外反母趾は遺伝より生活習慣が影響?最新研究から読み解く外反母趾の本当の原因

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質問:私の母も祖​​母も外反母趾でした。私も外反母趾になるのでしょうか?

—東京都の久保井さんより投稿

足指ドクターによる解説

YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗

理学療法士(Physiotherapist)、足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、ひろのば体操・YOSHIRO SOCKS・ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(10万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。東京大学 石井直方 名誉教授の弟子でもある。

私たちの答え

こんにちは。理学療法士の湯浅慶朗です。これまでに10万人以上の足のトラブルと向き合い、足指だけで姿勢や痛みを改善してきました。

さて、「外反母趾(がいはんぼし)」というのは、足の親指が外側にぐいっと曲がってしまう状態のことです。

「うちの母もおばあちゃんも外反母趾だったから、私もきっとなる」と心配される方はとても多いです。

でも、実は本当の原因は“遺伝”よりも“生活習慣”のほうがずっと大きいのです。

2011年にハーバード大学が発表した研究では、男女600人を対象に外反母趾のリスク要因を調査。女性では、低BMIと20〜64歳の間にハイヒールを常用していたことが外反母趾の発症と関連していました。男性では、高BMIと扁平足がリスク要因として挙げられました。

2016年に発表された双子研究では、一卵性双生児(MZ)と二卵性双生児(DZ)を比較し、外反母趾の発症における遺伝と環境の影響を調査しました。結果、MZとDZの間で外反母趾の一致率に有意な差は見られず、遺伝的要因よりも環境要因、靴の選び方や履き方が発症に関与している可能性が示されました。

近年の研究では、外反母趾の発症は遺伝によるものではなく、子どもの足の形や体重のかかり方が大きく関与している可能性が示されています。特に、太りぎみや肥満の子どもは足が長く幅広く、かかとも広くなる傾向があり、さらに足のアーチ(土踏まず)が低くなりやすいことがわかっています。これらの特徴は、成長とともに外反母趾のリスクを高める要因となります。

1. 遺伝よりも「靴の習慣」が問題です

たとえば、家族みんなが同じように先の細い靴を履いていると、足の形も似てきます。親指が内側に押し込まれるような靴を長く履けば、だれでも外反母趾になりやすくなります。これは「遺伝」ではなく、「習慣のコピー」と言えるかもしれません。

窮屈な靴によって外反母趾になっている例

もちろん、人によって関節がやわらかくて変形しやすい体質の方もいます。でもそれだけで外反母趾になるわけではありません。合わない靴を長く履くことが決定的な原因になるのです。

2. 靴だけでなく「靴下」も重要なポイントです

多くの方が見落としているのが、靴下の影響です。

実は、足指をしめつけるようなきつい靴下(ストッキングなど)や、純綿やシルクなど滑りやすい素材の靴下も、足指の動きを妨げてしまいます。靴の中で足がズレやすくなると、足指は力を入れて踏ん張ろうとし、常に不自然な緊張がかかります。それが毎日積み重なることで、足指の動きが制限され、変形が進みやすくなるのです。

同じ5本指靴下でも厚みが大きく違う

とくに、5本指靴下だから安心というわけではありません。矯正力を出そうとするあまり、圧力が強すぎたり、靴下の厚みがあっても、かえって足指の自由を奪い、血流も悪くしてしまうことがあります。

条件理想値なぜ必要か
摩擦係数1.5〜2.3N以上滑らず、足裏の感覚刺激がしっかり脳に届く
圧迫力(足指部分)5.5〜9.0 gf/cm²血流や神経を妨げず、筋収縮を誘発する刺激として機能
圧迫力(足指部分)15〜25 gf/cm²血流や神経を妨げず、アーチをサポートする刺激として機能
伸長率1.5〜1.8倍以上足指の広がりに追従し、筋出力を妨げない柔軟性
YOSHIRO SOCKS = 感覚入力・神経伝達・筋活動を妨げない構造

私は、こうした足指への負担を最小限におさえるために、圧迫の度合いや素材の摩擦係数(ズレにくさ)、伸びのよさまで計算した「YOSHIRO SOCKS」という靴下を開発しました。足指が自然に広がり、正しく働くことをサポートする設計です。

3. 歴史の中でも「靴」が外反母趾を作っていました

「靴が原因で足の形が変わる」ことは、実は歴史的にも証明されています。

2005年にイギリスで行われた研究では、中世(ちゅうせい)の人たちの骨を調べました。すると、外反母趾のように親指が曲がっていた骨は、「中世後期(14〜15世紀)」の人たちに多く見つかりました。

この時代、裕福な人々の間で“つま先の細く尖った靴”が流行していたことが、歴史書や出土品からもわかっています。つまり、「靴の形が変わった時代に、外反母趾も増えた」というわけです。これは今の私たちにも、強いメッセージを与えてくれます。

4. 足は変えられる。だから予防できる

外反母趾は、「遺伝だからしょうがない」とあきらめるものではありません。生活を見直せば、予防もできるし、悪化を防ぐこともできるのです。

足の未来を変えるために、私がいつも伝えている3つのポイントは以下の通りです。

  • 足指が自由に動ける「広い靴」を選ぶ
  • 足の指を圧迫しない「適切な靴下」を履く
  • 足指を正しく使う体操(ひろのば体操など)を取り入れる
  • 足指を正しい形状に戻すYOSHIRO SOCKSを取り入れる

足は一生あなたを支えてくれる大切な土台です。だからこそ、靴と靴下を選ぶところから、やさしく丁寧に向き合ってほしいと私は願っています。

オシャレな靴は履けない?

では、仕事でパンプスをどうしても履かなければいけない人はどうすれば良いかという問題ですね。確かに足指を締め付ける靴は外反母趾の要因の一つ。しかし、パンプスを1日中履いていても外反母趾にならない人もいます。

これまでは外反母趾の要因が「足指を締め付ける靴」でした。しかし私たちの研究で、外反母趾の本当の原因は「足の筋力低下」であることを証明し、2014年のThe Japanese journal of physical therapyの雑誌にも掲載されています。つまり、足の筋力を取り戻す、もしくは足の筋力が落ちないようにしていけば、パンプスを履き続けても外反母趾にはならないし、外反母趾も良くなるということなのです。

スクロールできます
外反母趾が改善①
外反母趾が改善②
外反母趾が改善③
外反母趾が改善④
外反母趾が改善⑤

そのことの証明は、私たちの臨床現場における外反母趾の改善症例としてきちんと示されています。仕事でパンプスを履かなければいけない、休みの日にオシャレを楽しみたいという人は、1日1回20〜30分間、足指と足の筋肉を鍛える時間を確保してください。そうすればパンプスを履いていても、外反母趾の予防はもちろん、改善させることも可能です。

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