【医療監修】足指の解剖学入門⑥ 母趾外転筋とは?外反母趾と足指再教育の関係を解剖学で解説

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はじめに|「鍛えれば治る筋肉」ではない

こんにちは、足指研究家の湯浅慶朗です。

外反母趾と聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべる筋肉が

母趾外転筋です。

しかし私は、自身が外反母趾だった経験も含めて、

はっきりと感じています。

母趾外転筋を鍛えたからといって、

外反母趾が元に戻るわけではありません。

それでもなお、

私が足指の再教育において

最優先で機能を取り戻したい筋肉

この母趾外転筋です。

この筋肉が「使える状態」に戻るかどうかで、

足指再教育のゴールまでの距離は大きく変わります。

今日は、

足底第1層に存在する母趾外転筋を、

  • なぜ誤解されやすいのか
  • それでもなぜ重要なのか

という2つの視点から解説します。

母趾外転筋とは?

母趾外転筋(Abductor Hallucis)は、

足の親指(母趾)を外側へ開くための筋肉です。

足指の動きで言えば「パー」に関与し、

足の内側に位置しながら、

  • 親指の位置制御
  • 内側縦アーチの支持

という二つの役割を担っています。

豆知識

母趾外転筋は、

  • 親指の付け根

を結ぶ筋肉です。

つまり、

踵で受けた荷重を、親指へ伝える橋渡し役

でもあります。

どこにあるの?

  • 起始:踵骨(踵骨隆起内側)
  • 停止:母指基節骨底・第1中足骨頭下の種子骨

主な作用

  • 母趾の外転
  • 母趾の屈曲
  • 内側縦アーチの保持

この筋肉は、

「親指を動かす筋肉」であると同時に、

足の内側構造を支える筋肉です。

母趾外転筋の本当の役割

母趾外転筋の役割は、

単に「親指を外に開くこと」ではありません。

重要なのは、

  • 歩行中
  • 立位中

に、

親指が“地面と安定して接触できる状態”をつくることです。

歩行での役割

  • Mid-Stance期
  • Toe-Off期

において、

親指が地面を押せるかどうかは、

推進力・安定性・重心制御に直結します。

なぜ母趾外転筋が重要なのか

母趾外転筋が使えなくなると、

  • 親指が地面を捉えられない
  • 推進力が低下する
  • 疲れやすくなる

だけでは終わりません。

体重が 内側へ流れすぎる ことで、

回内足 → X脚傾向 → 骨盤の偏り → 脊柱の代償 → 肩・首・顎への負担

という構造的連鎖が生まれます。

これは「理論上の話」ではなく、

母趾外転筋が使えない足に

非常に共通して見られる傾向です。

Hand-Standing理論との接続|親指は「内側の支点」である

ここまでの話を、

構造として一本につなぐ視点があります。

それが Hand-Standing理論 です。

私は足を

「地面に置かれた逆さまの手」

として捉えています。

手で物を持つとき、

  • 親指が支点になり
  • 他の指が力を調整する

ことで、安定した操作が可能になります。

足も同じです。

母趾外転筋は「内側支点を作る筋肉」

Hand-Standing理論では、

  • 親指側:内側の支点
  • 小指側:外側の支点

という二つの支点で、

足は地面反力を受け止めます。

このとき母趾外転筋は、

踵で受けた荷重を親指で“面として”受け止めるための筋肉

です。

母趾外転筋が働くことで、

  • 親指が地面に残る
  • 接地が点にならない
  • 推進力が安定する

という構造が成立します。

母趾外転筋が止まる=内側支点が消える

母趾外転筋が使えなくなると、

  • 親指が接地できない
  • 内側支点が消える
  • 荷重が一気に内側へ流れる

という状態になります。

これは

筋力不足ではありません。

Hand-Standing構造において

内側支点が失われている

という、構造の問題です。

その結果として、

回内足→X脚傾向→骨盤の偏り→脊柱の代償

が連鎖的に起こります。

「鍛えれば治る」という誤解の正体

母趾外転筋が誤解されやすい理由は、

  • 支点筋なのに
  • 動作筋として扱われてきた

からです。

支点は

力で作るものではなく、

位置と接地で作るものです。

だからこそ母趾外転筋は、

鍛える前に

“使える構造”に戻す必要がある

のです。

母趾外転筋は「弱る」のではなく「固まる」

多くのケースで問題となるのは、

筋力不足ではありません。

靴や靴下の中で足が滑ると、

  • 指を曲げて踏ん張る
  • 指を広げる余裕がなくなる

この状態が続き、

  • 母趾外転筋は過緊張
  • 動かなくなる
  • 結果として機能不全に陥る

という流れが起こります。

つまり母趾外転筋は、

鍛える前に「動ける状態」に戻す必要がある筋肉なのです。

「外反母趾=母趾外転筋が弱い」は正しくない

外反母趾では、

  • 横アーチの崩れ
  • 骨間筋の機能低下
  • 母指内転筋の伸長

など、

複数の筋バランスの破綻が起きています。

母趾外転筋だけを鍛えても、

環境と構造が変わらなければ、

足指は再び使えなくなります。

再教育という考え方

重要なのは、

  • 正しく広がる
  • 正しく接地する
  • 正しいタイミングで使われる

という「再教育」です。

その第一歩として行うのが

ひろのば体操です。

▶ ひろのば体操の正しいやり方

セルフチェック|母趾外転筋は「パー」で見る

  • グー:力が入るか
  • パー:自然に開くか

パーができない場合、

母趾外転筋は「働けない状態」にあります。

環境を変えなければ戻らない

母趾外転筋は、

環境の影響を非常に受けやすい筋肉です。

この環境では、

どれだけ体操をしても再び固まります。

定期チェックを習慣に

ひろのば体操を行いながら、

  • グー
  • パー

を定期的に確認してください。

親指が自然に開くようになってきたら、

足は「使える状態」に戻り始めています。

足指への3つのアプローチ

— ただし、順番があります

私は2006年以降、病院における臨床の場で、体操・靴下・歩き方・靴の指導を中心に、足指の変形や機能不全、そしてそれに関連する整形外科的な不調に対する対応を行ってきました。

外反母趾、内反小趾、かがみ指、浮き指、寝指、足趾機能不全に加え、膝・腰・股関節・姿勢といった問題についても、足指からの介入を軸に経過を観察してきた臨床の積み重ねがあります。

これは理論だけの話ではありません。長年にわたる臨床数と経過、データの蓄積の中で、「動かす・保つ・使い続ける」という視点が共通して重要であることが整理されてきました。

その結果として、ここで紹介しているひろのば体操・YOSHIRO SOCKS・YOSHIRO WALKという3つのアプローチに集約されています。

1. ひろのば体操

足指を「動かして」広げて伸ばす

ひろのば体操は、足趾機能不全によって低下しやすい足指の可動性や感覚入力を取り戻し、足指が本来の動きを発揮しやすい状態をつくることを目的に考案された体操です。

外反母趾・内反小趾・屈み指・浮き指・寝指など、足指がうまく使われにくくなっている状態に対して、日常で取り入れやすいアプローチの一つです。

2. YOSHIRO SOCKS

広がって伸びた足指を「保ち続ける条件」をつくる

YOSHIRO SOCKSは、足の中で起こりやすい「滑り」「指の押し込み」「アーチの崩れ」といった足元環境のストレスに着目し、

  • 足指が広がりやすい
  • 足指が伸びやすい
  • 足裏のアーチが保たれやすい

足元環境を整えることを目的に設計された靴下です。外反母趾・内反小趾・屈み指・浮き指・寝指・足趾機能不全など、足指の使われ方が関与するケースで検討される選択肢の一つです。

3. 小股歩き

日常動作の中で、足指が“使われ続ける”状態をつくる

小股歩きは、歩幅を抑えることで足指を感じながら地面を捉えやすくする歩き方です。

体操や足元環境の見直しと組み合わせることで、足指に関わる筋活動が起こりやすい条件をつくる考え方として紹介しています。

無理なく続けられる形を選んでください

・体操から始める人

・足元環境から見直す人

・両方を組み合わせる人

どれか一つに決める必要はありません。足指の問題は、方法よりも「続けられる条件」が大切です。


まず迷っている方へ

— どれから始めるか迷ったら、ここを基準にしてください —

  • 体操が続かなかった人
  • 歩き方を意識する余裕がない人
  • 靴をすぐに変えられない人

この場合は、

② YOSHIRO SOCKS(足元環境を整える) から始めるのが現実的です。

足指は「動かす前に、使われる環境」が整わないと戻りやすいため、

まずは日常の中で 足指が使われにくい状態を減らす ことが優先されます。


すでに体操ができている方へ

① ひろのば体操 + ② YOSHIRO SOCKS

動かした足指を、そのまま保てる条件が重なることで、

足指が使われやすい状態が続きやすくなります。


余裕が出てきた方へ

③ 小股歩き を組み合わせることで、 日常動作の中でも足指が“使われ続ける”条件が整っていきます。

※どれか一つを「完璧にやる」必要はありません。

足指の問題で大切なのは、無理なく続けられる順番を選ぶことです。

次に知りたいことを選んでください

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