【医療監修】踵骨外反とは何か― 変形性膝関節症で見落とされやすい「かかとの傾き」と下腿骨の連鎖 ―

はじめに
こんにちは。足指研究家の湯浅慶朗です。
変形性膝関節症について調べていくと、多くの場合、
- 軟骨がすり減っている
- 年齢のせい
- 体重の問題
- 筋力不足
といった説明が中心になります。
しかし、臨床で多くの膝OA(変形性膝関節症)の方を見ていると、
膝そのものよりも、もっと手前に共通する構造的特徴があることに気づきます。
それが、
踵(かかと)の傾き=踵骨外反です。
膝は、単独で壊れていく関節ではありません。
常に「下からの力」を受け取り続ける関節です。
この記事では、
- 踵骨外反とは何か
- なぜ踵の傾きが下腿骨を動かすのか
- それがどう変形性膝関節症につながるのか
を、構造の流れとして整理していきます。
踵骨外反とは何か
踵骨外反とは、
かかとの骨(踵骨)が、内側に倒れ込んだ状態
を指します。
正面や真後ろから足を見たとき、
- 踵がまっすぐ立っている → 正常に近い
- 踵が内側に傾いている → 踵骨外反
という関係になります。
重要なのは、
踵骨外反は「見た目の問題」ではないという点です。
踵は、
- 足部の土台
- 体重が最初に乗る場所
- 地面反力を受け取る起点
という役割を担っています。
この土台が傾けば、その上に乗る構造は必ず影響を受けます。
なぜ踵の傾きが下腿骨を動かすのか
歩行時、地面からの力は次の順番で伝わります。
足 → 踵 → 距骨 → 下腿骨 → 膝関節
このとき、踵骨が内側に倒れると、
- 距骨が内側へ誘導される
- 下腿骨が内旋方向へ引き込まれる
という動きが連鎖的に起こります。
下腿骨は「立て直す力」を自分では持っていません。
足部の角度に、ほぼそのまま従う構造です。
つまり、
踵骨外反 = 下腿骨の傾きを決めるスイッチ
という位置づけになります。
下腿骨が傾くと、膝で何が起きるのか
下腿骨が内旋・内傾すると、膝関節では次の変化が起こります。
- 荷重が膝の内側に集中しやすくなる
- 内側関節裂隙に圧縮ストレスがかかる
- 歩くたびに同じ部位が擦られる
これが長期間続くことで、
- 内側型変形性膝関節症
- O脚傾向の進行
- 膝内側痛
といった状態が形成されていきます。
ここで重要なのは、
膝が悪いから踵が倒れたのではない
という点です。
多くの場合、
踵骨外反 → 下腿骨の傾き → 膝へのストレス集中
という順番で起きています。
変形性膝関節症で踵骨外反が見落とされやすい理由
膝OAの診察では、
- レントゲン
- MRI
- 膝の可動域
- 大腿四頭筋の筋力
が中心になります。
一方で、
- 立位で踵がどう傾いているか
- 歩行中に踵がどう潰れているか
まで評価されることは、ほとんどありません。
しかし実際には、
- リハビリを頑張っても戻る
- 注射が一時的にしか効かない
- 歩き始めで必ず内側が痛む
こうしたケースの背景に、
踵骨外反が残ったまま
という共通点があることが多いのです。
踵骨外反は「足部アライメントの問題」
踵骨外反は、単独で起こる現象ではありません。
多くの場合、
- 足指が接地できていない
- アーチが支えられていない
- 足部全体が内側へ潰れている
という足部アライメントの崩れの一部として現れます。
この全体像については、
次の記事で総論として整理しています。
▶︎ 【医療監修】足部アライメントが膝を壊す本当の理由
― 踵骨・扁平足・回外足から読み解く変形性膝関節症の構造 ―

膝だけを見ても、踵骨外反は変わらない
膝周囲の筋トレやストレッチは、
- 膝の動きを楽にする
- 一時的な痛みを和らげる
ことはあります。
しかし、
踵骨の角度そのものを修正することはできません。
なぜなら、踵骨の傾きは、
- 足指
- 足部の支え
- 接地の仕方
によって決まっているからです。
膝だけを見ている限り、
踵骨外反は残り続け、
下腿骨の傾きも変わりません。
次に理解すべき視点
踵骨外反は
「足部アライメントの崩れが、踵に現れたサイン」
です。
そのさらに手前には、
- 足裏アーチの崩れ
- 荷重の逃げ場の消失
があります。
次の記事では、
扁平足がなぜ膝を壊していくのか
という視点から、
踵骨外反を含む足部全体の崩れを整理していきます。
▶︎【医療監修】扁平足はなぜ膝を壊すのか― 変形性膝関節症を進行させる「アーチ低下」と下腿骨の力学 ―

まとめ
- 踵骨外反とは、かかとの骨が内側に倒れた状態
- 踵の傾きは、下腿骨の角度を直接決める
- 下腿骨の傾きが、膝内側へのストレス集中を生む
- 多くの変形性膝関節症で、この構造が見落とされている
- 膝だけを見ても、踵骨外反は変わらない
変形性膝関節症を理解するためには、
膝 → 下腿 → 足部(踵・アーチ)→ 足指
という順番で、
見る階層を下げていく必要があります。


