はじめに
腰痛は「直立歩行の代償」とも言われますが、私は必ずしもそう考えてはいません。
人の身体は構造上、大きな負担にも耐えるよう精密に作られています。
問題は構造そのものではなく、
“日常生活で姿勢が崩れ、その結果として負担が蓄積する” という点です。
これは、関節運動学・生理学・解剖学・人間工学を理解すると明確になります。
概要
筋筋膜性腰痛は血流障害が原因

筋筋膜性腰痛は、筋肉や筋膜に負担がかかり、血流が滞ることで痛みやこわばりが生じる状態を指します。
長時間の同じ姿勢・不適切な姿勢・精神的ストレスなどが積み重なると発生しやすくなります。
また他疾患(椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症など)と似た痛みが生じるため、鑑別が難しいこともあります。
症状
筋筋膜性腰痛の症状には、以下のようなものがあります。
1)腰部や臀部に痛みや強張りが感じられる
2)長時間同じ姿勢を続けることで悪化する
3)起床時や動作時に痛みが悪化する
4)激しい運動や体を動かすことで痛みが増す
5)睡眠中に痛みで目覚めることがある
これらの症状がある場合は、早めに適切な足指の治療を受けることが重要です。
原因・発症のメカニズム
筋筋膜性腰痛の発生要因
筋筋膜性腰痛の発生要因としては、一般的な医学では以下のようなものが挙げられます。
1)カラダのバランスの崩れ
2)長時間の姿勢保持や同一の動作の繰り返しによる筋肉の疲労
3)運動不足や腰部の筋肉や膜の損傷や炎症
4)腰椎の変形や脱臼、椎間板のヘルニア
5)腰部の急性外傷やスポーツ障害による損傷
6)過度のストレスや精神的な負担による筋肉の緊張
7)骨粗しょう症や関節炎、腫瘍などの基礎疾患による影響
この中でも1)が2)〜5)の原因となることはあまり知られていません。「置性系(ちせいけい)メカニズム」と言いますが、これはまた別の記事で紹介したいと思います。まずは良い姿勢(ニュートラルポジション)を作ることからはじめていきましょう。
筋筋膜性腰痛の力学的なメカニズム
ニュートラルポジションは、正しい姿勢を維持するための基本的な姿勢のことです。この姿勢は、身体の各部位が正しい位置に保たれ、体重が均等に分散されている状態を指します。身体 ( 関節、筋肉、靭帯 ) への負担が最小限で全身の運動機能や循環機能の働きがバランス良く円滑に発揮し易い状態になります。


そのため、このニュートラルポジションではない姿勢になると、背中を支えている筋肉への負担が大きくなり、背中の部分の血管が圧迫されて「血流障害」により腰に痛みが出ます。身体の背中の部分で血管が圧迫されると、その箇所に栄養や酸素が不足し、痛みや炎症が起き、「筋筋膜性腰痛」になるというわけです。
横から見たニュートラルポジションの姿勢


耳たぶとくるぶしを結んだ直線の中に、肩(肩峰)・大転子(股関節)・膝の中心が通っていることを「ニュートラルポジション」と呼びます。
反り腰による血流障害と筋肉の炎症
1つ目のメカニズムは、①靴の種類・履き方→②足指変形(かがみ指・浮き指)→③後方重心→④骨盤前傾→⑤反り腰→⑥腰椎の過剰な前弯→⑦腰の筋肉のこわばり(筋肉の圧迫)→⑧血流障害→⑨筋肉の炎症→⑩筋筋膜性腰痛というメカニズムです。


猫背による血流障害と筋肉の炎症
2つ目のメカニズムは、①靴の種類・履き方→②足指変形(かがみ指・浮き指)→③後方重心→④骨盤後傾→⑤猫背→⑥胸椎の過剰な後弯→⑦胸腰部の筋肉のこわばり(筋肉の圧迫)→⑧血流障害→⑨筋肉の炎症→⑩筋筋膜性腰痛というメカニズムです。


かがみ指や浮き指になると、かかと寄りに体重が乗る(踵重心)ようになります。踵重心になれば後ろに姿勢が倒れそうになるのですが、体幹を前に倒したり後ろに反らせることでバランスを取ろうとします。これを姿勢制御ともいいます。
そうすると反り腰や猫背になるのですが、背骨の生理的なS字カーブがなくなることで、筋肉の線維がこわばります。その結果、血管が圧迫されて血流が悪くなり、筋肉や筋膜が炎症を起こして、腰痛として痛みが出るというものです
正面から見たニュートラルポジションの姿勢


左右のくるぶし・ひざ・骨盤・肩・耳の高さが同じであれば「ニュートラルポジション」と呼びます。基本的に上に行くほどズレは大きくなるので、肩や耳の高さが左右で違えば、くるぶし・ひざ・骨盤はゆがんでいると言えます。
背骨の変形(側弯)による血流障害と筋肉の炎症
3つ目のメカニズムは、①靴の種類・履き方→②足指変形(外反母趾)→③内側・外側重心→④X脚・O脚→⑤脚の長さの左右差→⑥骨盤のゆがみ→⑦背骨の変形→⑧筋肉のこわばり→⑨血流障害→⑨筋肉の炎症→⑩筋筋膜性腰痛というメカニズムです。


①親指の機能不全(外反母趾など)になると、体重が内側に乗りやすくなります。回内足とも言いますが、そうするとそのまま膝が内側に倒れてX脚になり、短い脚の方へ骨盤が倒れます。そうすると骨盤の上に乗っていた背骨は、バランスを取るためにS字カーブを描きながら重心を中心に戻そうとします(姿勢制御機構)。


②小指の機能不全(内反小趾など)になると、体重が外側に乗りやすくなります。回外足とも言いますが、そうするとそのまま膝が外側に倒れてO脚になり、短い脚の方へ骨盤が倒れます。そうすると骨盤の上に乗っていた背骨は、バランスを取るためにS字カーブを描きながら重心を中心に戻そうとします(姿勢制御機構)。

骨盤の高さに左右差が出ると、背骨がS字カーブになり、腰の筋肉の線維がこわばります。その結果、血管が圧迫されて血流が悪くなり、筋肉や筋膜が炎症を起こして、腰痛として痛みが出るというものです。骨盤が上がっている方の腰を痛めやすくなります(右脚が短ければ左の腰痛)。
もう少し詳しくみていきます。


ニュートラルポジションの姿勢では、身体の各部位が正しい位置に保たれ、筋肉は緩んだ状態です。筋肉の血管も循環機能の働きが良い状態が保たれています。


ところが、ゆがんだ姿勢になると、身体の各部位が間違った位置に保たれ、筋肉はこわばった状態です。筋肉の血管も圧迫されることで循環機能の働きが悪い状態になってしまいます。筋肉や筋膜が炎症を起こしやすい状態です。
腰痛の原因が血流障害によるものであれば、根本的な原因である足指を治療し、それによりカラダ全体のゆがみを解消し、血液の循環を改善することが重要です。筋トレやストレッチ、姿勢指導で腰痛が改善しないのはこのためです。
検査・セルフチェック
筋筋膜性腰痛は、腰の筋肉や筋膜に痛みを引き起こす状態です。以下は、セルフチェックの方法です。
1)腰の痛みがどこから来ているかを意識してみましょう。特に腰の周りやお尻、太ももの筋肉に痛みや緊張を感じるかどうか確認してください。
2)腰のまわりの筋肉が硬く緊張しているかどうかを確認します。マッサージやストレッチをしてみて、硬さや痛みの程度を感じてみてください。
3)腰の痛みが特定の動きや姿勢で悪化するかどうかを確認します。特に、長時間同じ姿勢でいると腰が痛くなる、あるいは特定の動きをすると痛みが増すといったことがあれば、それをメモしておきましょう。
4)日常生活や運動の中で、腰に負担をかけるような動作があるかどうかを確認します。例えば、重いものを持ち上げる際の姿勢が悪かったり、長時間同じ姿勢でいることが多かったりする場合は、それが腰痛の原因となっている可能性があります。
姿勢のセルフチェック①
まず、自分の真横からの姿勢をスマホなどで撮影してみましょう。スマホの中心点がカラダの中心にくるように撮影します。水平器の位置がおへその位置にくるようにすると良いでしょう。

その次に、耳垂(耳たぶ)と足の外果(外くるぶし)を線で結びます。その直線の中に、①膝の中心、②大転子(股関節)、③肩峰(肩の中心)が通っていれば理想姿勢です。線をひきのが面倒であれば、定規などを耳たぶと外くるぶしの位置に合わせます。

①・②・③のいずれかが直線からズレている場合は、猫背か反り腰の状態で、首を前に出して立っている状態だと思います(反り腰の一部の方を除く)。どうでしたか?ほとんどの方が猫背や反り腰だったのではないでしょうか?
姿勢のセルフチェック②


次は鏡で真正面のカラダのチェックをしてみましょう。両足をそろえた状態で真っ直ぐに立ってみます。その時に、目(目尻)・耳(耳たぶ)・肩の高さが左右で同じかどうかを確認してみてください。


左右で高さが違えば、背骨・骨盤・脚の長さも違うことになります。どうでしたか?ほとんどの方が左右で高さが違ったのではないでしょうか?
足指の変形チェック
ほとんどの現代人は、間違った靴選び、すべりやすい素材の靴下などにより足指が変形し、土台が崩れています。詳細は以下のサイトに記載しているので参考にされてください。
簡易的に親指と小指の変形を確認できるチェックシートも用意しています。ダウンロードをして、自分の足を乗せて確認してみてください。


治療
筋筋膜性腰痛の治療法には、一般的には以下のような方法があります。下記の治療(保存療法)は一時的に症状が緩和することもありますが、筋筋膜性腰痛が治るということはありません。
1)休息:痛みや炎症を軽減するために、一時的に活動を制限することが必要です。
2)氷や温湿布:炎症を軽減するために氷や温湿布を患部に数日間継続的に当てます。
3)ストレッチ:筋筋膜性腰痛の原因となる筋肉の硬直や緊張を緩和するためのストレッチを行います。
4)鎮痛剤の使用:痛みや炎症を和らげるために医師の指示に従い適切な鎮痛剤を使用します。
5)マッサージやカイロプラクティック療法:筋筋膜性腰痛を一時的に緩和することができます。
6)行動療法:姿勢の悪化を防ぐために、生活習慣の見直しや運動指導を受けることが重要です。
体験談
Hさんは70歳を過ぎた頃から腰まわりの違和感が強くなり、整形外科では「加齢などに伴う筋筋膜性の痛み」と説明を受けていました。歩くとすぐ疲れてしまい、杖を手放せず、遠出が難しい日々が続いていたそうです。

ご家族が心配され、私のところへ相談に来られました。初めて足を拝見したとき、複数の足指が地面に触れにくい「浮き指」の傾向があり、履いておられた靴はスリッポン型で、足が前後に滑りやすい状態でした。
Hさんには、まず「立ち方」「足指の伸ばし方」「歩幅の整え方」など、生活の中でできる“姿勢づくりの基礎”をお伝えしました。また、ご自身で続けられるケアとして、足指をゆっくり動かすストレッチ(ひろのば体操)を案内しました。
Hさんは毎日、朝・昼・夜と丁寧に取り組まれたそうです。最初は足指が硬く、指の間に手を入れるだけで苦労されたと話していました。それでも習慣として続けるうちに、「足指が地面に触れやすい感覚が増えてきた」とご本人は感じられたといいます。
歩行練習も、ご自身のペースで続けられました。すると数週間が経つ頃には、家の周りを歩く時間が少しずつ伸びていき、ご本人もその変化に驚かれていました。
約2カ月半が過ぎた頃、ご家族の住む神奈川へ一人で出向かれたとご報告をいただきました。「また旅行に行けるかもしれない」と嬉しそうに話され、写真を見せてくださいました。景色を歩きながら楽しめることが、俳句づくりにも良い刺激になったと言います。
変化には個人差がありますが、自分の体と向き合ってコツコツ続けたHさんの姿勢は、本当に素晴らしいと感じています。
足指の研究から生まれた「環境づくり」という視点
足指研究所では、20年以上の臨床経験と、東京大学・石井直方名誉教授と実施した観察研究を通して、
「足指が使いやすい環境が整うと、姿勢・重心の安定性に関わる“変化傾向”が見られることがある」
という視点を大切にしています。
足指は本来、「広がる・伸びる・接地する」という生理的な動きを持ちますが、
靴・靴下・床の滑りやすさなどによって、その働きが阻害されることがあります。
私たちは、
「どうすれば日常で足指が動きやすい環境を作れるか」
という点を中心に開発と研究を続けています。
【研究データ|足指・姿勢・筋活動の観察記録】

2020〜2022年、東京大学・石井直方名誉教授の指導下で実施。
延べ96名を対象に、以下の構造的特徴の推移を多角的に観察しました。
- 足指の動き・配置
- アーチ構造
- 姿勢指標
- 体幹支持筋・口腔周囲筋・下肢筋の活動傾向
“足指が使いやすい環境づくり”を行った際、
足指・姿勢・呼吸に関連する筋活動などに構造的な変化傾向が見られました。
【足指が使いやすい体へ|4つのアプローチ】
日常で“足指が働きやすい環境”をつくるための基本ポイントです。
1. ひろのば体操(足指をゆるやかに伸ばす)
2. 靴の見直し(足指が押しつぶされない設計)
3. 小股歩き(足指が自然に使いやすい歩き方)
4. 室内環境の調整(滑りやすい床・スリッパを避ける)
【YOSHIRO SOCKS|構造とものづくり】

——足指が使いやすい“環境づくり”をめざした生活用品
足指の働きを妨げる「環境」そのものに着目し、
奈良の専門工場とともに、糸・密度・摩擦・張力などを精密に検証してきました。
● 構造のポイント

姿勢の安定性に配慮した
摩擦構造

自然な足指の開きを支える
立体フォルム

重心バランスを考慮した
密度・張力設計
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“広げる・伸ばす”動きを引き出す
テンション配置
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開帳・扁平傾向に配慮した
縦横方向テンション

母趾〜小趾が整列しやすい
張力バランス
※ いずれも医療的効果を示すものではなく、あくまで「足指が働きやすい状態をサポートする生活用品としての構造」の説明です。
● 製造のポイント

日本製
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高密度
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極薄
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高耐久

高グリップ
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吸湿・速乾
- 日本製:専門工場が ±1mm 単位でテンション管理
- 高密度:700nmクラスの極細繊維
- 極薄:約2mmの軽さと安定性
- 高耐久:生活用品としての強度
- 扇形フォルム:足指が自然に広がりやすい形状
