足指の解剖学入門⑤ 短趾屈筋とは?

足指ドクターによる解説

YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗

足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(7万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。日本で初めて「足指外来」を設立。

目次

はじめに

足はたくさんの筋肉が密集していて、覚えるのも嫌になりますよね。でも足を触り続けていくと、「あれ?この部分だけ妙に硬いな」ってわかるようになって、患者さんの症状と照らし合わせながら、その筋肉名と働きを確認すると、「なるほど!」と思うことが多々あります。

そうやって足指〜姿勢〜咬合まで全て繋がっている体の図式みたいなもの(Body Diagrum)が完成したのですが、これを完成させるまでに10年かかりました。いつか公開する日が来ると思いますので、楽しみにしていてください。さて、今日は足裏についている筋肉の第1層にある「短趾屈筋(たんしくっきん)」についてです。

短趾屈筋とは?

短趾屈筋(たんしくっきん、Flexor Digitorum Brevis)は、足の裏に位置する筋肉の一つで、主に足の指(第2から第5趾)を曲げる役割を担っています。この筋肉は、歩行や走行、バランスを取るときに非常に重要な働きをしています。「地面をつかむ」とか「しっかり踏ん張る」という時に使う筋肉ですね。

豆知識

筋肉は基本的に、収縮する(ちぢむ)ことで関節を動かしています。短趾屈筋は、「踵」と「足指先」にくっついている筋肉。わかりやすく言えば、踵のほうから筋肉を引っ張ることで足指の関節を曲げていることになります。

どこにあるの?

起始(きし):短趾屈筋は、かかとの骨(しょうこつ)の前の部分から始まります。
停止(ていし):この筋肉は、第2から第5の指の中ほどの骨(中節骨)にくっついています。

専門家向け

【起始】

短趾屈筋は、踵骨(しょうこつ、Calcaneus)の前側部分から始まります。具体的には、踵骨の底面にある突起部分(踵骨結節、Calcaneal tuberosity)から起始します。

【停止】

短趾屈筋は、第2から第5趾の中節骨(ちゅうせつこつ、Middle Phalanges)の底面に停止します。この筋肉は、足の指を曲げるための主要な力を提供します。

【作用】

短趾屈筋の主な作用は、足の指(第2から第5趾)を曲げる(屈曲する)ことです。
踏ん張り: 階段を上るときやジャンプするときなど、足の指をしっかりと曲げることで、強い踏ん張りが可能になります。
歩行: 地面を踏みしめるときに足の指を曲げることで、力を効率よく伝えることができます。
バランスの維持: 足の指を適切に動かすことで、立っているときや歩いているときのバランスを取るのに役立ちます。

つまり、この筋肉は足指に付着していますよ、ということです。

どんな役割をしているの?

短趾屈筋の仕事は、足の指を曲げることです。これにはいくつかの重要な役割があります。

力を入れるとき:階段を上るときやジャンプするときなど、足の指を強く曲げることで力を発揮します。

歩くとき:足の指を曲げることで、地面をしっかりと踏みしめることができます。

バランスを取るとき:立ったり歩いたりするときに、足の指をうまく使ってバランスを取ります。

なぜ大切なの?

短趾屈筋は、歩くときに足の指を曲げて地面をしっかりと押すのを助けます。これによって、安定して前に進むことができます。また、しっかりと踏ん張れるので、正しい姿勢で立つことができ、転びそうになってもグッと耐えることができるのはこの筋肉のおかげなんです。

簡単にまとめると

場所:足の裏
仕事:足の指を曲げる
大事な理由:歩くとき、バランスを取るとき、力を入れるときに必要

短趾屈筋は、毎日の生活で足を使うときにとても大切な役割を果たしています。この筋肉がしっかりしていると、歩くのも走るのも上手になりますよ。

短趾屈筋の筋力低下

短趾屈筋(たんしくっきん)の筋力が落ちると、いくつかの問題が発生します。以下に、その影響をわかりやすく説明します。

歩きにくくなる

短趾屈筋が弱くなると、足の指をうまく曲げられなくなります。これにより、地面をしっかりと押すことができなくなり、歩くのが不安定になります。特に、長い距離を歩くと疲れやすくなります。

バランスを取るのが難しくなる

足の指を使ってバランスを取るのが難しくなり、立っているときや歩いているときに転びやすくなります。特に、不安定な場所や滑りやすい場所では危険です。

階段を上るのが大変になる

短趾屈筋が弱くなると、階段を上るときに足の指で力を入れるのが難しくなります。これにより、階段を上るのが大変になり、疲れやすくなります。

足の形が崩れる

短趾屈筋が弱くなると、足のアーチ(足の裏のカーブ)が崩れやすくなります。これにより、足が平らになってしまう「偏平足(へんぺいそく)」になりやすくなります。偏平足は、歩くときに足が疲れやすくなったり、痛みが出たりすることがあります。

足の指が変形する

短趾屈筋が弱くなると、足の指が変形しやすくなります。例えば、指が浮いてしまう「浮き指」により、足の筋力が落ちれば「外反母趾(がいはんぼし)」などの問題が起こることがあります。

「浮き指」が短趾屈筋の筋力低下をまねく

靴下や靴の中で足が滑るようになると、足指を浮かせて滑らないように踏ん張ろうとします。これが長時間・長期間繰り返されると、ずっと足指を浮かせた状態になるため、短趾屈筋が働かず、筋力が低下することもあります。これが短趾屈筋の筋力が落ちる原因です。

浮き指のままでは、歩く時に足指がうまく使えていない状態。筋肉を鍛える前に、適切に足指が使えるように「ひろのば体操」や「YOSHIRO SOCKS」で足指をまっすぐにして鍛えると効率的です。

筋肉を鍛えるには、この筋肉がどこに付着しているかを知ることです。「踵骨と足指」に付着しているので、足指の曲げ伸ばしをすることで鍛えることができる筋肉ということです。つまりは、歩く時に足指でしっかりと地面を蹴って、踵着地の時につま先がしっかりと上がっていること。1日6,000歩ほど歩けば、片足3,000回のトレーニングになります。

セルフチェック

浮き指になると、短趾屈筋の筋力が落ちて、足の筋肉が思うようにつかなくなります。まずはグーとパーができるかチェックを行いましょう。

グー(短趾屈筋の筋力チェック)

短趾屈筋の筋力が落ちていない人は、足指の「グー」がスムーズにできます。もしこれができない場合には、短趾屈筋の筋力が低下していると思ってください。

第3関節までしっかり曲がるかチェック

パー(短趾屈筋の機能チェック)

短趾屈筋の機能不全による屈み指は、足指の「パー」がスムーズにできなくなります。もしこれができない場合には、短趾屈筋の機能が低下していると思ってください。

全ての指が広がるかチェック

短趾屈筋のエクササイズ

ひろのば体操

短趾屈筋が硬くなったり、機能不全を起こしたら「伸ばす」ことが大切です。そのために「ひろのば体操」というものを開発していまいます。「ここの筋肉を伸ばしているんだな」と意識することで、より効果的にストレッチを行うことができます。1日1回5分を目安にやってみましょう。

ひろのば体操の正しいやり方

YOSHIRO SOCKS

足指や足部の骨格を本来の形状に戻すことで、足裏や足背の筋肉を正常に働かせるために開発したものです。短趾屈筋が硬くなっても、機能不全になっても本来の筋肉の柔らかさと機能に戻すように作られています。

足指の変形、カラダの歪み、歩行が不安定なのは、靴よりも靴下の影響のほうが大きいため、まずは靴下を変えることをお勧めします。

定期チェック

ひろのば体操を行ったら、定期的に「グー」と「チョキ」をやってみましょう。この筋肉が伸びれば伸びるほど、スムーズに行えるようになるのがわかると思います。

目次