盤後傾で固まっている
- 反り腰で固定されている
と、
骨盤が歩行中に仕事をしなくなります。
その結果、
- 骨盤の役割を腰椎が引き受ける
- 歩くほど腰が疲れる
- 神経への余裕が失われる
という流れが起こります。
骨盤との関係については、次の記事で詳しく解説しています。
▶︎ 【医療監修】脊柱管狭窄症と骨盤後傾の関係
― 腰が逃げられなくなる人の共通構造

▶︎ 【医療監修】脊柱管狭窄症と反り腰の関係
― 一見よさそうな姿勢が負担を増やす理由

「歩ける=安心」ではない理由
「まだ歩けているから大丈夫」
そう言われることも多いですが、
構造的には、
- 歩けている
- 進んでいる
ことと、
負担が溜まっていない
ことは、まったく別です。
特に、
- 歩行後に腰が重くなる
- 夕方に悪化する
- 歩行距離が徐々に短くなる
といった変化は、
歩行中に負担が蓄積しているサイン
です。
歩行が悪者なのではない
誤解してほしくないのは、
- 歩くこと
- 動くこと
自体が悪いわけではありません。
問題は、
どこで体重を受け止めながら歩いているか
です。
足元で支えられている歩行
骨盤が微調整できる歩行
では、
腰椎への負担は大きく変わります。
Hand-Standing理論から見る歩行の問題

私が提唱している Hand-Standing理論 では、
- 姿勢
- 歩行
- バランス
はすべて、
「支持点がどこにあるか」
で決まると考えます。
歩行で症状が出やすい人は、
- 支持点が腰に上がっている
- 足元が支持点として機能していない
状態です。
この視点については、理論編の記事で詳しく解説しています。
▶︎ 【医療監修】Hand-Standing理論で読み解く脊柱管狭窄症
― 背骨ではなく「支持点」から考える姿勢制御

まとめ|「歩くとつらい」は構造のサイン
歩行でつらくなるのは、
- 動いたから
- 歩いたから
ではありません。
- 歩行中の重心移動
- 支えの分担
- 腰が主役になっていないか
という構造の問題です。
脊柱管狭窄症では、
歩くたびに何が起きているか
を見直すことが、
理解への大きな一歩になります。


