足指の解剖学入門② 長母趾伸筋・長趾伸筋とは?

足指ドクターによる解説

YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗

足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(7万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。日本で初めて「足指外来」を設立。

目次

はじめに

足指の解剖学①では、ざっくりと足の筋肉を紹介しました。興味がないと覚える気にもなりませんが、それぞれの筋肉が全身とどのように関連しているかを知ると、自然と頭の中に入っていきます。今日は長母指伸筋と長指伸筋について説明していきたいと思います。

浮き指になると、硬くなる筋肉ですね。スリッパ・サンダル・草履・下駄・長靴・クロックスを日頃から長時間履いている人は、この部分の筋肉が短くなったり硬くなるので要注意です。

長母指伸筋とは?

長母指伸筋(ちょうぼししんきん)は、私たちのふくらはぎにある筋肉の一つです。この筋肉は足の親指を持ち上げる役割をしています。たとえば、歩いているときに親指を上に向けて持ち上げるのを手伝ってくれるのが、この長母指伸筋です。

どこにあるの?

  • どこから始まるか: この筋肉は、ふくらはぎの骨の中間から始まります。
  • どこで終わるか: 足の親指の根元の骨につながっています。
専門家向け

【起始】

下腿骨間膜、腓骨内側面中央

【停止】

趾の趾背腱膜、末節骨底、基節骨底

【作用】

第1趾伸展、足関節背屈

つまり、この筋肉は足指に付着していますよ、ということです。

どんな役割をしているの?

長母指伸筋のお仕事は、親指を上に持ち上げることです。

なぜ大切なの?

歩く時に親指が持ち上げられなかったら、つまずきやすくなったりすることがあります。また、この筋肉が硬くなってしまうと「浮き指」になり、指が上に上がったままになるため、地面を蹴る力が弱くなってしまいます。

長指伸筋とは?

長指伸筋(ちょうししんきん)は、私たちの足にある筋肉の一つで、足の指(親指以外の4つの指)を上に持ち上げる働きをします。この筋肉があるおかげで、歩くときにスムーズに足を動かすことができます。

長指伸筋がどこにあるか

  • 位置: この筋肉はふくらはぎの前面にあります。
  • 始まる場所:足のすねの骨から始まります。
  • 終わる場所:足の小指から人差し指までの指の根元につながっています。
専門家向け

【起始】

脛骨外側顆、腓骨前縁、下腿骨間膜、下腿筋膜

【停止】

4本の腱に分かれ、第2〜5趾の趾背腱膜及び末節骨底

【作用】

第2〜5趾伸展、足関節背屈、足部の外返し

つまり、この筋肉も足指に付着していますよ、ということです。

長指伸筋がどんな役割をするか

長指伸筋のお仕事は、第2〜5指を上に持ち上げることです。

なぜ大切なの?

歩く時に指が持ち上げられなかったら、つまずきやすくなったりすることがあります。また、この筋肉が硬くなってしまうと「浮き指」になり、指が上に上がったままになるため、地面を蹴る力が弱くなってしまいます。

長母趾伸筋・長趾伸筋の短縮

この2つの筋肉は、浮き指になると短縮して(硬くなって)しまいます。

親指の浮き指

長母指伸筋の短縮は、親指の浮き指を誘発し、親指で地面をしっかりと押さえることができず、バランスを保ちにくくなったり、足が内側に倒れやすくなります。

回内足→X脚→骨盤後傾→猫背→ストレートネック→上気道閉塞・口呼吸・低位舌・睡眠時無呼吸症候群などの症状が現れるようになります。(歯科分野では顎関節症、過蓋咬合、反対咬合、オープンバイトなど)

2〜4指の浮き指

長指伸筋の短縮は、2〜4指の浮き指を誘発し、指で地面をしっかりと蹴ることができないため、前に進むための推進力を得ることができないため、すり足になったり、ふくらはぎの筋肉が硬くなってアキレス腱断裂・血流障害(冷えやむくみや静脈瘤)を起こしたり、太ももの筋肉が太くなったりします。

・かかと重心→骨盤前傾・後傾→猫背・反り腰→ストレートネック→etc(省略)
・浮き指→足部の筋力低下→扁平足・開帳足→外反母趾・内反小趾→etc(省略)

小指の浮き指

長指伸筋の短縮は、小指の浮き指を誘発し、小指で地面をしっかりと押さえることができず、バランスを保ちにくくなったり、足が外側に倒れやすくなります。

回外足→X脚→骨盤前傾→反り腰→ストレートネック→上気道閉塞・口呼吸・低位舌・睡眠時無呼吸症候群などの症状が現れるようになります。(歯科分野では顎関節症、過蓋咬合、反対咬合、オープンバイトなど)

セルフチェック

屈み指や浮き指になると、長母指伸筋・長指伸筋が常に緊張した状態になるので、筋肉が短くなり、思うように動かせなくなります。まずはチョキとグーができるかチェックを行いましょう。

チョキ

長母指伸筋が正常に機能している人は、足指の「チョキ」がスムーズにできます。もしこれができない場合には、長母指伸筋の機能が低下していると思ってください。

親指と人差し指で指パッチンができるかチェック

グー

長指伸筋が正常に機能している人は、足指の「グー」がスムーズにできます。もしこれができない場合には、長指伸筋の機能が低下していると思ってください。

第3関節までしっかり曲がるかチェック

 

どうでしたか?

足指に付着している筋肉というのは、歩く時に適切に使われていなければ、徐々に筋力が落ちていきます。この筋肉の場合には、歩く時のTOE OFF(つま先離地)〜HEEL CONTACT(踵接地)という時期に、つま先が地面に引っかからないようにするために、つま先を上に上げる働きがあります。

「指が上がったままであればつまづかないよね」という発想で作られた靴下もありますが、それだと今度はふらついた時に「踏ん張る力」がなくなります。「つまづかないけど転んでしまう」という現象です。それに指が上がったままだと、地面を蹴る力が弱くなるので、前に進むための推進力が落ちてすり足になるので、疲れやすくなったり、姿勢が悪くなったりします。

最終的には、整形疾患の様々な原因になるので、「ひろのば体操」やYOSHIRO SOCKSで、適切に長母指伸筋と長指伸筋が使えるようにすることが大切です。

長母趾伸筋・長趾伸筋のエクササイズ

ひろのば体操

長母趾伸筋・長趾伸筋が硬くなったら「伸ばす」ことが大切です。そのために「ひろのば体操」というものを開発していまいます。「ここの筋肉を伸ばしているんだな」と意識することで、より効果的にストレッチを行うことができます。1日1回5分を目安にやってみましょう。

ひろのば体操の正しいやり方

YOSHIRO SOCKS

足指や足部の骨格を本来の形状に戻すことで、足裏や足背の筋肉を正常に働かせるために開発したものです。長母趾伸筋・長趾伸筋が硬くなっても、本来の筋肉の柔らかさに戻すように作られています。

足指の変形、カラダの歪み、歩行が不安定なのは、靴よりも靴下の影響のほうが大きいため、まずは靴下を変えることをお勧めします。

定期チェック

ひろのば体操を行ったら、定期的に「グー」と「チョキ」をやってみましょう。この筋肉が伸びれば伸びるほど、スムーズに行えるようになるのがわかると思います。

この記事を書いた人

湯浅慶朗のアバター 湯浅慶朗 ひろのば体操の開発者

足指研究の第一人者。理学療法士。病院理事・副院長も歴任。東京大学・国際医療福祉大学と研究を行う。テレビ出演は『NHKガッテン』『NHK BS 美と若さの新常識』『NHK サキどり』『ガイアの夜明け』ほか多数出演、著書は『たった5分の「足指つかみ」で腰も背中も一生まがらない!』(PHP出版)など多数。ハルメクとオシャレな矯正靴を共同開発しています。

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