はじめに
こんにちは。足指研究家の湯浅慶朗です。
「屈み指にはタオルギャザーが良いと聞きました」
これは、私が臨床や相談の現場で 最も多く受ける質問のひとつ です。
そして同時に、最も慎重に説明が必要なテーマでもあります。
結論からお伝えします。
すでに屈み指(ハンマートゥ)がある方にとって、
タオルギャザーは“逆効果になるケースが少なくありません”。
ただし、これは
「タオルギャザー=悪」
という単純な話ではありません。
この記事では、
- なぜタオルギャザーが長年推奨されてきたのか
- なぜ“健康な足”では意味があるのか
- なぜ“屈み指の足”では問題が起きやすいのか
- 足指リハビリにおける「順番」の考え方
を、構造・神経制御・臨床経験の3つの視点から整理します。
なぜタオルギャザーは「良い運動」とされてきたのか
まず最初に、タオルギャザーが広く推奨されてきた理由を整理します。
タオルギャザーは主に、
- 足底筋群を鍛える
- 内在筋を使う
- アーチを支える
といった目的で紹介されてきました。
実際、条件が整った足に対しては、タオルギャザーが有効に働くこともあります。
この点は、私も否定しません。
「足指でつかむ=良いこと」という強い刷り込み
多くの解説では、
- 「足指で地面をつかみましょう」
- 「タオルをたぐり寄せましょう」
といった表現が使われます。
この結果、
足指は“曲げて鍛えるもの”
つかめるほど良い足
というイメージが、強く定着しました。
しかし、このイメージこそが
屈み指の人にとっては落とし穴になります。
屈み指の本質は「曲げられすぎた結果」
屈み指(ハンマートゥ)は、単なる筋力低下ではありません。
構造的には、
- 長趾屈筋・短趾屈筋などの屈筋群が優位
- 伸筋群・内在筋が機能しにくい
- 関節が屈曲位で固定化していく
という “曲げすぎの結果” として生じます。
つまり、
👉 すでに足指は「過剰に曲げられてきた状態」
ここにさらに
「曲げる運動」を重ねると、何が起こるでしょうか。
なぜタオルギャザーが逆効果になり得るのか
タオルギャザーは、動作としては非常にシンプルです。
- 足指を曲げる
- タオルをたぐり寄せる
しかし屈み指の足では、
- すでに屈筋が過剰に働いている
- 伸ばす方向の神経入力が乏しい
- 関節の可動性が低下している
という条件が重なっています。
この状態でタオルギャザーを行うと、
- 屈筋優位がさらに固定される
- 指を「伸ばす感覚」が失われる
- 関節周囲が硬くなる
といった 構造的リスク が高まります。
人は「滑ると、無意識に指を曲げる」
ここで重要なのが、神経制御の話です。
人間は、
- 不安定
- 滑りやすい
- 支えがない
と感じた瞬間、
無意識に「曲げてつかむ」反射が起こります。
これは意志ではなく、防御反応です。
つまり、
- 靴の中で滑る
- 床が不安定
- 支持感が乏しい
こうした環境では、
足指は勝手に曲がろうとするのです。
タオルギャザーは、この「曲げ反射」を
意図的に強化する運動でもあります。
臨床で実際に多いケース
私のもとには、次のような相談が数多く寄せられます。
- 真面目にタオルギャザーを毎日続けた
- でも屈み指は改善しなかった
- むしろ指が硬くなり、戻らなくなった
ここで重要なのは、
👉 努力が無駄だったわけではない
👉 順番が違っただけ
という点です。
「鍛える前に整える」という足指リハビリの原則
屈み指のリハビリで、私が最も重視している原則があります。
それは、
鍛える前に、整える
という考え方です。
屈み指では、まず
- 足指を“伸ばす方向”を思い出す
- 指が自然に並ぶ配置を取り戻す
- 曲げ続けてきた癖を減らす
これが 最優先事項 になります。
なぜ「鍛えない」ことが重要なのか
屈み指の足は、
筋力が弱いのではなく、使い方が偏っている
状態です。
ここで筋トレを行うと、
- 偏った使い方をさらに強化
- 神経パターンが固定
- 可逆性が下がる
という結果になりやすいのです。
では、タオルギャザーはいつ行えばいいのか
ここまで読んで、
「じゃあ、タオルギャザーは一生やらないほうがいいの?」
と思った方もいるかもしれません。
答えは NO です。
- 足指が自然に伸びる
- 配置が整う
- 接地感覚が戻る
こうした条件が整った “後” に、
補助的な運動としてタオルギャザーを行う
これは理にかなっています。
重要なのは 順番 です。
タオルギャザーが向いている足・向かない足
向いているケース
- 健康な足
- 明らかな屈曲変形がない
- 足指の可動域が十分
注意が必要なケース
- すでに屈み指がある
- 指が伸びにくい
- 曲がった位置で固まっている
この区別をせずに
「誰にでも同じ運動」を勧めることが、問題なのです。
代わりに優先すべき考え方
屈み指で最初に行うべきなのは、
曲げること ではなく「感じ直すこと」
です。
- 指が床に触れる感覚
- 伸びる方向の感覚
- 広がる配置の感覚
これらを取り戻すことで、
足指は“鍛えなくても”使われ始めます。
まとめ
- タオルギャザーは万能ではない
- 健康な足では意味を持つことがある
- 屈み指では逆効果になるケースがある
- 原則は「鍛える前に整える」
- 順番を間違えなければ、運動は味方になる
👉 屈み指の原因・全体構造・セルフケアの考え方については
【▶ 屈み指の全体像はこちら】

