保育園調査
2012年に筑後地区保育士会の依頼により、なぜ現在の子供達は運動能力が低下していっているのかを調べるために調査がスタート。靴の履き方や選び方による足指の変形が原因の一つであることが判明しました。そこで「ひろのば体操」でどれくらい運動能力が変化するのかを1年間かけて調べていきました。すると全ての保育園で運動能力が向上し、転倒予防にも効果があることが実証され、NHKでも特集が組まれました。
2017年に新たに寝たきりゼロの国づくりの第一歩として、理学療法士と歯科医師がタッグを組んで久留米市の保育園で研究をスタートさせました。園児たちの姿勢を改善させることが目的で、医療関係者と連携して今後1年かけて調査を実施。姿勢の悪い園児に歯並びが悪い子が多いことが調査のきっかけ。足指を広げ安定して立てるようになることで姿勢が良くなり、歯並びが変わった症例を持つ理学療法士である私と、姿勢を正して噛み合わせや歯列矯正を行う歯科医師と一緒に実態を調べ、改善策を探ることにしました。きちんとしたデータを取り、子供達の健康づくりに役立てたいと考えています。
・再調査は3ヶ月おきに実施(11月・2月・5月…)1年間の追跡調査
・ひろのば体操5分間、口腔筋機能訓練5 分間を保育園にて毎日行う
・足と姿勢の評価は理学療法士が点数化
・歯並びの評価は歯科医師が点数化
足指変形の割合
外反母趾
外反母趾の割合
A保育園:20%
S保育園:18%
5歳児ですでに外反母趾の割合が20%近くに達していました。子供の外反母趾が増えているというのもうなづけます。はだし保育を実践している保育園でさえもこの数であれば、室内外ともに靴を履く保育園では、その数はもっと多いと推測されます。将来的に運動能力の低下や脚の痛み、腰痛を引き起こす確率が高くなると予測されます。
内反小趾
内反小趾の割合
A保育園:16%
S保育園:31%
どちらもはだし保育を実践している保育園ですが、数値に開きがありました。原因は不明ですが、平均すると外反母趾の割合よりも多く、将来的に捻挫や膝の痛み(成長痛など)を引き起こす確率が高くなると推測されます。
かがみ指
かがみ指の割合
A保育園:86%
S保育園:100%
かがみ指は足の裏面だけでペタペタ歩いてしまい、このような歩き方を続けていると、足の筋肉の機能が低下してしまうため、将来的に外反母趾になります。また姿勢にも大きな影響を与えるため、5歳児でほぼ100%であれば、小学校に上がるときには猫背や反り腰になって腰痛を引き起こしてしまう確率が高くなると予測されます。
寝指
寝指の割合
A保育園:84%
S保育園:100%
足指の中でも小指の寝指の割合が一番高かったです。主に筋力の低下が原因であるため、かがみ指と連動していることは確かです。小指の寝指は内反小趾と同様、将来的に捻挫や膝の痛み(成長痛など)を引き起こす確率が高くなると推測されます。
足底圧測定器での計測
足指の接地本数
足指が実際に地面についている割合
A保育園:0.9本
S保育園:0.7本
見た目では地面についているように見える足指でも、足底圧測定器で計測すると、足の圧が足りず、地面についていない場合があります。どちらの園も10本中1本も地面にはついていませんでした。浮き指といいますが、かがみ指と同様で、将来的には猫背や反り腰になって腰痛を引き起こしてしまう確率が高くなると予測されます。高齢者の場合には転倒につながる恐れがあります。
重心の位置
重心の位置
A保育園:前方24%
S保育園:前方23%
基本的に重心は前方50%、後方50%が理想です。浮き指やかがみ指などの足指の変形があるとかかと重心になりやすくなります。後方重心になると、運動能力の低下、猫背や反り腰になりやすい、転倒しやすいなどの原因になります。
不良姿勢(猫背・反り腰)の割合
A保育園
不良姿勢の割合(A保育園)
猫背:82%
反り腰:13%
理想姿勢な子供の割合が5%のかなり低くなっていました。足指の変形により、かかと重心になると、バランスを取るための代償動作として猫背や反り腰になることが示唆された数値です。
S保育園
不良姿勢の割合(S保育園)
猫背:87%
反り腰:7%
理想姿勢な子供の割合がA保育園同様、6%のかなり低くなっていました。足指の変形により、かかと重心になると、バランスを取るための代償動作として猫背や反り腰になることが示唆された数値です。
脚の変形の割合
A保育園
脚の変形の割合(A保育園)
X脚:60%
O脚:4%
XO脚:36%
理想的なまっすぐな脚の子供はいませんでした。親指が使えないとX脚になりやすく、小指が使えないとO脚やXO脚になりやすくなります。
S保育園
脚の変形の割合(S保育園)
X脚:68%
O脚:14%
XO脚:18%
S保育園にも、理想的なまっすぐな脚の子供はいませんでした。意外にもO脚よりもX脚の子供が多かったです。
ストレートネックの割合
A保育園
ストレートネックの割合
A保育園:91%
猫背や反り腰になるとストレートネックになりやすくなります。不良姿勢の子供が90%を超えていることを考えれば、頚椎にも異常を起こしていると予測できる数値でした。将来的には肩こり、首こり、頭痛などを引き起こしやすくなります。足指変形→かかと重心→不良姿勢→ストレートネックになるということが示唆される数値です。
S保育園
ストレートネックの割合
S保育園:82%
猫背や反り腰になるとストレートネックになりやすくなります。不良姿勢の子供が90%を超えていることを考えれば、頚椎にも異常を起こしていると予測できる数値でしたが、A保育園よりは9%ほど低い数値です。将来的には肩こり、首こり、頭痛などを引き起こしやすくなります。
狭窄歯列と理想空隙
A保育園
狭窄歯列の割合
A保育園:82%
顎の骨の成長が悪く、歯が生えるための隙間がないため、将来的に歯並びが悪くなる原因になります。理想的には乳歯の場合には、歯と歯の間に隙間があることが理想です。足指変形→かかと重心→不良姿勢→ストレートネック→狭窄歯列になるということが示唆される数値です。
S保育園
狭窄歯列の割合
S保育園:82%
A保育園同様に、狭窄歯列の割合は82%でした。歯科検診では歯周病と虫歯の検査だけなので、保育園で狭窄歯列があっても指摘されることがほとんどありません。そのため、中学校で永久歯が生えそろう時期になる頃に、歯並びが悪いということに気が付くことがほとんどです。保育園の頃より、狭窄歯列のことが分かれば、顎の成長を促すための対策を取りやすくなります。
過蓋咬合と反対咬合
A保育園
過蓋咬合:14%
反対咬合:16%
猫背や反り腰になると顎の位置が前後に動くため、過蓋咬合や反対咬合になりやすくなります。
S保育園
過蓋咬合:23%
反対咬合:14%
足指変形→かかと重心→不良姿勢→ストレートネック→過蓋咬合・反対咬合になるということが示唆される数値です。アゴは体の一番上の関節になるため、この数値が妥当だと考えています。将来的には顎関節症になりやすくなります。