はじめに
こんにちは、足指研究家の湯浅慶朗です。
私はこれまで、臨床・観察研究・海外フィールドワークを通じて
「履物が足指の使われ方をどう変え、その結果として姿勢や運動機能にどんな影響を与えるのか」
を一貫して見続けてきました。
毎年夏になると必ず話題になるのが、
「ビーチサンダルは足に悪いのか?」
という問いです。
一部では
「外反母趾になる」
「足底筋膜炎の原因になる」
「腰や膝を痛める」
といった否定的な意見が語られます。
しかし私は、この問い自体が少しズレていると感じています。
重要なのは
ビーチサンダルかどうかではなく、その履物が“足指をどう使わせる環境か”
という視点です。
この記事では、
「ビーチサンダル=良い/悪い」という単純な話ではなく、
足指機能・姿勢制御・Hand-Standing理論の観点から、
構造的に整理していきます。
健康的な履物を考えるときの基準とは
まず前提として、
私が足指研究の中で重視している
「足にとって負担が少ない履物環境」の条件を整理します。
健康的とされやすい履物には、次のような特徴があります。
- 足指が自然に広がれる前足部スペース
- 過剰に硬くない柔軟性のあるソール
- つま先と踵の高低差が少ないフラット構造
- 過剰な補正・安定機構に依存しない設計
- 足指や足底感覚が入りやすいシンプルな構造
この条件だけを見ると、
多くのビーチサンダルは一見「理にかなっている」ようにも見えます。
実際、
裸足・フラットサンダル・柔らかい履物は膝関節への負荷が比較的低い傾向を示した
研究も存在します(Shakoor et al., 2010)。
ただし――
ここで話は終わりません。
研究が示す「フラット=安全」という誤解
Shakoorらの研究では、
- 安定靴やクロッグは膝への負荷が高い
- 裸足・フラットシューズ・ビーチサンダルは負荷が近い
という結果が報告されています。
これは確かに重要な知見です。
しかし私は、この結果を
「ビーチサンダルが健康に良い」と短絡的に解釈すべきではない
と考えています。
なぜなら、
この研究が評価しているのは
関節モーメントという一側面であり、
- 足指がどう使われているか
- どの筋が代償的に働いているか
- 長期的にどんな変形が固定化するか
までは評価していないからです。
現実世界の観察が示すもう一つの事実
私はネパール、インド、スリランカ、インドネシアなどで
長期間、足の使われ方を観察してきました。
そこで印象的だったのは、
- ビーチサンダルや簡素な履物を履いている人ほど 足指が自然に広がり、地面を捉えている
- 一方、重く硬い靴を履いた旅行者ほど 足の痛み・疲労・トラブルを訴えている
という現実です。
また、過去の疫学調査でも、
- 裸足または簡素なサンダル文化圏では 足部変形の有病率が低い
- 問題の多くは皮膚トラブルで、 骨格・足指変形は少ない
という傾向が報告されています。
ここから言えるのは、
「履物の構造」そのものより、それによって足指がどう使われ続けたかが重要
という事実です。
ビーチサンダルで問題が起きやすい条件
では、なぜ
「ビーチサンダルは足に悪い」と言われるのでしょうか。
私が臨床・観察で最も多く見てきた問題は、ここです。
- サンダルが足に固定されず
- 脱げないように足指で掴み続ける
- 母趾・小趾が屈曲位で固定される
この状態が続くと、
といった足指変形の連鎖が起こりやすくなります。
つまり問題は
「ビーチサンダル」ではなく
「足指を常に掴ませる環境」です。
Hand-Standing理論から見たビーチサンダル
私が提唱しているHand-Standing理論では、
姿勢制御や運動機能は、末端(足指・手指)から中枢へ向かって構築される
と考えます。
足指が
- 広がれない
- 接地できない
- 感覚が入りにくい
環境では、
足指 → 足底 → アーチ → 重心 → 姿勢
という制御ループが乱れます。
ストラップが不十分なビーチサンダルで
常に「掴む」動作が必要な場合、
これは
裸足に近いようで、実は最も不自然な足指使用
になり得ます。
「裸足が良い」ではなく「足指が働けるか」
ここで強調したいのは、
- 裸足か
- 靴か
- サンダルか
ではありません。
足指が自然に
・広がり
・伸び
・接地できるか
それだけです。
- 固定力があり
- 足が滑らず
- 掴まなくて済む
こうした条件を満たすビーチサンダルであれば、
足指機能を妨げるとは限りません。

逆に、
- 脱げやすい
- 前足部が不安定
- 常に指で保持する必要がある
サンダルは、
長期的には足指変形を助長する可能性があります。
季節の切り替えで注意すべき点
もう一つ重要なのが
履物の急激な切り替えです。
ヒールや厚底靴から
一気にフラットなビーチサンダルへ移行すると、
- アキレス腱
- 足関節
- ふくらはぎ
に過剰な張力がかかりやすくなります。
これは履物の「良し悪し」ではなく、
身体側の適応不足による問題です。
段階的な移行が不可欠です。
湯浅慶朗としての結論
ビーチサンダルは、
使い方と構造次第で
足指機能を妨げることも、
活かすこともある履物
です。
問題は常に、
- 足指がどう使われているか
- どんな動きが強制されているか
ここにあります。
私は今後も、
- 外反母趾
- 内反小趾
- 寝指
- 屈み指
- 浮き指
を「結果」として捉え、
その環境要因を言語化し続けます。
履物選びとは、
ファッションでも流行でもなく、
足指の使われ方を選ぶ行為です。
ぜひ一度、
あなた自身の足指が
「今、何を強いられているか」
観察してみてください。
参考文献
APMA Public Opinion Research on Foot Health and Care https://cdn.shopify.com/s/files/1/0735/7693/files/APMA_Public_Opinion_Research_on_Foot_Health_and_Care.pdf
Shakoor N et al. The effects of common footwear on joint loading in osteoarthritis of the knee. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2940270/

