【医療監修】薬に頼らない！最新研究で判明！姿勢と足指ケアで血圧を正常に保つ方法

首の自然なカーブ（頸椎前弯）が失われると、脳への血流が減少する可能性があることが、アメリカの研究により示されています（Katz et al., 2019）。この研究では、頸椎のカーブが崩れていた7人の成人に対して姿勢矯正を行い、その前後で脳の血流をMRIで測定。その結果、血流が平均23.0％〜最大225.9％まで増加したことが確認されました。

通常、首の自然なカーブ（頸椎前弯）はC2〜C7間で-16.5°〜-66.0°の範囲が正常とされ、理想的な角度は-34°といわれています。ところが、矯正前の被験者の平均角度は-1.8°と、首のカーブがほとんど失われた状態にありました。矯正後には平均-37.3°まで回復し、それに伴って脳血流も顕著に増加したという結果です。

興味深いのは、こうした首のアライメントの乱れが、実は足指や足元のバランスの崩れから連鎖的に生じている可能性があるという点です。私たちの体は、足元から頭部にかけて一つの「運動連鎖（キネティックチェーン）」でつながっており、足指の変形（浮き指・外反母趾など）や足部の支持性の低下は、骨盤の傾斜や背骨の配列、そして頸椎のカーブにまで影響を及ぼします。

足指がうまく使えず足裏の感覚入力が低下すると、姿勢制御の中心が骨盤や肩に移行し、結果として頭部の前方移動（前傾姿勢）が起こりやすくなります。このような姿勢変化は、頸椎前弯の減少、さらには脳血流や血圧、自律神経機能にまで悪影響を及ぼす可能性があります。

出典：Katz EA, et al. (2019). Brain Circulation, 5(1), 19–26. PMCID: PMC6458772

高血圧の人は、そうでない人に比べて、年齢とともに前かがみ姿勢（いわゆる“前傾姿勢”）が強くなりやすいことが、浜松医科大学の研究で明らかになりました（Arima et al., 2019）。

この研究は、愛知県東栄町に住む50〜92歳の男女655名を対象に行われ、全身の背骨と骨盤のX線画像をもとに姿勢のバランスを分析したものです。とくに注目されたのは「矢状面垂直軸（SVA）」という指標で、これは頭の位置がどれくらい前にズレているかを表す数値です。

結果として、50〜64歳の高血圧の人ではSVAが平均32.4mm、非高血圧の人では16.0mmと、前方へのズレが大きくなっていました。65〜74歳でも同様に、高血圧の人の方が前傾が強い傾向がありました。一方、75歳以上では有意差は見られなかったものの、同様の傾向がみられました。

研究者たちは、高血圧によって筋肉への血流が低下し、その結果として背筋が弱くなり、頭が前に倒れやすくなる可能性を指摘しています。つまり、血圧の高さが姿勢の悪化と関係している可能性があるということです。

この研究は、血圧と姿勢という一見関係のなさそうな2つの要素が、実は密接に関わっていることを示す興味深い知見といえます。高血圧の管理だけでなく、日常的な姿勢ケアも中高年以降の健康を守るうえで重要であることが示唆されます。

姿勢の崩れは背筋や骨盤の問題だけでなく、足元のバランスや感覚の乱れから始まるケースも少なくありません。たとえば足指の機能低下や浮き指などがあると、立位での安定性が失われ、知らず知らずのうちに前傾姿勢が強まり、それが筋緊張や血流、ひいては血圧にまで影響を及ぼす可能性があります。

出典：Arima H, et al. (2019). Hypertension Is Related to Positive Global Sagittal Alignment: A Cross-Sectional Cohort Study. Asian Spine Journal, 13(6), 895–903. doi: 10.31616/asj.2018.0308

猫背のような姿勢が、ストレスや気分にどのような影響を与えるかについて、ニュージーランド・オークランド大学の研究チームが興味深い実験を行いました（Nair et al., 2015）。

研究では、74人の健康な成人を対象に、あえて「猫背姿勢」と「直立姿勢」に分けて、どちらがストレスにどう反応するかを比較しました。参加者は背中にテープを貼り、決められた姿勢を保ったまま、人前でのスピーチや計算問題などのストレス課題に挑戦しました。

その結果、直立姿勢のグループは、猫背グループに比べて「自己評価が高い」「気分が明るい」「ストレスに対して前向きな姿勢が取れる」といった傾向が見られました。さらに、スピーチ中に使われる言葉の内容にも違いがあり、猫背の人たちは「悲しみ」や「自己中心的」な言葉を多く使う一方で、直立姿勢の人たちは「前向きな感情」を表す言葉を多く使っていました。

この研究は、「姿勢」が単に体の形だけでなく、ストレスレベルが低下し、血圧の安定に寄与する可能性を示しています。

姿勢を整えるためには、背中や首だけでなく、実は足元の安定性が大きく関わっています。足指の機能が低下すると全身のバランスが崩れ、猫背姿勢にもつながりやすくなるのです。

出典：Nair S, Sagar M, Sollers J 3rd, Consedine N, Broadbent E. Do slumped and upright postures affect stress responses? A randomized trial. Health Psychol. 2015 Jun;34(6):632-41. doi: 10.1037/hea0000146. PMID: 25222091.

京都大学が行った「長浜スタディ」によって、腰の反り（腰椎前弯）が少ない高齢者は、立ち上がったときに血圧が急上昇しやすいことが明らかになりました（Tabara et al., 2019）。

この研究では、1,992人の高齢者を対象に、座っている状態から立ち上がったときの血圧変化を測定。その際、背中から腰の骨のカーブ（脊椎アライメント）も同時に調べました。特に注目されたのは「起立性高血圧」と呼ばれる現象で、これは立ち上がった際に収縮期血圧（上の血圧）が10mmHg以上上がる状態を指します。

分析の結果、血圧が10mmHg以上上昇した人は、腰の反りが平均10.4°しかなく、20mmHg以上上昇した人ではさらに少ない3.3°という結果でした。つまり、腰が真っすぐに近く、自然なカーブが失われている人ほど、立ち上がり時の血圧が急激に上がる傾向があったのです。

また、腰の反りが少ないことに加えて、お腹まわりの肥満（腹部肥満）があると、さらにリスクが高くなることもわかりました。

研究者たちは、腰のカーブが小さいと姿勢の安定性が低下し、自律神経が過剰に働いて血圧を急上昇させてしまうのではないかと推測しています。この結果は、姿勢の乱れが単なる見た目や腰痛だけでなく、血圧管理にも大きな影響を与えている可能性を示すものです。

さらに注目すべきは、こうした腰椎のアライメントの崩れが、実は足指や足裏の機能低下から始まっている可能性があるという点です。足指がうまく使えず、足裏の支持力が低下すると、姿勢のバランスは足元から崩れ、骨盤の傾斜や腰椎の反りが失われていきます。これにより、起立時の姿勢補正がうまく働かず、自律神経が過剰反応し、血圧の急上昇につながる可能性があるのです。

出典：Tabara Y, et al. (2019). Small Degree of Lumbar Lordosis as an Overlooked Determinant for Orthostatic Increases in Blood Pressure in the Elderly: The Nagahama Study. American Journal of Hypertension, 32(1), 61–69. doi: 10.1093/ajh/hpy137

足指にはそれぞれ機能があります。

・親指は足が内側に倒れないようにする
・小指は足が外側に倒れないようにする