【医療監修】マウステーピングは本当に安全なのか?──最新研究と「足指・姿勢」の観点から考える“見落とされたリスク”

目次

はじめに:その「口テープ」、本当に大丈夫ですか?

こんにちは。足指研究家の湯浅慶朗です。

最近、SNS や動画アプリで広まっている“マウステーピング”。

「口にテープを貼るだけで鼻呼吸になれる」「睡眠の質が上がる」と紹介されることが多く、手軽さから試す人が増えています。

しかし私は、これまで 10万人以上の足・姿勢・呼吸の相談 に向き合ってきた経験から、

「睡眠中に口をふさぐ」という行為は、条件によっては大きなリスクになり得る

と強く感じています。

さらに、呼吸の問題は「口」だけを見ても本質にたどり着きません。

姿勢や重心、そしてその土台にある 足指の機能 が深く関わっているからです。

この記事では、

  • 最新研究が示した“マウステーピングの真実”
  • 使用に潜むリスク
  • 足指・姿勢との深い関連性
  • 根本から考えるべき改善の方向性

をできるだけわかりやすく整理してお伝えします。

1章|なぜ口呼吸が問題視されるのか?

私たちの体は 鼻呼吸が基本設計 です。

鼻は

  • 加湿
  • 加温
  • フィルター
  • 空気抵抗による自律神経調整

といった高度な役割を担っています。

ところが、

  • アレルギー性鼻炎
  • 鼻中隔弯曲
  • 扁桃肥大
  • 花粉症

などがあると鼻の通り道が狭くなり、口呼吸が習慣化します。

口呼吸が続くと、

  • いびき
  • 口の乾燥
  • 歯や歯周組織のトラブル
  • 顎位の変化
  • 睡眠の質の低下

などの報告が増えるため、「鼻呼吸へ戻したい」というニーズが高まっています。

その結果、

「口を塞げば鼻呼吸になるのでは?」

という発想からマウステープが流行しました。

しかし――ここに大きな落とし穴があります。

2章|最新研究レビューが示した「マウステーピングの実像」

■ 2024年1月|マクマスター大学の医師が示した警告

2024年1月、カナダのマクマスター大学の医師らが、マウステーピングに関する臨床的見解を発表しました。

その結論は次の通りです。

  • 科学的根拠はまだ十分とは言えない
  • 軽度のいびきに対しては「一定の可能性」がある
  • 重度の睡眠時無呼吸(OSA)ではリスクが高く推奨されない
  • 一般的な治療として安易に使うことは慎重にすべき
  • 証拠の質は限定的であり、日常医療での使用は推奨されない

医師らは

「口を閉じること=呼吸が整うことではない」

ことを強調しています。

特に、

  • 下顎後退
  • 舌根沈下
  • 気道狭窄
  • 姿勢の崩れ

といった “構造的な問題が残ったまま口を塞ぐこと” が危険だと指摘しています。

■ 2025年 PLOS ONE|世界最大級の統合解析(Systematic Review)

2025年5月、Rhee らによる 10研究・213名を包括した体系的レビュー

PLOS ONE に掲載されました。

これは、過去25年間のマウステーピング研究をすべて統合した世界最高レベルのまとめ です。

この“最新の警告”を踏まえたうえで、次に紹介する体系的レビュー(PLOS ONE 2025)を見ると、全体像が立体的に理解できます。

✦ 結論①|臨床的に有望なのは「軽度OSAのごく一部だけ」

10本の研究のうち、AHI(無呼吸低呼吸指数)が軽度(AHI<15)の人では、

  • AHIが 8.3 → 4.7
  • AHIが 12 → 7.8
  • いびき指数の低下
  • ODI(酸素低下指数)の軽度改善

といった “数値的な変化傾向” が報告されました。

しかし研究者たちは、

「臨床的に意味のある改善とは言いがたい」

と明確に述べています。

YOSHIRO

数値の変化が一時的に見られても、下顎の位置や舌の高さ、気道の通りやすさといった身体構造そのものが変わらない限り、睡眠時無呼吸が本質的に改善したとは言えません。

✦ 結論②|“効果なし” もしくは “限定的” が大半

以下の研究では 有意差なし

  • 一般的ないびきへの影響
  • CPAP治療と併用しても改善効果なし
  • 口呼吸の癖の改善効果なし
  • “虫歯予防・美容効果”などSNS主張の根拠なし

研究者は、

「SNSの主張は科学的根拠と一致しない」

と注意喚起しています。

YOSHIRO

虫歯と呼吸は直接的な因果関係はありません。虫歯は、主に口腔内環境と細菌バランス、そして血流の状態など複数の要因が重なって生じるものです。

✦ 結論③|最大の問題は“リスク”がはっきり示された点

体系的レビューが最も強調したのは、

「鼻閉がある人にマウステープは危険」 という点です。

報告されているリスク:

  • 無呼吸悪化
  • 酸素低下(ODI悪化)
  • 窒息の危険性(研究内で複数回警告)
  • 鼻閉者への使用は“重大リスク”

研究者の総括は次の通りです:

「一般人がSNSを見て自己判断で行う行為ではない」

YOSHIRO

体験談は非常に価値があります。数が蓄積すれば、一定の参考指標としても機能します。ただし、口呼吸はあくまで“結果として現れている状態”であり、本質的な要因は別のところに潜んでいます。注意を向けるべきポイントは、むしろその背景にある構造的な問題です。

3章|「口が閉じられない本当の理由」— それは“姿勢”と“足指”にある

SNS で語られる対策の多くは、

「症状(口呼吸)だけを見ている」

という点で根本的ではありません。

私の臨床では、次の流れが非常に頻繁にみられます。

✦ 足指機能の低下

スクロールできます
全ての指を曲げることができない
全ての指をひらくことができない
意識的に親指だけを上げることができない


✦ 後方重心


ストレートネック

スクロールできます



✦ 上気道の狭窄・舌位置の低下



✦ 口が閉じにくくなる

✦ 口呼吸が“結果として”起きる

つまり、

口呼吸は「原因」ではなく、姿勢と足指に問題がある“結果”であることが多い。

ここを見落とすと、どれだけ口を塞いでも根本は変わりません。

補足|なぜ「足指」が呼吸に関わるのか(Hand-Standing理論)

ここで重要になるのが、私が提唱している「Hand-Standing理論」です。

これは、足指を「体の末端」ではなく、
姿勢・重心・呼吸を支える
“感覚と安定の起点”として捉える考え方です。

人の身体は、足元から得られる感覚情報をもとに
無意識に姿勢や頭部の位置を調整しています。

そのため、足指の接地や向きが乱れると、
重心が後方へずれ、
首の位置や下顎のポジションが変化し、
結果として気道が狭くなりやすくなります。

私の臨床では、
足指機能の低下 → 姿勢の崩れ → 呼吸の乱れ
という連鎖が、非常に多くのケースで観察されています。

4章|足指と呼吸の深い関係(構造的メカニズム)

足指が外反母趾内反小趾寝指浮き指屈み指になると、

という連鎖が起こります。

頸椎と下顎骨の関係
スクロールできます
正しい姿勢
正しい姿勢=下顎は正しい位置にある
頚椎前弯・ストレートネック型
猫背=下顎は後ろに牽引され口呼吸に
頚椎後弯型
反り腰=下顎は前方に押し出され口呼吸に

これが「浅い呼吸」「口呼吸」「いびき」の大きな土台です。

首だけをストレッチしても変わらない理由は、

土台(足指)が変わっていないから です。

\ 詳細な構造メカニズムは、こちらの記事で図解しています /

5章|園児調査でわかったこと

2017年、園児を対象に「足指を使いやすい環境づくり」を 8週間行ったところ、

  • 浮き指の割合
  • 足指の配置
  • 姿勢指標
  • 口呼吸傾向
  • 口唇閉鎖力

など、多くの項目で“変化傾向”が観察されました。

幼児は意識的に姿勢を変えないため、

体の土台が変わると呼吸傾向まで変わり得る という示唆を得られた重要なデータでした。

(※臨床データは「構造の観察」であり、特定の製品の効果を保証するものではありません。)

まとめ|マウステーピングの前に“足元”を見るべき理由

マウステープは「一部の人に限定的な変化が見られる可能性」はある一方で、

  • 条件によってはリスクがある
  • 科学的根拠は十分ではない
  • 口呼吸の根本原因を解決しない

という課題が浮き彫りになっています。

一方、姿勢・呼吸の土台をつくるのは 足指の機能と重心バランス です。

呼吸を変えたいなら、まず足元から。

これが10万人を観てきた私の結論です。

足指の研究から生まれた「環境づくり」という視点

足指研究所では、20年以上の臨床経験と、東京大学・石井直方名誉教授と実施した観察研究を通して、

「足指が使いやすい環境が整うと、姿勢・重心の安定性に関わる“変化傾向”が見られることがある」

という視点を大切にしています。

足指は本来、「広がる・伸びる・接地する」という生理的な動きを持ちますが、

靴・靴下・床の滑りやすさなどによって、その働きが阻害されることがあります。

私たちは、

「どうすれば日常で足指が動きやすい環境を作れるか」

という点を中心に開発と研究を続けています。

【研究データ|足指・姿勢・筋活動の観察記録】

2020〜2022年、東京大学・石井直方名誉教授の指導下で実施。

延べ96名を対象に、以下の構造的特徴の推移を多角的に観察しました。

  • 足指の動き・配置
  • アーチ構造
  • 姿勢指標
  • 体幹支持筋・口腔周囲筋・下肢筋の活動傾向

“足指が使いやすい環境づくり”を行った際、

足指・姿勢・呼吸に関連する筋活動などに構造的な変化傾向が見られました。

研究データの詳細はこちら

【足指が使いやすい体へ|4つのアプローチ】

日常で“足指が働きやすい環境”をつくるための基本ポイントです。

1. ひろのば体操(足指をゆるやかに伸ばす)

2. 靴の見直し(足指が押しつぶされない設計)

3. 小股歩き(足指が自然に使いやすい歩き方)

4. 室内環境の調整(滑りやすい床・スリッパを避ける)

詳しいケア方法はこちら

【YOSHIRO SOCKS|構造とものづくり】

——足指が使いやすい“環境づくり”をめざした生活用品

足指の働きを妨げる「環境」そのものに着目し、

奈良の専門工場とともに、糸・密度・摩擦・張力などを精密に検証してきました。

● 構造のポイント

姿勢の安定性に配慮した
摩擦構造

自然な足指の開きを支える
立体フォルム

重心バランスを考慮した
密度・張力設計

“広げる・伸ばす”動きを引き出す
テンション配置

開帳・扁平傾向に配慮した
縦横方向テンション

母趾〜小趾が整列しやすい
張力バランス

※ いずれも医療的効果を示すものではなく、あくまで「足指が働きやすい状態をサポートする生活用品としての構造」の説明です。

● 製造のポイント

日本製

高密度

極薄

高耐久

高グリップ

吸湿・速乾

  • 日本製:専門工場が ±1mm 単位でテンション管理
  • 高密度:700nmクラスの極細繊維
  • 極薄:約2mmの軽さと安定性
  • 高耐久:生活用品としての強度
  • 扇形フォルム:足指が自然に広がりやすい形状

YOSHIRO SOCKS の構造と設計はこちら

免責事項

本記事は一般的な情報提供であり、治療や効果を保証するものではありません。個人差があります。医療が必要な際は専門医へご相談ください。商品は医療効果を目的としたものではありません。

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