足指の解剖学入門⑧ 虫様筋とは?

足指ドクターによる解説

YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗

足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(7万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。日本で初めて「足指外来」を設立。

目次

はじめに

虫様筋の名前の由来は、その形状が細くて長い虫のように見えることからきています。ラテン語の「lumbricus」という言葉が元となり、「虫のような」という意味で「虫様筋」と呼ばれています。虫様筋はマイナーな筋肉ですが、しっかり踏ん張るための重要な筋肉で、スポーツでもカラダの動きを細かく調整するための重要な役割があります。この記事では、足の虫様筋について詳しく解説します。

虫様筋とは?

虫様筋(ちゅうようきん、Lumbrical muscles)は、手や足の指にある小さな筋肉群で、指の動きを細かく調整する重要な役割を果たしています。

豆知識

筋肉は基本的に、収縮する(ちぢむ)ことで関節を動かしています。虫様筋は、「足裏の腱」と「足指の根もと」にくっついている筋肉。わかりやすく言えば、足裏のほうから筋肉を引っ張ることで足指を曲げる動作を行います。

どこにあるの?

起始(きし):足の裏
停止(ていし):第2から第5の指の根もと

専門家向け

【起始】

深部屈筋腱。この腱は足の裏側を走り、第2から第5の指まで延びています。

【停止】

各指の基節骨および背側腱膜

【作用】

第2-5指の基節骨の屈曲

つまり、この筋肉は足指に付着していますよ、ということです。

どんな役割をしているの?

指の屈曲(くっきょく): 虫様筋は、中足趾節(MP)関節(Metatarsophalangeal joints)を曲げるのを助けます。

指の伸展(しんてん):同時に、指の中間(PIP)関節末端(DIP)関節(近位趾間関節と遠位趾間関節、Proximal and Distal Interphalangeal joints)を伸ばすのを助けます。

くし、転倒を防ぐ役割もあります。

なぜ大切なの?

虫様筋は主に物をつかむような動きをするので、立ったり歩いたりするときに地面をしっかり踏みしめるという役割があります。私たちのカラダは常に重心がグラグラと動いているので、バランスよく立つ・歩く・走る・ジャンプするためには重要な筋肉なのです。

歩行のサポート:歩くときに足の指を使って地面をしっかりと踏みしめるのを助けます。
バランスの維持:立っているときや歩いているときに足の指のバランスを取るのに重要です。
足の健康の維持:足の指の正常な動きを保つことで、足の疲れや痛みを予防します。

簡単にまとめると

虫様筋の場所:足の外側
主な役割:指の付け根を曲げ、中間関節と末端関節を伸ばす
重要性:足の指の細かい動きをコントロールし、バランスを取る

これらの役割により、虫様筋は日常生活での足の動きやバランスに欠かせない重要な筋肉で、転びにくくなります。

虫様筋の筋力低下

靴や靴下の中で足が滑ると、虫様筋の筋力が低下し、いくつかの足の問題や不調が発生する可能性があります。

指がうまく曲がらない

虫様筋が弱くなると、足の指をうまく曲げたり伸ばしたりすることが難しくなります。これにより、歩くときに地面をしっかり踏むことができなくなります。

バランスが取りにくくなる

虫様筋が弱くなると、立ったり歩いたりする時に足の指でバランスを取るのが難しくなります。これにより、転びやすくなります。

足が疲れやすくなる

虫様筋が弱くなると、足の指をしっかり使えなくなるため、他の部分に余計な力がかかります。これにより、足が疲れやすくなり、長い時間歩いたり立っていたりすると足が痛くなることがあります。

歩きにくくなる

虫様筋が正常に機能しないと、歩くときに足の指をうまく使えなくなるため、歩行が不安定になります。これにより、スムーズに歩けなくなります。

階段を上るのが大変になる

虫様筋が弱くなると、階段を上るときに足の指で力を入れるのが難しくなります。これにより、階段を上るのが大変になり、疲れやすくなります。

足の指が変形する

虫様筋が弱くなると、足の指が変形しやすくなります。例えば、指が曲がったまま固まってしまう「ハンマートゥ」や、屈み指により足の筋力が落ちれば「外反母趾(がいはんぼし)」などの問題が起こることがあります。

姿勢が悪くなる

虫様筋が正常に機能しないと、かかと重心→骨盤の前傾・後傾→猫背・反り腰→ストレートネック→口呼吸・低位舌・顎関節症などに移行します。

虫様筋の過緊張が「屈み指」の原因

靴下や靴の中で足が滑るようになると、足指を曲げて滑らないように踏ん張ろうとします。これが長時間・長期間繰り返されると、ずっと足指を屈めた状態になるため、虫様筋が過緊張状態となり、筋肉が短縮することもあります。これが虫様筋の筋力が落ちる原因です。

屈み指のままでは、歩く時に足指がうまく使えていない状態。筋肉を鍛える前に、適切に足指が使えるように「ひろのば体操」や「YOSHIRO SOCKS」で足指をまっすぐにして鍛えると効率的です。

筋肉を鍛えるには、この筋肉がどこに付着しているかを知ることです。「足裏と足指」に付着しているので、足指の曲げ伸ばしをすることで鍛えることができる筋肉ということです。つまりは、歩く時に足指でしっかりと地面を蹴って、踵着地の時につま先がしっかりと上がっていること。1日6,000歩ほど歩けば、片足3,000回のトレーニングになります。

セルフチェック

虫様筋の筋力や機能が落ちると、足の筋肉が思うようにつかなくなります。まずはグーとパーができるかチェックを行いましょう。

グー(虫様筋の筋力チェック)

虫様筋の筋力が落ちていない人は、足指の「グー」がスムーズにできます。小指がしっかり握れていない場合には、虫様筋の筋力が低下していると思ってください。

小指の第3関節までしっかり曲がるかチェック

パー(虫様筋の機能チェック)

虫様筋の機能不全になると、足指の「パー」がスムーズにできなくなります。PIP関節・DIP関節がしっかり伸びない場合には、虫様筋の機能が低下していると思ってください。

全ての指が広がるかチェック

虫様筋のエクササイズ

ひろのば体操

虫様筋の筋力低下や機能不全になったら「伸ばす」ことが大切です。そのために「ひろのば体操」というものを開発していまいます。「ここの筋肉を伸ばしているんだな」と意識することで、より効果的にストレッチを行うことができます。1日1回5分を目安にやってみましょう。

ひろのば体操の正しいやり方

YOSHIRO SOCKS

足指や足部の骨格を本来の形状に戻すことで、足裏や足背の筋肉を正常に働かせるために開発したものです。虫様筋の筋力低下や機能不全で足指がひらきにくくなっても、本来の足指の形に戻すように作られています。

足指の変形、カラダの歪み、歩行が不安定なのは、靴よりも靴下の影響のほうが大きいため、まずは靴下を変えることをお勧めします。

定期チェック

ひろのば体操を行ったら、定期的に「グー」と「チョキ」をやってみましょう。この筋肉が伸びれば伸びるほど、スムーズに行えるようになるのがわかると思います。

この記事を書いた人

湯浅慶朗のアバター 湯浅慶朗 ひろのば体操の開発者

足指研究の第一人者。理学療法士。病院理事・副院長も歴任。東京大学・国際医療福祉大学と研究を行う。テレビ出演は『NHKガッテン』『NHK BS 美と若さの新常識』『NHK サキどり』『ガイアの夜明け』ほか多数出演、著書は『たった5分の「足指つかみ」で腰も背中も一生まがらない!』(PHP出版)など多数。ハルメクとオシャレな矯正靴を共同開発しています。

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