はじめに|首ではなく“足元”から始まっているかもしれません
スマートフォンやパソコンの長時間使用により姿勢が崩れ、「ストレートネック(スマホ首)」になる——
こうした情報を目にすることが増えてきました。確かに首まわりの負担と姿勢には密接な関係がありますが、それだけでは説明できないケースも少なくありません。
たとえば、デスク環境を整えたり、ストレッチや筋トレを継続しても、首の違和感や姿勢の崩れがなかなか改善されないと感じる方もいるのではないでしょうか。
私自身、理学療法士として10万人以上の足と姿勢を診てきた中で、ある“共通点”に気づきました。
それは、足指の使い方と足元の環境が、姿勢全体のバランスに深く影響しているということです。
身体を支える“土台”である足指が正しく機能していないと、重心がずれ、背骨のカーブが崩れ、結果として首まわりの筋緊張や構造的な変化(ストレートネック傾向)につながる可能性があるのです。
本記事では、
- ストレートネックと足指の構造的な関係
- 姿勢が崩れていくメカニズム
- 自宅でできる予防・セルフケアの方法
について、わかりやすく解説していきます。
デスクワークやスマホ操作が日常の方、
ストレートネックの再発や慢性化に悩んでいる方にとって、
足元から姿勢を見直すヒントになれば幸いです。
※首の痛み、しびれ、脱力、めまい、発熱、外傷歴がある場合、また症状が急に悪化した場合は、必ず医療機関へ相談してください。
概要

「スマホ首」と呼ばれることもあるストレートネックは、首の骨(頚椎)本来の前弯カーブが弱くなっている状態を指します。頚椎には通常、約30〜40度の前弯(ぜんわん)があり、このアーチ構造によって頭(約4〜6kg)の重さを分散し、衝撃や負荷を吸収しています。
ストレートネックでは、横から見た際にこの緩やかな曲線が少なくなり、首のラインがまっすぐに近づきます。一般的には、スマートフォンやパソコンを長時間使用することで頭が前に出たり、うつむき姿勢になることが背景として語られることが多いですが、それだけでは説明できないケースもあります。

私の臨床経験では、ストレートネックに悩む方の中には、足指の変形や足指機能の低下、靴の選び方・履き方、靴下の素材や形状など、足元環境が姿勢バランスに影響している可能性がみられることがあります。こうした要因が重なることで日常姿勢が崩れ、結果的に首まわりへ負荷がかかりやすくなると考えられます。
年齢や性別を問わず、現代では多くの世代でストレートネックがみられるようになった背景には、生活習慣や足元環境を含めた複数の要因が関わっている可能性があります。
症状
ストレートネックでは、首すじや首の付け根、肩〜背中にかけて張り感や違和感、重だるさを自覚することがあります。人によっては、頭痛、めまい、吐き気、集中力の低下、耳鳴り、目の疲れ、倦怠感、肩・腕・指先のしびれなどを伴う場合もあります。
肩こりや首こりが続くと、肩甲骨まわりから背中にかけて強いこわばりを感じ、「板のように硬い」と表現される方もいます。これは前回解説した肩こりの症状と共通しています。

さらにストレートネックが進行すると、頭部の重心が前方にズレ、喉や気道を圧迫しやすくなります。これにより呼吸が浅くなり、無意識のうちに口呼吸が習慣化する方も少なくありません。口呼吸が続くと、呼吸効率の低下や睡眠の質の悪化を招く可能性もあります。実際に、アメリカの歯科医 Yosh Jefferson 博士は、口呼吸によって酸素供給量が最大18%低下する可能性があると指摘しており、姿勢と呼吸が密接に関係していることが示唆されています。
原因
発生要因|なぜ背骨は“まっすぐ”になってしまうのか?


腰痛や首のこり、ストレートネックを引き起こす最大の要因は、日常生活の中で続いてしまう「不良姿勢」です。
実際、私が理学療法士として10万人以上の姿勢を見てきたなかでも、9割以上の方が、根本には姿勢の崩れが関与していました。
人間の背骨は、首・背中・腰・骨盤・脚・足まで、すべてが連動して構成されています。
この背骨はもともと緩やかなS字カーブを描いており、このカーブこそが、全身の衝撃を吸収し、頭の重さを無理なく支える“構造上の要”になっているのです。
特に成人の頭の重さは4〜6kgと言われており、その重さを直接支えるのではなく、背骨のS字の真上に“のせる”ことで、筋肉の負担を最小限に抑えるよう、人体は設計されています。
しかし、現代人の生活環境ではこのバランスが崩れやすくなっています。
足指を使わない生活が、背骨を“壊す”
足指を使わずに歩いたり立ったりする習慣が続くと、
足の変形や筋肉のアンバランスを引き起こし、それが骨盤の傾きや腰の丸まりを誘発します。
すると重心が前にズレていき、結果的に首が前方へ押し出され、頭が突き出たような姿勢が固定化されてしまいます。
この状態では、背骨の本来のカーブが失われ、
首から背中にかけて“まっすぐ”に近づいていく――いわゆる「ストレートネック」状態となっていきます。
一時的な猫背と“構造化された姿勢崩れ”の違い
「スマホやパソコンで姿勢が悪くなった」と言われることも多いですが、
それらはあくまで一時的な猫背であって、正しい環境に戻せば姿勢も回復する可能性があります。
問題なのは、「足元」からの崩れが日常的に固定化されているケースです。
たとえば──
・摩擦の少ない靴下を履いている
・クッション性の高すぎる靴で、足の中で前後に滑っている
・足に合っていない靴で踵側に体重がかかりすぎている
このような“滑る足環境”が続くと、本来働くべき筋肉が使われず、代わりに代償的な筋肉ばかりが発達していきます。
その結果、筋肉や関節の使い方が“間違った姿勢”のまま固定されてしまい、背骨のS字は戻らなくなるのです。
これが、ストレートネックが「クセ」ではなく「構造」として定着するメカニズムです。
メカニズム|足指から始まる姿勢崩れの連鎖
ストレートネックや猫背、反り腰といった姿勢の問題には、「足指の使い方」や「靴環境」が密接に関わっているという事実をご存知でしょうか?
構造としてシンプルに説明するなら、次の5段階で姿勢は崩れていきます。
① 靴の種類・履き方 → ② 足指の変形(かがみ指・浮き指) → ③ 踵重心 → ④ 猫背や反り腰 → ⑤ ストレートネック(頭部前方化)

足が滑ると、姿勢が崩れる
クッション性が強すぎる靴や摩擦の少ない靴下を履いていると、靴の中で足が前後に滑りやすくなります。このとき、足が滑らないように指が反射的に“ブレーキ”をかけようとして足指が曲がった状態=かがみ指になります。
このブレーキ状態で歩くと、無意識のうちに膝が曲がり、つねに関節にストレスがかかるような歩き方になります。
また、スリッパや長靴など「かかとが固定されていない履物」の場合、足が滑るのを防ごうとして足指を上に反らせる=浮き指になりやすくなります。
このような足指変形が起こると、重心は自然とかかと側(後方)に偏ります。
その結果、身体は後ろに倒れそうになり、無意識に膝を曲げたり、体を前に倒したりしてバランスを取ろうとします。これが「姿勢反射」や「姿勢制御」と呼ばれる生体反応です。

後ろへのバランスは、足指では止められない
人の足指は、前方や横方向へのグラつきに対してはストッパーとして機能します。
しかし、後方への重心移動に対しては、足指には止める機能が備わっていません。そのため、バランスを取るためには、上体の姿勢を変化させて対応せざるを得なくなります。
このときに起きる典型的な反応が「頭部の前方突出」です。
頭を前に突き出すことで重心を取ろうとするこの姿勢こそが、「頚椎前弯消失」や「ストレートネック」と呼ばれる状態なのです。

足指がしっかり伸びて開いていると、体重は前方50%・後方50%の理想的な重心バランスになります。重心が安定すれば、首や背中を無理に緊張させずとも自然にまっすぐ立てる構造になります。
しかし実際には、多くの方が
- 足に合わない靴を履いている
- 摩擦力の低い靴下で足が滑っている
- 指が曲がった状態(かがみ指・浮き指)で固まっている
といった状態にあり、重心は後方へズレ、上体は前に倒れるという悪循環に入っています。
その結果として「首が前に出た姿勢」が定着し、ストレートネックの構造的背景となっていくのです。
首に症状が出ているからといって、首そのものを治そうとするのではなく、その“原因構造”となっている土台——つまり「足指の使い方と重心」——を見直すことが、根本的なアプローチにつながると私は考えています。
足指が変形する原因は?
靴・靴下・歩き方がストレートネックの“根源”になることも
「ストレートネックは首の問題」と思われがちですが、実は足指の変形や機能不全が引き金となっているケースは少なくありません。
その背景には、靴の履き方や靴下の素材・設計が、足指に与える“見落とされがちな影響”が存在しています。
ストレートネックにつながる靴・靴下の特徴
以下のような靴や履き方の習慣がある方は要注意です。
・室内でスリッパ・サンダル・草履などかかとが固定されない履物を履いている
・靴紐をゆるく結び、足が前後に滑る状態で歩いている
・靴底やヒールカウンター(かかとの支え)が柔らかすぎる靴
・クッション性が強すぎて足指が使われにくい靴
・足幅に対して幅が広すぎる靴
・凹凸のあるインソールで足裏の接地感が不安定な靴
・綿やシルクなどの滑りやすい素材の靴下を使用している
これらの環境では、靴の中で足が滑らないように足指が無意識に力を入れ続けてしまい、
やがて「かがみ指(ハンマートゥ)」や「浮き指」といった変形が生じやすくなります。
そのままの状態が長時間・長期間にわたって繰り返されることで、足指の構造そのものが変わってしまうのです。


足指を使わない歩行が“姿勢”まで崩す
足には26個の骨と100本以上の靭帯・腱・筋肉があり、特に足指には多くの筋肉が付着しています。
足指が正しく使われることで、足裏のアーチ構造が保たれ、地面への力の伝達や衝撃吸収が行われます。
しかし、足指の変形や機能不全が進行すると、
- 足底筋群が萎縮し
- 足のアーチ構造が崩れ
- 重心が踵側に偏る
といった連鎖が起こり、骨盤が後傾して猫背化し、頭が前に出るような姿勢(ストレートネック)が定着していくのです。
このような構造的変化は、多くの医学書でも軽視されていますが、私が10万人以上の姿勢と歩行を見てきた中では、「足指→アーチ→重心→姿勢→首」という因果関係は極めて明確です。
靴下の“盲点”——見えない圧力と滑りが足指を壊す

世界中で一般的に履かれている筒状の靴下(チューブソックス)には、意外なリスクがあります。
- 素材や構造によって足指に4〜9gf/cm²の持続的な圧力がかかり、指の自由な伸展を妨げる
- 綿やシルクなどには「シルケット加工」が施されていることが多く、靴中での滑りやすさが増す
- サイズが合っていないブカブカの靴下は、足が靴下内でズレ続けて、無意識に指を曲げて固定しようとする
このように、見えない“圧”と“滑り”の環境が長く続くことで、
足指が正常な可動性を失い、浮き指・かがみ指・外反母趾・内反小趾などの構造変化が進行するリスクがあるのです。
ストレートネックに対するアプローチの“落とし穴”
近年、ストレートネックに対しては、ストレッチ・矯正グッズ・整体・リハビリなど多様な対処法が紹介されています。これらの方法によって、一時的な緩和や可動域の向上を感じる方もいらっしゃいます。
ただし、私の臨床現場では、足元の機能に対するアプローチが不足しているケースでは、同じような不調を繰り返してしまう傾向があると感じることがあります。
姿勢は、骨格・筋肉・重心・習慣といった複数の要素が複雑に絡み合って形成されるものであり、「首が前に出ている」という結果だけを見るのではなく、そこに至る構造的な背景——とくに足指機能や靴環境などの“土台”から見直すことが、再発予防や生活の質向上にもつながる可能性があるのではないかと考えています。
検査・診断・セルフチェック
医療機関での評価と、自宅でできる姿勢チェック
ストレートネックの状態を把握するには、医療機関での画像診断や姿勢評価が有効です。
特に以下のような検査が行われることがあります。
🔍 医療機関での主な検査
採血検査、心電図など(他疾患の影響評価)
問診と神経学的診察(感覚・反射・筋力など)
頚椎疾患の除外チェック(神経根症・脊髄症 など)
レントゲン(X線)検査
MRI検査(必要に応じて)
筋電図(筋の活動状態)
頚椎の理想的な角度(レントゲンによる診断)
頚椎のカーブ(前弯)は、第1頚椎(環椎)前後結節の中点から、第7頚椎(C7)の下縁を結んだ線をもとに評価されます。
- 正常:頚椎角が30〜40度の範囲
- ストレートネック傾向:頚椎角が30度以下


この測定にはレントゲン撮影が必要となりますが、日常では難しい場合も多いため、セルフチェックによる簡易評価も一つの目安として活用できます。
自分でできるストレートネック・姿勢チェック方法
医療機関に行かずとも、スマホ撮影と簡単な線引きで、おおまかな姿勢バランスを確認することが可能です。
以下にチェック手順をご紹介します。
1|姿勢ラインのセルフチェック
【準備】
・スマホで、自分の真横から立ち姿を撮影します(他者の協力が理想)
・カメラの中心が体の中心に来るように調整し、水平が“へそ”の位置になるようにします
【チェック手順】
① 耳たぶ(耳垂)と外くるぶし(外果)を結ぶ線を引きます
② この直線上に以下の3点が並んでいるかを確認
- 膝の中心
- 大転子(股関節の出っ張り)
- 肩峰(肩の最も外側)



【判定】
→ 3点すべてが線上にあれば、理想的な骨格バランスです。
→ いずれかがズレている場合は、猫背・反り腰・前傾姿勢などの崩れがある可能性があり、ストレートネック傾向も疑われます。
2|頚椎角度の簡易チェック(進行度判定)
次に、顔と肩のラインが見えるように横顔の写真を撮影してください。
自然な立ち姿で正面を向き、首や肩に力が入らない状態が理想です。
【チェック手順】
① 耳たぶと肩の中心を結ぶ直線を描く
② 垂直線(地面に対して垂直)とその直線のなす角度を目視で確認

【目安】
- 頚椎角が0°前後 → 正常範囲
- 15°以上前方に傾いている → ストレートネックの可能性が高くなります


※目測では正確性に限界があるため、あくまで参考指標としてお使いください。
POINT|正確な姿勢分析には専門評価を
上記はあくまでもセルフチェックの目安にすぎません。
より正確な評価を希望する場合は、専門家による全身姿勢分析・X線計測・AI解析ツールなどを活用することをおすすめします。
また、姿勢崩れには個人差があり、体型・生活習慣・筋力バランス・既往歴なども関係します。
気になる場合は、整形外科や理学療法士など身体構造に精通した専門家に相談してください。
体験談|「猫背が性格のせい」だと思っていた娘の背すじが変わった日
実は私の娘は、小学生の頃からずっと猫背に悩んでいました。
人前で緊張しやすく、無意識に肩をすぼめる癖があり、それが原因で先生から注意されることもありました。見た目の印象が悪くなってしまうことを、本人も気にしていたようです。
私たちは、姿勢を改善したくて整体にも1年半以上通いましたが、目に見える変化は得られませんでした。
そんなとき、新聞の連載記事で湯浅慶朗先生の存在を知り、思い切って娘を連れて相談に行ったのです。
足指から始める姿勢づくり「ひろのば体操」
湯浅先生から最初に指導されたのが「ひろのば体操」という、足指を広げて伸ばすためのシンプルな体操でした。
方法はとても簡単で、入浴中や就寝前に、足指の間に自分の指を浅く差し込んで、左右の足それぞれ20回ずつゆっくり動かすだけ。
娘は「姿勢を変えたい」という思いから、この体操を毎日続け、東京での研修期間中も欠かさず実践していました。
湯浅先生によると、足指が地面につかない状態では重心が不安定になり、自然と猫背になってしまう傾向があるとのこと。
姿勢を整えるには、まず足指をしっかりと開いて伸ばすことが基本であり、かかとが固定されない履き物は避けるべきと教えていただきました。
浮き指が変わると、姿勢も表情も変わった

指導の中で、娘の「浮き指(特に小指)」が原因のひとつであることがわかりました。
ひろのば体操を継続するうちに、小指がしっかりと床につくようになり、歩き姿も安定してきたのです。
さらに、足指の接地が安定すると、湯浅先生の言葉通り、身体全体の使い方にも変化が見られるようになりました。
本人の姿勢に対する意識が高まり、なんと研修旅行の後にはダンスを習い始めるまでに。
以前は運動が苦手だった娘が、背中で片足を持ち上げてバランスを取るようなポーズも自然にこなせるようになったのです。
姿勢の変化は、印象まで変える

日常生活の中でも、姿勢の変化は明らかでした。
たとえば、食事中の背すじはスッと伸び、自然な所作が“品のある印象”に変わったと感じます。
また、口元の左右バランスが整い、笑顔の印象も以前よりやわらかくなったように思います。
「姿勢を整えたい」と思っても、首や肩を意識するだけでは変わりません。
足指から変えることが、娘にとっての“根本的な見直し”だったと、今ならはっきり言えます。
※本体験談は個人の感想であり、すべての方に同様の変化が現れることを保証するものではありません。
予防
同じ姿勢を長く続けない

デスクワークなどで作業に集中していると、頭を前に出して肩周囲の筋肉に負担をかけた姿勢のまま長時間過ごしてしまいがちに。長時間同じ姿勢でいると、血行が悪くなることで疲労物質が蓄積されて肩こりや首こりを招いてしまいます。30分に1回程度は、体を動かすように意識してみましょう。人間工学に基づいた椅子に変えたり、モニターの位置を気をつけることでも、肩こりや首こりは随分と軽減されていきます。
目を休ませる

長時間の読書・パソコン・スマホの使用などは、肩こりや首こりだけでなく頭痛や倦怠感など、さまざまな不調を招く要因になります。目の負担がかかる作業をするときには、適度に目を休ませるようにしましょう。目の疲れを感じたら、遠くを見たり、目のストレッチを取り入れると良いです。また部屋の明るさや、読書・パソコン・スマホの姿勢にも気をつけてみてください。
適度な運動や体操をする

正しい姿勢は、正しい筋肉によって作られていきます。正しい筋肉は「足指を広げて伸ばした状態」で歩くことでしか作ることができません。そして1日6,000歩以上が望ましく、それ以下であると思うように筋肉がつきません。1日10,000歩を目指してウォーキングを頑張ってみましょう。
足指の動き・配置を観察するための研究記録

東京大学・石井直方名誉教授の監修のもと、足指の可動性、足幅、足の配置などの“構造的な変化”を記録しました。
この記録は、東京大学・石井直方名誉教授の監修のもと、日常生活の中で“足指を広げる・接地させることを意識した生活習慣づくり”を行った参加者を対象に、足指の可動性・足幅・足の配置など、構造的な推移を観察したものです。
計測は 8週間〜24ヶ月にわたり、
・足指がどの方向へ動きやすいか
・指の並びがどの程度そろいやすいか
・アーチの状態に関係する足部構造がどう推移するか
といった “動きやすさの傾向” を平均値としてまとめた記録です。
以下は、足部と姿勢のバイオメカニクスに関する観察記録であり、治療効果を示すものではありません。足指が動きやすい環境づくりに関連する“構造的特徴の推移”を記録したものです。
外反母趾角
開始時の外反母趾角は19.1°
8週間後の外反母趾角は12.3°
8週間目の平均値は、開始時と比べて、外反母趾角が平均6.8°変動する傾向が平均値として確認されました。
※開始前と24ヶ月目の平均値の差
※グラフは観察記録における平均値の推移です。

姿勢
開始時の理想姿勢の割合は28.3%
8週間後の理想姿勢の割合は69.6%
8週間後の平均値は、開始時と比べて、理想姿勢の割合が約60%となり、数値上の変化が示されました。
※理想姿勢は耳孔から肩峰、大転子、足踝までの配列がほぼ垂直線上に並ぶ状態
※開始前と8週間目の平均値の差
※グラフは臨床試験における平均値の推移
※結果には個人差があり、100%の結果を保証するものではありません。

足指が動きやすい体をつくる日常ケアと環境の整え方
足指が使いやすい環境を整えるためには、次のようなケアが役立つことがあります。
- 足指をゆるやかに反らすストレッチ
- 靴の見直し
- 足元の圧迫を避け、動きやすさを保つ工夫
1|足指をゆるやかに反らすストレッチ
ひろのば体操は、足指の屈筋・伸筋、足底の筋・腱の滑走(すべり)を促し、
“動かしやすい状態を目指すためのストレッチ”として取り入れられる方法です。
2|靴の見直し
(足指の動きを妨げない設計を選ぶ)

靴の構造が足に合っていない場合、靴下やセルフケアの効果を実感しにくいことがあります。特に、足指の動きを妨げるデザインは避けたいところです。
推奨される靴の特徴としては、
- トゥスプリングが小さい
- つま先が圧迫されにくい構造
- 屈曲点がMP関節と一致
- 靴底にねじれを防ぐシャンク入り
- ヒール差は2cm以下
などが挙げられます。

3|“小股歩き”で自然な足指運動を引き出す
大股で歩こうとすると、接地の瞬間に足指が十分に働く前に体重が移動し、屈筋に頼った“つかむ・曲げる”動作が増えやすくなります。
これに対して、小股歩きは、
- 足を骨盤の真下に落としやすい
- 足裏全体でフラットに着地しやすい
- 足指がまっすぐ伸びたまま接地しやすい
という特徴があり、自然な足指の使い方を引き出しやすくなります。
アムステルダム自由大学・Hak ら(2013)は、健常成人の歩行を解析し、ストライド長を短くすることは後方の安定性を高め、ストライド頻度を増やすことは左右方向の安定性を高める傾向があると報告しています。(参考:Hak et al., 2013, PLoS ONE)
4|室内履きと滑り対策:足指変形の環境要因を断つ
スリッパや草履など「滑りやすい履き物」は、歩行中に足がズレないよう無意識に指を屈ませてしまい、外反母趾・内反小趾・屈み指・浮き指・寝指の一因になることも。






- 室内では極力スリッパをやめ、滑らない床マットや5本指ソックスを活用
- 足元の冷え対策にはレッグウォーマーを併用
- スリッパ代わりの“滑らない室内用シューズ”も有効

足元環境を整えるための生活用品という考え方
日常生活で足指を使いやすい状態をつくるためには、足が滑りにくく、過度に締め付けない素材を選ぶことが重要です。
とくに次のポイントは、足元環境づくりで注目されます。
- 摩擦による“滑走の抑制”
- 足指の間隔を確保しやすい設計
- 過度な圧迫を避けるバランス
- 足指の動きを妨げにくいテンション
ここからは、私が研究の中で感じてきた「足指が使いやすい環境づくり」に関する具体例として、生活用品の設計思想についてご紹介します。(特定の商品による効果を示すものではありません)
YOSHIRO SOCKS|構造のこだわり

YOSHIRO SOCKS は「足指が使いやすい環境を整える」ために設計された生活用品です。
開発の原点にあったのは、妻から『小指が地面に触れた日は、膝まわりの“力の入り方の感覚が違う”と感じた』と話してくれたことが、私が足指の使い方と姿勢バランスの関係を深く考える大きなきっかけになりました。
私はそこで、「足指が少し使いやすくなるだけで、日常の負担は変わるのではないか」と確信しました。
20年以上、理学療法士として多くの足を診てきた中で、足指が使いにくい“環境”そのものが、立ち方・歩き方・姿勢に大きく影響することを繰り返し実感してきました。
そこで私は奈良の専門工場の職人とともに、糸の太さ・密度・張力・摩擦・圧力・縫製角度まで細かく検証し、足指を動かしやすい“環境づくり”を目指した構造を追求しました。
YOSHIRO SOCKS の主な構造
(5つのこだわり)
1|日本製(専門工場による精密なものづくり)

立体縫製・編み立て・染色・検品のすべてを国内で一貫管理し、±1mmのズレも許さない職人技で仕上げています。
細かいテンション差が履き心地に影響するため、国内生産にこだわっています。
2|高密度(髪の毛の約20分の1の繊維)

700nm(ナノレベル)の極細繊維を高密度で編成。足裏に吸い付くようなフィット感を生み、靴の中で足が滑りにくい環境をつくります。
“滑らない構造”は、足指が動きやすい下地になります。
3|極薄(約2mmでも安定する薄さ)

靴内のかさばりを抑え、素足に近い感覚で足と靴が一体になりやすい設計です。
薄くてもヘタれにくいのは、繊維と密度のバランスによるものです。
4|高耐久(長期間使える繊維強度)
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特殊繊維と高密度の編み構造により、日常使用でも伸び・ヨレが起こりにくい強度を確保。
毎日履く生活用品としての耐久性を重視しています。
5|足指が広がりやすいフォルム(扇形の足に基づく設計)
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YOSHIRO SOCKSは、靴を履かずに生活する人々の足を分析した研究で示される、“まっすぐ伸び、前方へ扇状に広がる”本来の足の形を参考に設計されています。
一般的な五本指ソックスとは異なり、母趾から小趾へ向かう “本来の扇形ライン” を意識した立体的な形状に仕上げています。
一部の研究では、摩擦係数が低い靴下ほど靴内での滑り(relative sliding)が増える傾向が指摘されています(2006, 2021, 2023 など複数研究)。
参考文献
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2.『足指をそらすと健康になる』湯浅慶朗/著 PHP研究所 2014.6
3.『たった5分の「足指つかみ」で腰も背中も一生まがらない!』湯浅慶朗/著 PHP研究所 2021.6
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