【医療監修】変形性膝関節症はなぜ「膝だけ」治療しても改善しないのか── 痛みの本当の原因は、膝より下にある

はじめに
こんにちは。足指研究家の湯浅慶朗です。
私はこれまで25年以上にわたり、延べ10万人以上の足と姿勢、歩行を評価してきました。その中で、変形性膝関節症と診断された方を数多く見てきましたが、ある共通点に気づきました。
それは、
「膝だけを治療しても、日常の不安や違和感が消えない人が非常に多い」
という事実です。
注射、リハビリ、インソール、電気治療、そして手術。
医療として正当な選択をしているにもかかわらず、
・歩くと不安定
・長く歩けない
・再び痛みが出る
・反対側の膝も不安になる
こうした声が後を絶ちません。
では、なぜでしょうか。
本記事では、
・なぜ「膝だけ」を見ていては足りないのか
・膝にかかる負担はどこから生まれているのか
・足指・足部・重心という視点がなぜ重要なのか
を、臨床と構造の視点から整理していきます。
ここで紹介する内容は、特定の治療法や効果を保証するものではありません。
あくまで「身体をどう捉えるか」という考え方の整理です。
しかし、この視点を知ることで、
「自分の膝は、なぜ良くならないのか」
という疑問に、一つの納得が生まれるはずです。
変形性膝関節症は「膝の病気」と思われすぎている

変形性膝関節症は、一般に
「膝の軟骨がすり減る病気」
と説明されます。
確かに、画像診断では関節裂隙の狭小化や骨棘が確認されることがあります。
しかし、ここで一つ重要な点があります。
それは、
画像上の変化と、痛みや不安定感は必ずしも一致しない
ということです。
実際に、
・画像では変形が進んでいるが、痛みがほとんどない人
・画像上は軽度なのに、歩行に強い不安を感じる人
この両方を、私は何度も見てきました。
つまり、膝関節そのものの変形だけでは、
「なぜその人が困っているのか」を説明しきれないのです。
膝は「結果」が集まる場所である

膝関節は、身体の中で非常に特殊な関節です。
股関節のように多方向に動くわけでもなく、
足関節のように地面と直接接しているわけでもありません。
膝は、
つまり、
上下から伝わる力を“受け止める関節”
なのです。
上からは体重と体幹の重さ。
下からは足部・足指を通じて地面反力が返ってきます。
この上下の力のバランスが崩れたとき、
最も影響を受けやすいのが膝です。
だからこそ、膝は「原因」になりやすいのではなく、
「結果が集中しやすい場所」なのです。
足元で起きていることは、膝に必ず伝わる

ここで、足元に目を向けてみましょう。
多くの変形性膝関節症の方に共通して見られる足の特徴があります。
・足指が地面についていない
・指が曲がったまま固まっている
・足が靴の中で前に滑っている
・踵重心が強く、前足部が使えていない
これらはすべて、
足部が本来担うべき役割を果たせていない状態
です。
足指は、単に「飾り」ではありません。
本来、足指は
・体重を分散して受け止める
・重心の微調整を行う
・前に進むための推進力を作る
という役割を担っています。
この機能が低下すると、
その“ツケ”は必ず上に伝わります。
最初に負担を受けるのが足首、
次が膝、
さらに股関節や腰へと連鎖していきます。
「膝に負担がかかる歩き方」は、膝で作られていない

よく、
「膝に悪い歩き方をしているから」
と言われます。
しかし、ここにも大きな誤解があります。
多くの場合、
膝に負担がかかる歩き方は、膝で選択されていません。
足元が不安定であれば、
・膝を固める
・可動域を小さくする
・無意識に逃げる動きを取る
こうした代償が起こります。
これは「癖」ではなく、
身体が安全を確保しようとした結果です。
足指が使えない
↓
地面が怖い
↓
膝で安定を取ろうとする
この流れは、非常に多くの方に共通しています。
なぜ注射やリハビリだけでは足りないのか

実際に、多くの患者さんが
「画像は悪くないのに膝が痛い」「歩くとすぐ疲れる」と訴えます。
このような膝の痛み・違和感の実例としては、
▶ こちらの記事もご覧ください。
注射やリハビリが無意味だと言いたいわけではありません。
それらは、
・痛みを一時的に緩和する
・関節周囲の環境を整える
という点で重要な役割を果たします。
しかし、それだけでは
「なぜ膝に負担が集中したのか」
という問いには答えていません。
足元の使い方が変わらなければ、
身体は再び同じ負担のかけ方を選びます。
これは、意識や根性の問題ではありません。
環境と構造の問題です。
足指・足部は「重心制御の起点」である
人間の重心は、常に動いています。
立っているだけでも、
歩いているときでも、
微細な揺れを繰り返しています。
この揺れを最初に感知し、調整しているのが足部です。
特に足指は、
・床の感触
・滑りやすさ
・傾き
を最も早く感知するセンサーです。
このセンサーが鈍くなると、
身体はより上位の関節で調整しようとします。
結果として、膝が過剰に働くのです。
「膝だけを治す」という発想の限界
ここまで整理すると、
なぜ膝だけを見ていても改善につながりにくいのかが見えてきます。
膝は、
・足元の不安定さ
・重心の偏り
・歩行の代償
すべてを受け止める場所です。
そこだけに注目しても、
負担の出発点が変わらなければ、再発や停滞が起こりやすい
という構造は変わりません。
「治す」よりも「崩さない」視点へ
変形性膝関節症を考えるとき、
私は次の視点が重要だと考えています。
・これ以上、膝に無理をさせない
・負担が集中しない使い方を増やす
・日常動作の中で、足元を整える
これは治療ではありません。
生活の中での構造調整です。
足指が使いやすい環境
滑りにくい床や靴
無理のない歩行量
こうした積み重ねが、
結果的に膝への負担を分散させます。
変形性膝関節症を「全身の問題」として捉える
変形性膝関節症は、
決して「膝だけの問題」ではありません。
・足指
・足部
・重心
・歩行
・生活環境
これらが絡み合った結果として、
膝に症状が現れているケースが非常に多いのです。
だからこそ、
「膝が悪いから、膝だけ治す」
という発想から、
「なぜ膝に負担が集まったのか」
という問いへ視点を移すことが大切です。
まとめ
変形性膝関節症は、
・膝だけを見ても全体像は見えない
・足元の機能低下が負担を集めていることが多い
・足指と重心は膝の状態に深く関わっている
という特徴を持っています。
膝を責めるのではなく、
身体全体の使われ方を見直す。
その視点が、
これからの選択肢を広げてくれるはずです。
足元から身体を見る。
それは、遠回りに見えて、
実はもっとも合理的な道かもしれません。


