【医療監修】前脛骨筋と足指の関係から考える、転倒予防と身体パフォーマンスの基礎知識

はじめに|転倒は「筋力低下」だけの問題ではない
こんにちは、足指研究家の湯浅慶朗です。
転倒は、中高年者や高齢者にとって深刻な健康リスクのひとつです。
骨折や入院、要介護状態につながるケースも多く、生活の質(QOL)を大きく左右します。
転倒予防というと、
・筋力を鍛える
・バランス練習をする
・体幹トレーニングを行う
といった対策が一般的ですが、
臨床現場では 筋力だけでは説明できない転倒 が数多く見られます。
その背景にある重要な筋肉のひとつが、前脛骨筋です。
本記事では、
・前脛骨筋の役割
・足指との関係
・なぜ環境が重要なのか
を、教育的な視点から整理します。
前脛骨筋とは何をする筋肉か
前脛骨筋は、すねの前面に位置する筋肉で、主に
・足関節の背屈(つま先を上げる)
・歩行中のつまずき防止
・着地時の足首の安定
に関与しています。
特に歩行中、前脛骨筋は
「足を前に出したときに、つま先が地面に引っかからないようにする」
という重要な役割を担っています。
この機能が低下すると、
・段差につまずきやすい
・足先が引きずられる
・歩行が不安定になる
といった変化が起こります。
前脛骨筋の問題は「筋力」だけではない
前脛骨筋がうまく働かない状態を、
単純に「筋力低下」と捉えてしまうと、本質を見失います。
なぜなら、前脛骨筋は
・単独で働く筋肉ではない
・足指・足底・足関節と連動して機能する
からです。
実際には、
・筋力はあるのに働きにくい
・意識しても力が入りにくい
といったケースも多く見られます。
これは 筋肉そのものより、使われる条件の問題 である可能性が高いのです。
足指と前脛骨筋は、なぜ関係するのか
前脛骨筋の働きは、足指の状態と密接に関係しています。
足指が、
・地面を捉えている
・広がり、伸びている
・接地の感覚が入っている
こうした状態では、
足底からの感覚入力が安定します。
すると身体は、
「ここは支えられる」
と判断し、
足関節や下腿の筋肉を安全に使える状態と認識します。
その結果、前脛骨筋は無理なく働きやすくなります。
足指が使われないと、何が起こるのか
逆に、
・浮き指
・屈み指
・寝指
・外反母趾
・内反小趾
・足の中で滑る状態
などがあると、足指は支持装置として機能しにくくなります。
この状態では、
・足底感覚が不安定
・重心位置が把握しにくい
・身体が「不安定」と判断する
ため、前脛骨筋を含む筋出力が無意識に抑制されます。
これは「弱い」のではなく、
安全装置として出力が制限されている状態
と考える方が適切です。
Hand-standing理論から見る前脛骨筋の役割
この構造は、Hand-standing理論で説明できます。
逆立ちを想像してみてください。

・手のひらや指が床を捉えていない
・滑っている
この状態では、
肩や体幹に力があっても、安定して身体を支えることはできません。
一方で、
・手指が床を面で捉え
・「支えられている」感覚が入る
と、
上半身の出力は自然と引き出されます。
足も同じです。
末端(足指・足底)が安定してはじめて、
前脛骨筋や下腿の筋肉は本来の働きを発揮できるのです。
これはトレーニング以前の「条件」の話

重要なのは、ここで語っているのは
・筋トレの方法
・回数や負荷
ではないという点です。
前脛骨筋が働くかどうかは、
「どんな条件で身体を使っているか」
に大きく左右されます。
つまり、
・足指が使われる環境か
・接地感覚が遮断されていないか
という前提条件が整っていなければ、
筋肉はうまく使われません。
転倒予防と身体教育の視点
転倒予防を考えるとき、
「どの筋肉を鍛えるか」
よりも、
「身体がどう使われているか」
を理解することが重要です。
前脛骨筋は、
・鍛えれば働く筋肉
ではなく、
・条件が整えば働く筋肉
です。
この視点は、
・転倒予防
・歩行の安定
・姿勢制御
・スポーツ動作
すべてに共通する基礎となります。
まとめ|前脛骨筋は「教育すべき筋肉」である
前脛骨筋の働きは、
・足指
・足底
・接地環境
と切り離して考えることはできません。
筋力だけを見るのではなく、
「身体がどう判断しているか」
という視点を持つことで、
転倒や不安定さの本質が見えてきます。
足元から身体を理解することは、
安全に動ける身体を育てるための、最も基本的な教育です。


