【医療監修】足指の解剖学入門⑧ 虫様筋 ― 屈み指・浮き指を防ぐ“足指コントロール筋”

はじめに|虫様筋は「踏ん張る筋肉」ではない
こんにちは、足指研究家の湯浅慶朗です。
虫様筋という名前は、その細く長い形が虫に似ていることから名づけられました。
ラテン語の lumbricus(虫のような)に由来します。
一見すると目立たないこの筋肉ですが、
虫様筋は 「強く踏ん張る」ための筋肉ではありません。
むしろ虫様筋は、
- 足指が 床に触れ続けながら
- 余計な力を入れすぎず
- バランスを微調整する
ための “制御役” に近い存在です。
立つ・歩く・方向転換するといった日常動作の中で、
足指が「固まりすぎず、抜けすぎず」働くために欠かせない筋肉でもあります。
虫様筋とは?

虫様筋(Lumbrical muscles)は、
足の第2趾〜第5趾に存在する小さな筋肉群です。
特徴的なのは、
- 骨からではなく
- 足裏を走る腱から始まり
- 指の付け根から背側へ回り込む
という、少し変わった走行をしている点です。
筋肉は基本的に「縮む」ことで関節を動かしますが、
虫様筋は 単純に曲げる・伸ばすだけの筋肉ではありません。
足指の関節同士の動きを同時にコントロールする役割を持っています。
どこにあるの?
- 起始:深指屈筋腱(足裏を走る腱)
- 停止:第2〜第5趾の基節骨および背側腱膜
作用の特徴
- 指の付け根(MP関節)を軽く曲げる
- 同時に
- PIP関節
- DIP関節 を伸ばす
つまり虫様筋は、
「指を丸め込まず、接地したまま安定させる」
ための筋肉です。
虫様筋の役割|“掴む”より“整える”
虫様筋の働きは、よく「物をつかむ筋肉」と表現されますが、
足においては少し意味が異なります。
虫様筋の主な役割は、
- 足指が 床から離れないように保つ
- 指が 屈みすぎないように制御する
- 重心移動に合わせて 微調整を行う
ことです。


私たちの身体は、立っているだけでも常に揺れています。
その揺れを足指レベルで吸収しているのが虫様筋です。
なぜ虫様筋が大切なのか
虫様筋が正常に働いていると、
- 歩行中、指が自然に接地する
- 足指が固まらず、反応が早い
- 転倒しそうなときに立て直しやすい
といった特徴がみられます。

逆に言えば、
虫様筋は「動作の安全装置」
とも言えます。
Hand-Standing理論との接続|虫様筋は「接地を保つための制御筋」
ここまで読むと分かる通り、
虫様筋は「強く踏ん張る筋肉」ではありません。
では、なぜこれほど重要なのでしょうか。
私は足の構造を
「逆さまに置かれた手」
として捉えています。
これが Hand-Standing理論 です。
手を思い浮かべてみてください。
物を持つとき、
- 強く握る力
- 指先で位置を微調整する力
この両方が必要です。
もし指が力みすぎれば、
物は滑り落ちやすくなります。
逆に、力が抜けすぎても、
物は安定して持てません。
足もまったく同じ構造です。
足は
体重を支えるために地面に置かれた手
と考えると、理解しやすくなります。
虫様筋は「地面から離れないための筋肉」
Hand-Standing理論では、
- 親指・指先:支点
- 足底:掌
- 地面反力:物を持つときの反力
として捉えます。
この中で虫様筋が担うのは、
「足指が床から離れず、必要以上に力まないよう制御する役割」
です。
短母趾屈筋や短趾屈筋が
「つかむ力」だとすれば、
虫様筋は
その力を“出しすぎないように調整する筋肉”
にあたります。
虫様筋が働かないと、なぜ不安定になるのか
虫様筋の制御が失われると、
- 指が過剰に曲がる(屈み指)
- 指が浮く(浮き指)
- 接地が点になる
という状態になります。
これは、
「力が弱い」からではありません。
接地を保つための制御が失われている
という構造の問題です。
その結果、
- 重心が不安定になる
- バランス修正が遅れる
- 転倒しやすくなる
といった変化が起こります。
外反母趾・浮き指との関係も説明できる
虫様筋が働かず、
指が床に触れ続けられなくなると、
- 親指・小指が支点として使えない
- 前足部が広がる
- 指の位置が崩れる
という流れが生まれます。
外反母趾・内反小趾・浮き指・屈み指は、
虫様筋を含む「制御筋群」が働けなくなった結果
として説明できます。
虫様筋の機能低下で起こりやすいこと
虫様筋の働きが低下すると、次のような変化が起こりやすくなります。
- 足指が床を捉えにくい
- バランスが不安定になる
- 歩行がぎこちなくなる
- 階段や段差でつまずきやすい
また、虫様筋がうまく働かない状態が続くと、
といった足指変形と関連するケースも多くみられます。
虫様筋は「弱る」より「固まる」
虫様筋の問題で多いのは、
単純な筋力低下ではありません。
靴や靴下の中で足が滑ると、
- 指を曲げて踏ん張る
- その状態が長時間続く
という状況が生まれます。
これにより、
- 虫様筋が過緊張
- 短縮したまま固まる
- 正しい関節運動ができなくなる
という流れが起こります。
結果として「屈み指」のような状態が固定化されていきます。
セルフチェック|虫様筋は「グー」と「パー」
グー(筋力・協調性チェック)
- 足指をしっかり握れるか
- 特に小指まで使えているか
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小指が浮く・逃げる場合、
虫様筋の協調性低下が疑われます。
パー(機能チェック)
- 指が自然に広がるか
- PIP・DIP関節が伸びるか
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指先だけが反り、途中が曲がったままの場合、
虫様筋の機能低下が考えられます。
虫様筋へのアプローチ|まず「伸ばす」
虫様筋は、
- 鍛える前に
- 緊張を抜くこと
が重要です。
そのために行うのが「ひろのば体操」です。
足指を広げ、伸ばすことで、
- 屈みすぎた指
- 固まった関節
- 過緊張した虫様筋
をゆるやかに解放していきます。
1日1回、5分を目安に行いましょう。
▶ ひろのば体操の正しいやり方
環境づくりという視点
虫様筋が働きにくくなる背景には、
- 滑りやすい靴下
- かかとの緩い靴
- 床環境
といった「足元の環境」が大きく関わります。
足指の形や配置を妨げにくい環境を整えることで、
虫様筋は本来の役割を発揮しやすくなります。
定期チェックを忘れずに
ひろのば体操を続けたら、
- グー
- パー
を定期的に確認してみてください。
動きが滑らかになってくると、
虫様筋が「力ではなく制御」として働き始めているサインです。


