【医療監修】足指はなぜ「バランス能力」に影響するのか― FRT・TUGから読み解く、転倒予防とスポーツパフォーマンスの基礎構造 ―

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はじめに|転倒は「筋力低下」だけの問題ではない

こんにちは、足指研究家の湯浅慶朗です。

転倒は中高年者にとって重大な健康リスクの一つです。

骨折や入院、要介護状態につながるケースも多く、生活の質(QOL)を大きく低下させます。

一方で、転倒は

「筋力が弱くなったから起こる」

「歳をとったから仕方がない」

と単純に説明されがちですが、臨床現場ではそれだけでは説明できないケースが少なくありません。

実際には、

  • 筋力は保たれている
  • 歩行速度も極端に遅くない
  • 明らかな麻痺や疾患がない

にもかかわらず、

「バランスを崩しやすい」「立て直しが遅い」という方は多く存在します。

こうした背景から、現在の転倒予防では

身体の出力そのものよりも、出力を支える条件(姿勢・支持・感覚)

に注目した評価が重視されています。

その代表的な指標が、

FRT(ファンクショナルリーチテスト)と

TUG(Timed Up & Go Test)です。

転倒予防で用いられる2つの代表的指標

ファンクショナルリーチテスト(FRT)とは

FRTは、立位姿勢のまま前方へ手を伸ばした際の最大到達距離を測定するテストです。

このテストでは、

  • 支持基底面をどれだけ保てるか
  • 重心を前方へ移動させた際に姿勢を制御できるか

といった静的〜準動的バランス能力が評価されます。

FRTの数値が低下している場合、

前方への動作(物を取る・体をかがめる)で転倒リスクが高まる傾向があります。

Timed Up & Go Test(TUG)とは

TUGは、

  1. 椅子から立ち上がる
  2. 3m先まで歩く
  3. 方向転換して戻る
  4. 再び着座する

という一連の動作に要する時間を測定します。

このテストでは、

  • 動的バランス
  • 歩行能力
  • 方向転換時の制御
  • 立ち上がり動作の安定性

といった日常生活に直結する運動制御能力が反映されます。

TUGは高齢者医療・リハビリ領域において、

転倒リスク評価の標準的指標の一つとして広く用いられています。

なぜ「足指」がFRT・TUGに関与するのか

FRTやTUGは、一見すると

  • 体幹
  • 下肢筋力
  • 歩行能力

といった中枢・近位要素が主に関係しているように見えます。

しかし、臨床的・生体力学的に見ると、

これらの能力は「足元の支持条件」に大きく依存していることが分かります。

足指は、

  • 身体が地面と接触する最末端
  • 重心位置を感知する感覚入力点
  • 支持基底面を構成する重要な構造

です。

足指が適切に接地し、広がり・伸び・荷重が行われている状態では、

  • 足底からの感覚入力が安定する
  • 重心移動に対する制御がしやすくなる
  • 体幹・下肢筋群が過剰に緊張しにくくなる

といった連鎖が生じます。

逆に、

などがある場合、

支持基底面が不安定となり、FRTやTUGに必要な姿勢制御が難しくなります。

足指と姿勢制御をつなぐ「Hand-standing理論」という考え方

足指がFRTやTUGといったバランス指標に影響する理由を、

私は Hand-standing理論 という考え方で整理しています。

少し想像してみてください。

逆立ちをする場面で、

手のひらや指が床をしっかり捉えられていない状態では、

肩や体幹にいくら力があっても安定して身体を支えることはできません。

一方で、

手指が床を面で捉え、

「ここで支えられている」という感覚が入った瞬間、

肩・体幹・下肢までが一体となって安定します。

このとき起きているのは、

筋力が急に増えたのではなく、

出力を妨げていた条件が取り除かれた状態です。

足指も同じ構造にあります。

足指は、身体が地面と接する最末端であり、

支持基底面と感覚入力の起点です。

足指が

  • 広がり
  • 伸び
  • 接地し

地面を捉えられている状態では、

  • 重心位置が把握しやすくなり
  • 姿勢制御に必要な感覚入力が安定し
  • 体幹や下肢筋群が過剰に緊張しにくくなります

この状態では、

FRTで求められる「前方への重心移動」や、

TUGで必要な「立ち上がり・歩行・方向転換」といった動作が、

無理なく行いやすくなります

逆に、

  • 浮き指
  • 屈み指
  • 寝指
  • 外反母趾・内反小趾

などにより足指が支持基底面として機能しにくい場合、

身体は「不安定」と判断し、

無意識のうちに動作を抑制します。

Hand-standing理論は、

「末端が安定してはじめて、中枢の出力が解放される」

という構造を示した考え方です。

FRTやTUGで見られる変化も、

筋力の増加というより、

足元の条件が整ったことで姿勢制御が働きやすくなった結果

と捉えると、理解しやすくなります。

観察研究から見えた「足指とバランス指標の関係」

足指環境を整えた条件下での観察では、

  • FRTにおける前方リーチ距離
  • TUGにおける動作時間

変化傾向が見られるケースが報告されています。

これは、

  • 筋力が急激に増加した
  • トレーニングを積んだ

というよりも、

「身体を支える条件が整ったことで、もともと持っていた能力が発揮されやすくなった」

と解釈する方が、生体力学的には自然です。

トレーニングによる改善と「環境調整」の違い

FRTやTUGを改善するための一般的な方法としては、

  • 体幹トレーニング
  • バランス訓練
  • 筋力トレーニング
  • 歩行練習

などが用いられます。

これらは確かに有効ですが、

  • 週数回
  • 数週間〜数か月

といった継続的な介入が必要になります。

一方で、

足指が働きやすい環境を整えた場合、

  • 姿勢の安定感
  • 重心移動時の不安定さ
  • 動作開始時の迷い

といった点に、即時的な変化を感じる人がいることも事実です。

これは、

「鍛えた」結果ではなく、

「邪魔していた条件が取り除かれた」結果

と考えると理解しやすいでしょう。

スポーツパフォーマンスへの応用

FRTやTUGは高齢者評価だけでなく、

  • サッカー
  • バスケットボール
  • テニス
  • 武道
  • ダンス
  • ゴルフ

など、バランス・方向転換・リーチ動作が重要な競技にも応用可能です。

競技力向上においても、

  • 筋力強化
  • 技術練習

だけでなく、

「安定した出力条件を作ること」

が、動作の再現性や怪我予防に大きく関わります。

まとめ|バランス能力は「足元の条件」から再評価する

FRTやTUGは「能力」を測っているようで、

実際には「身体がどの条件で使われているか」を反映する指標でもあります。

  • FRT・TUGは転倒予防の重要な指標である
  • これらの指標は筋力だけでなく支持条件に左右される
  • 足指は支持基底面と感覚入力の要となる構造
  • 足指が働きやすい環境は、姿勢制御を助ける可能性がある

転倒予防やスポーツパフォーマンスを考える際、

「どれだけ鍛えるか」だけでなく、「どのような条件で身体を使っているか」

という視点を持つことが、

より本質的なアプローチにつながると考えられます。

足指への3つのアプローチ

外反母趾・内反小趾・屈み指・浮き指・寝指。

足指の問題というより

筋肉が使われなくなった結果

として固定化した状態です。

足指の筋肉が働く条件は、

・動かせる

・働ける

・使われ続ける

この3つ。

そこから導かれるアプローチが、

以下の3つです。

1. ひろのば体操

足指を、広げて、伸ばし、動ける状態に戻す。

筋肉を鍛えるためではなく、本来の動きを発揮できる準備を整えるためのアプローチです。

2. YOSHIRO SOCKS

YOSHIRO SOCKSは、靴下という形をした、もうひとつの筋肉です。

足指・足底の筋肉の仕事を、張力と立体構造によって、薄く一体化して引き受ける構造体です。

3. 小股歩き

立つ。歩く。動く。

そのすべてが、足指を使い続けるための時間になります。

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