【医療監修】正しい姿勢は足指から始まる|ニュートラルポジションが「意識しても整わない」本当の理由

目次

はじめに|なぜ「意識しても姿勢が整わない」のか

こんにちは。足指研究家の湯浅慶朗です。

私は理学療法士として、これまで10万人以上の足と姿勢を観察してきました。

その中で、常に感じてきた疑問があります。

「姿勢を意識しているのに、なぜすぐ崩れてしまうのか」

背筋を伸ばす

骨盤を立てる

肩を下げる

多くの方が努力しています。それでも無意識になると元に戻ってしまう。

その理由は、姿勢を“上から”直そうとしているからです。

臨床の現場では、

外反母趾・内反小趾・寝指・浮き指・屈み指といった足指の変形や使い方の乱れを抱えている方ほど、

姿勢が安定せず、ニュートラルポジションを保てない傾向がはっきり見られます。

姿勢の安定は、意識ではなく

足元からの力学と感覚入力によって決まる

――これが、臨床と研究の両面から見えてきた結論です。

ニュートラルポジションとは何か

私が提唱しているニュートラルポジションとは、

筋力で作る姿勢ではなく、構造的に「戻れる姿勢」

を指します。

頭・肩・骨盤・膝・足首が一直線に並ぶ

背骨の生理的カーブが保たれる

過剰な筋緊張が起こらない

こうした状態は、

「頑張って維持する姿勢」ではありません。

外反母趾浮き指足趾機能不全がない足では、

足部が正しく働くことで、自然に保たれる姿勢

それがニュートラルポジションです。

ニュートラルポジションを「確認」する4つの視点

― 作る姿勢ではなく、戻れているかを見る ―

ここまで読んで、

「ニュートラルポジションが大切なのはわかったけれど、

自分が今そうなっているかどうかは、どうやって判断すればいいのか」

そう感じた方も多いと思います。

重要なのは、

ニュートラルポジションは頑張って作る姿勢ではないという点です。

確認すべきなのは、

意識を抜いたときに、体がどこに戻っていくか

ここでは、臨床で実際に用いている

「ニュートラルポジションを確認する4つの視点」を紹介します。

① 鏡で確認する(前額面)

全身が映る鏡の前に、力を抜いて立ってみてください。

確認するポイント
  • 目の高さが左右で揃っているか
  • 耳・肩・手・膝・足首の高さが左右で大きくズレていないか

体が左右どちらかに傾いていたり、

肩や目の高さに差がある場合、

姿勢制御がどこかで代償されている可能性があります。

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補足(構造的な連鎖)

脚長差や骨盤の傾きがあると、

背骨はS字を描きながらバランスを取ろうとします。

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その結果、

  • 肩の高さに左右差が出る
  • 頭を傾けて調整する
  • 下顎をずらして視線を保とうとする

といった連鎖的な姿勢調整が起こることもあります。

② 写真で確認する(矢状面)

次に、スマートフォンで真横から姿勢写真を撮ります。

意識的に姿勢を正そうとせず、自然に立った状態で撮影してください。

確認する基準
  • 耳たぶ
  • 肩の中心(肩峰)
  • 股関節(大転子)
  • 膝の中心
  • 外くるぶし

これらがほぼ一直線上に並んでいるかどうかです。

  • 股関節が線より後ろ → 骨盤後傾(猫背傾向)
  • 股関節が線より前 → 骨盤前傾(反り腰傾向)
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ここで大切なのは、

「真っ直ぐにしようとした姿勢」ではなく、

無意識に立ったときの戻り先を見ることです。

③ 足の状態(足底圧)

ニュートラルポジションは、

上半身よりも足底で最も明確に現れます

足底圧測定ができる環境があれば、

次の点を確認します。

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良い足底圧の特徴

  • 踵:前足部=およそ 50〜60%:40〜50%
  • 左右の荷重比がほぼ均等
  • 5本の足指すべてが接地している
  • 内側・外側・横のアーチがバランスよく現れている
  • 圧が一部に集中していない

注意すべき足底圧の特徴

  • 踵や前足部に極端に偏る
  • 親指や小指が浮いている
  • 足裏の一部しか接地していない

ここで重要なのは、

アーチの高さそのものではありません。

足指が姿勢制御に参加できているかどうか。

それが、ニュートラルポジションを判断する最重要ポイントです。

④ 脚のアライメント

最後に、脚全体の並びを確認します。

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ニュートラルポジション
O脚
X脚
XO脚
  • 踵の中心から上に引いた垂直線が 膝の中心を通っているか

これが、

構造的に負担が分散されやすいニュートラルな下肢アライメントです。

  • 線が膝の内側 → O脚(内反膝)
  • 線が膝の外側 → X脚(外反膝)
  • 太ももはX脚、膝下はO脚 → XO脚

これらは結果であって原因ではありませんが、

足底圧と足指機能の影響を強く受ける指標でもあります。

姿勢制御は「足」から始まっている

姿勢制御というと、体幹やインナーマッスルが注目されがちです。

しかし研究を見ていくと、実際には足部、とくに足指の役割が非常に大きいことがわかっています。

足指と姿勢制御を示す研究的知見

Weiら(2022)のシステマティックレビューでは、

足底内在筋、すなわち足指周囲筋への介入が、動的姿勢バランス指標の改善と関連する傾向

を示す研究結果が複数報告されています。

注目すべき点は、これらの研究において筋肥大や単純な筋力増加が一貫して確認されていないにもかかわらず、

バランス能力の変化が観察されている点です。

このことは、姿勢制御が

体幹から足部へ一方向に制御される仕組みだけで成り立っているのではなく

足指・足底からの機能的入力が、姿勢制御全体に影響を及ぼしうる可能性を示唆しています。

臨床の現場でも、

浮き指・寝指屈み指といった足趾機能不全を伴うケースでは、

体幹トレーニングや姿勢意識への介入のみでは、

立位や歩行時の安定性に変化が乏しい場面を数多く経験します。

足指が十分に接地せず、足底圧が適切に分散されない状態では、

姿勢制御の負担が上位関節や体幹へ移行しやすく、

結果として「姿勢を意識しても安定しない」状態が生じやすくなると考えられます。

ニュートラルポジションを崩す最大の要因「足底圧」

姿勢が不安定になる背景には、体幹や背骨の問題だけでなく、足底での荷重の受け止め方が変化しているという要因が関与しているケースが少なくありません。

Teyhenら(2011)は、

静的な足部アライメントを評価する Foot Posture Index(FPI-6) と、

歩行中に計測される 動的な足底圧分布との関連を大規模サンプルで解析し、

両者の間に臨床的に意味のある関連がみられる傾向を報告しています。

この研究は、

「足の形」そのものが姿勢を決定することを示したものではありませんが、

静止時の足部姿勢と、動作中の足底圧の使われ方が無関係ではない

ことを示唆しています。

臨床的には、外反母趾や内反小趾、浮き指・屈み指といった足趾機能不全がある足では、

  • 母趾や小趾が接地に十分参加しにくい
  • 足底全体で圧を受け止めにくい
  • 結果として、前足部や踵への荷重が相対的に増えやすい

といった 足底圧分布の偏り が観察されることがあります。

ここで重要なのは、

アーチが高いか低いかという形態の問題ではなく、

足指が姿勢制御の一部として機能に参加できているかどうか という点です。

ニュートラルポジションは、意識して「作る」姿勢ではなく、

足底圧が適切に分散され、足指が使われる環境が整った結果として“戻ってくる状態”

と捉える方が、構造的にはより妥当だと言えるでしょう。

姿勢が崩れる背景には、必ず足底圧の乱れがあります。

足指が十分に使われないと、姿勢制御に何が起きるのか

Sulowskaら(2016)は、

ランナーを対象に 足底内在筋(short foot muscles)への運動介入を行い、

  • 足部姿勢指標(Foot Posture Index)の一部が ニュートラル方向へ変化する傾向
  • 深いスクワットや下肢挙上など、 基本的な動作パターン(FMS)の質が向上する傾向

が認められたことを報告しています。

この結果は、

足指を含む足底内在筋が、足部のアライメントだけでなく、

全身の動作制御にも関与している可能性を示唆するものです。

臨床的な視点で見ると、

外反母趾・浮き指・屈み指・寝指といった足趾機能不全がある場合、

  • 足指が接地に十分参加しにくい
  • 足底からの感覚入力が低下しやすい
  • 母趾・小趾による支持が弱くなりやすい

といった状態が生じることがあります。

このような状態では、

本来は足部で処理される前後・左右方向の微細な揺れを、

膝・股関節・体幹側で補おうとする姿勢戦略が選択されるケースも、

臨床では少なくありません。

Sulowska らの研究は、

「足指が使われる環境を整えることが、足部姿勢と動作パターンの質に影響しうる」

という点を示しており、

ニュートラルポジションが

意識して作る姿勢ではなく、

足底からの支持と感覚入力が回復した結果として“戻ってくる状態”

であるという考え方とも、構造的に整合します。

ニュートラルポジションが崩れる「構造連鎖」

ここまでの研究と臨床を整理すると、

「足で処理できない揺れを、体がどこで補うか」

という視点が見えてきます。

足底圧が崩れると、姿勢制御は次の順で分担されやすくなります。

足指 → 足部 → 膝 → 骨盤 → 脊柱

Komiyaら(2023)は、

立位という姿勢制御が要求される条件下では、足底内在筋(母趾・足趾周囲筋)の活動が座位よりも有意に高まる

ことを報告しています。

この結果は、

重心を支持・制御する場面では、

足趾・足底内在筋が積極的に動員される

ことを示しています。

臨床的に見ると、

寝指・内反小趾・浮き指などによって

足指が十分に接地・支持に参加できない状態が続くと、

  • 足部での微細な姿勢調整が行いにくくなり
  • その結果、 膝・骨盤・体幹といった上位構造が 姿勢制御を代償的に担う

ケースが少なくありません。

Komiyaらの研究は、

「足趾が使われる姿勢環境では、足底内在筋の活動が自然に高まる」

ことを示しており、

ニュートラルポジションが

意識して作る姿勢ではなく、

足底からの支持と感覚入力が回復した結果として“戻ってくる状態”である

という構造的理解とも整合します。

ニュートラルポジションは「作る」のではなく「戻す」

この「姿勢は意識して作るものではなく、条件が整うと自然に戻る」という考え方は、
私が提唱している Hand-Standing理論 と完全に一致します。

手で逆立ちをするとき、指を閉じればバランスは崩れ、
指を広げて地面をとらえると、体は無意識に安定します。

足も同じで、
足指と足底が姿勢制御に参加できる環境が整ったとき、
ニュートラルポジションは“作らなくても戻ってくる状態”として現れます。

近年の姿勢制御研究では、

人の立位姿勢は「正しい姿勢を意識的に作るもの」ではなく、

身体と環境の相互作用の中で自己組織化的に立ち上がる状態

であることが示されています。

2025年に Scientific Reports に掲載された研究では、

動的な床外乱に対して、足関節戦略から膝戦略への移行が、事前の指令や手動調整なしに自律的に出現する

ことが確認されました(Taleshi et al., 2025)。

ここで重要なのは、

ニュートラルポジションは

意識して作るものではない

という点です。

つまり、

正しい姿勢→ 足指を鍛える

ではなく、

足指が使える環境 → 足趾機能不全が起こりにくい → 足底圧が整う → ニュートラルポジションに戻る

という順序が本質です。

足指の状態に関する記録例

ここでは、日常生活の中でセルフケアを継続された方について、足指の状態を記録した一例をご紹介します。

これらは、医療的な効果や症状の改善を示すものではなく、生活習慣の中での足指の状態を個別に記録した参考例です。同様の結果が得られることを示すものではなく、状態や経過には個人差があります。

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屈み指の状態の記録(例1)
屈み指の状態の記録(例2)
屈み指の状態の記録(例3)
屈み指の状態の記録(例4)
屈み指の状態の記録(例5)
屈み指の状態の記録(例6)
屈み指の状態の記録(例7)
屈み指の状態の記録(例8)
屈み指の状態の記録(例9)
屈み指の状態の記録(例10)

(※変化には個人差があり、使用後の変化を保証するものではありません)

足指が使いやすい環境が整うと、姿勢の状態に“変化が見られることがある

下の写真は、

足指まわりの環境づくりを見直した一例として記録した観察写真です。

姿勢の変化には個人差があり、すべての人に同じ変化が現れるわけではありませんが、

“身体の使い方の変化”が見られたケースとして掲載しています。

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姿勢の状態の記録(例1)
姿勢の状態の記録(例2)
姿勢の状態の記録(例3)
姿勢の状態の記録(例4)
姿勢の状態の記録(例5)
姿勢の状態の記録(例6)
姿勢の状態の記録(例7)
姿勢の状態の記録(例8)
姿勢の状態の記録(例9)
姿勢の状態の記録(例10)
姿勢の状態の記録(例11)
姿勢の状態の記録(例12)

(※変化には個人差があり、使用後の変化を保証するものではありません)

まとめ|正しい姿勢は「足指から始まる」

これまでの研究と臨床から一貫して言えることがあります。

姿勢は

意識 → 筋力 → 体幹

で作るものではありません。

足指(外反母趾・内反小趾・寝指・浮き指・屈み指)→ 足底圧 → 姿勢制御 → ニュートラルポジション

この構造が整った結果として、姿勢は安定します。

姿勢が崩れると感じたとき、

まず見直すべきなのは「背中」ではありません。

足趾が、姿勢制御に参加できているかどうか。

そこに、すべての出発点があります。

足指への3つのアプローチ

— ただし、順番があります

私は2006年以降、病院における臨床の場で、体操・靴下・歩き方・靴の指導を中心に、足指の変形や機能不全、そしてそれに関連する整形外科的な不調に対する対応を行ってきました。

外反母趾、内反小趾、かがみ指、浮き指、寝指、足趾機能不全に加え、膝・腰・股関節・姿勢といった問題についても、足指からの介入を軸に経過を観察してきた臨床の積み重ねがあります。

これは理論だけの話ではありません。長年にわたる臨床数と経過、データの蓄積の中で、「動かす・保つ・使い続ける」という視点が共通して重要であることが整理されてきました。

その結果として、ここで紹介しているひろのば体操・YOSHIRO SOCKS・YOSHIRO WALKという3つのアプローチに集約されています。

1. ひろのば体操

足指を「動かして」広げて伸ばす

ひろのば体操は、足趾機能不全によって低下しやすい足指の可動性や感覚入力を取り戻し、足指が本来の動きを発揮しやすい状態をつくることを目的に考案された体操です。

外反母趾・内反小趾・屈み指・浮き指・寝指など、足指がうまく使われにくくなっている状態に対して、日常で取り入れやすいアプローチの一つです。

2. YOSHIRO SOCKS

広がって伸びた足指を「保ち続ける条件」をつくる

YOSHIRO SOCKSは、足の中で起こりやすい「滑り」「指の押し込み」「アーチの崩れ」といった足元環境のストレスに着目し、

  • 足指が広がりやすい
  • 足指が伸びやすい
  • 足裏のアーチが保たれやすい

足元環境を整えることを目的に設計された靴下です。外反母趾・内反小趾・屈み指・浮き指・寝指・足趾機能不全など、足指の使われ方が関与するケースで検討される選択肢の一つです。

3. 小股歩き

日常動作の中で、足指が“使われ続ける”状態をつくる

小股歩きは、歩幅を抑えることで足指を感じながら地面を捉えやすくする歩き方です。

体操や足元環境の見直しと組み合わせることで、足指に関わる筋活動が起こりやすい条件をつくる考え方として紹介しています。

無理なく続けられる形を選んでください

・体操から始める人

・足元環境から見直す人

・両方を組み合わせる人

どれか一つに決める必要はありません。足指の問題は、方法よりも「続けられる条件」が大切です。


まず迷っている方へ

— どれから始めるか迷ったら、ここを基準にしてください —

  • 体操が続かなかった人
  • 歩き方を意識する余裕がない人
  • 靴をすぐに変えられない人

この場合は、

② YOSHIRO SOCKS(足元環境を整える) から始めるのが現実的です。

足指は「動かす前に、使われる環境」が整わないと戻りやすいため、

まずは日常の中で 足指が使われにくい状態を減らす ことが優先されます。


すでに体操ができている方へ

① ひろのば体操 + ② YOSHIRO SOCKS

動かした足指を、そのまま保てる条件が重なることで、

足指が使われやすい状態が続きやすくなります。


余裕が出てきた方へ

③ 小股歩き を組み合わせることで、 日常動作の中でも足指が“使われ続ける”条件が整っていきます。

※どれか一つを「完璧にやる」必要はありません。

足指の問題で大切なのは、無理なく続けられる順番を選ぶことです。

次に知りたいことを選んでください

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