足指の解剖学入門④ 底側骨間筋・背側骨間筋とは?

足指ドクターによる解説

YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗

足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(7万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。日本で初めて「足指外来」を設立。

目次

はじめに

「どうして足指しか触っていないのに、整形疾患が全部治っちゃうの?」と不思議に思う医師や理学療法士の方は少なくありません。これまで解剖学的に解明されていなかったこと、教科書には記載されていないこと、論文もない、ということが影響しています。

私が足指の研究をはじめたのが2006年。その当時は、医師も理学療法士も患者さんでさえも、足指の話をすると笑われていた時代。それでも答えは足指にあると思い、必死に患者さんの足を見て、触って、試行錯誤を繰り返してきました。そして色々な疾患の患者さんが治るようになって、理論を体系化させたことで、テレビや雑誌の取材が舞い込むようになり、2014年ごろより医療機関でも足指のことを取り入れた外来が設置されるようになりました。

さて、足や足指の構造は非常に複雑で、多くの筋肉が協力して全身の動きを生み出しています。その中でも、底側骨間筋(ていそくこつかんきん)と背側骨間筋(はいそくこつかんきん)は、足の内在筋として重要な役割を果たしています。また、これらの筋肉が適切に機能することで、足のアーチと指の位置が維持され、開帳足や外反母趾のリスクが軽減されます。したがって、底側骨間筋や背側骨間筋の筋力低下は、これらの足の問題の一因となる可能性があるため、これらの筋肉を強化することが重要です。

底側骨間筋とは?

底側骨間筋(ていそくこつかんきん、plantar interossei)は、足の裏にある小さな筋肉です。足の指を動かしたり、アーチを維持すためにとても大事な筋肉です。

どこにあるの?

底側骨間筋は、足の裏側にある筋肉で、第3、4、5の足の指に関わっています。

底側骨間筋は、第3、4、5の中足骨(ちゅうそくこつ)の内側面から始まります。中足骨は、足の甲にある骨です。底側骨間筋は、それぞれ第3、4、5の足の指の基節骨(きせつこつ)の内側面につながっています。基節骨は、足の指のつけ根の骨です。

専門家向け

【起始】

底側骨間筋は、第3、4、5中足骨(metatarsal bones)の内側面から起始します。

【停止】

各底側骨間筋は、対応する第3、4、5趾の基節骨(proximal phalanges)の内側面に停止し、さらにこれらの趾の背側腱膜(dorsal digital expansion)にも結びつきます。

【作用】

内転(adduction): 第3、4、5趾を第2趾に向かって内側に引き寄せる。
補助的な屈曲(flexion): 中足趾節関節(metatarsophalangeal joints)の屈曲を補助します。
安定化: 足の横アーチの安定化に寄与し、歩行時や立っている時のバランスを保つのに重要です。

つまり、この筋肉は足指に付着していますよ、ということです。

どんな役割をしているの?

この筋肉の仕事は、足の指を内側に引き寄せることです。例えば、足の指をぎゅっと握ったり、指同士を近づけたりするときに使います。

なぜ大切なの?

底側骨間筋は、足のアーチを支えてくれます。足のアーチは、足の形を保つために大切です。この筋肉がしっかりしていると、歩いたり走ったりするときにバランスを取りやすくなります。

簡単にまとめると

場所: 足の裏
仕事: 足の指を内側に引き寄せる
大事な理由: 足の形を保ち、歩くときや走るときのバランスを助ける

底側骨間筋は、足の横アーチを維持し、足の指を正しい位置に保つために重要な役割を果たします。これにより、歩行やランニング時のバランスと安定性が確保されます。これらの筋肉が適切に機能することで、足の変形や痛みを防ぐことができます。

背側骨間筋とは?

背側骨間筋(はいそくこつかんきん、dorsal interossei)は、足の上側(足の甲)にある小さな筋肉です。足の指を動かしたり、アーチを維持すためにとても大事な筋肉です。

背側骨間筋がどこにあるか

背側骨間筋(はいそくこつかんきん、dorsal interossei)は、足の背側(上側)に位置する小さな筋肉群で、4つの筋肉から成り、各筋肉がそれぞれ第2から第4趾に付着しています。

専門家向け

【起始】

背側骨間筋は、隣接する中足骨(metatarsal bones)の間の2つの側面から起始します。

【停止】

第1背側骨間筋: 第2趾の内側面の基節骨(proximal phalanx)。
第2、3、4背側骨間筋: 第2、3、4趾の外側面の基節骨。

【作用】

外転(abduction): 第2、3、4趾をそれぞれの軸から外側に引き離す動作。
補助的な屈曲(flexion): 中足趾節関節(metatarsophalangeal joints)の屈曲を補助。
安定化: 足の横アーチの安定化に寄与し、特に歩行時やバランス保持時に重要です。

つまり、この筋肉も足指に付着していますよ、ということです。

背側骨間筋がどんな役割をするか

この筋肉の仕事は、足の指を外側に広げることです。例えば、足の指をパーに広げるときに使います。

なぜ大切なの?

背側骨間筋は、足のアーチを支えてくれます。足のアーチは、足の形を保つために大切です。この筋肉がしっかりしていると、歩いたり走ったりするときにバランスを取りやすくなります。

簡単にまとめると

場所: 足の上側(足の甲)
仕事: 足の指を外側に広げる
大事な理由: 足の形を保ち、歩くときや走るときのバランスを助ける

背側骨間筋は、足の健康を守るためにとても大切な筋肉です。毎日たくさん歩いたり走ったりできるのは、この筋肉のおかげです。

底側・背側骨間筋の筋力低下

底側骨間筋(ていそくこつかんきん)と背側骨間筋(はいそくこつかんきん)は、足の指の動きや足のアーチを維持するのに重要な役割を果たしています。これらの筋肉の筋力が低下すると、いくつかの問題が発生する可能性があります。

開帳足(かいちょうそく)

足の横アーチが低下し、足の前部が広がる状態です。骨間筋が弱くなると、足の横アーチを維持する力が不足し、開帳足になりやすくなります。

外反母趾(がいはんぼし)

母趾(足の親指)が外側に曲がり、母趾の基部が内側に突出する状態です。骨間筋が弱くなると、中足骨同士をまっすぐに保つことができなくなり、横アーチが広がります。母趾内転筋が引っ張られるようになり、母趾が外側に引き寄せられ、外反母趾が進行しやすくなります。

・骨間筋の筋力低下→開帳足→外反母趾→内側重心→X脚→骨盤のゆがみ→etc…

内反小趾(ないはんしょうし)

小趾(足の小指)が内側に曲がり、小趾の基部が外側に突出する状態です。骨間筋が弱くなると、中足骨同士をまっすぐに保つことができなくなり、横アーチが広がります。小趾内転筋が引っ張られるようになり、小趾が内側に引き寄せられ、内反小趾が進行しやすくなります。

・骨間筋の筋力低下→開帳足→内反小趾→外側重心→O脚→骨盤のゆがみ→etc…

これらの筋肉が適切に機能することで、足の指が正しい位置に保たれ、外反母趾や内反小趾の変形が防がれます。したがって、これらの筋肉を強化することが外反母趾・内反小趾の予防や改善に役立ちます。

筋肉を鍛えるには、この筋肉がどこに付着しているかを知ることです。「中足骨と足指」に付着しているので、足指の曲げ伸ばしをすることで鍛えることができる筋肉ということです。つまりは、歩く時に足指でしっかりと地面を蹴って、踵着地の時につま先がしっかりと上がっていること。1日6,000歩ほど歩けば、片足3,000回のトレーニングになります。

ただ、浮き指や屈み指のままでは、歩く時に足指がうまく使えていない状態。筋肉を鍛える前に、適切に足指が使えるように「ひろのば体操」や「YOSHIRO SOCKS」で足指の形を整える必要があるのです。

セルフチェック

屈み指や浮き指になると、底側骨間筋・背側骨間筋の筋力が落ちて骨間筋が広がり、筋肉が常に引っ張られている状態になるので、思うように動かせなくなります。まずはグーとパーができるかチェックを行いましょう。

グー(底側骨間筋のチェック)

底側骨間筋が正常に機能している人は、足指の「グー」がスムーズにできます。もしこれができない場合には、底側骨間筋の機能が低下していると思ってください。

第3関節までしっかり曲がるかチェック

パー(背側骨間筋のチェック)

背側骨間筋が正常に機能している人は、足指の「パー」がスムーズにできます。もしこれができない場合には、背側骨間筋の機能が低下していると思ってください。

全ての指が広がるかチェック

底側・背側骨間筋のエクササイズ

ひろのば体操

底側・背側骨間筋が硬くなったら「伸ばす」ことが大切です。そのために「ひろのば体操」というものを開発していまいます。「ここの筋肉を伸ばしているんだな」と意識することで、より効果的にストレッチを行うことができます。1日1回5分を目安にやってみましょう。

ひろのば体操の正しいやり方

YOSHIRO SOCKS

足指や足部の骨格を本来の形状に戻すことで、足裏や足背の筋肉を正常に働かせるために開発したものです。底側・背側骨間筋が硬くなっても、本来の筋肉の柔らかさに戻すように作られています。

足指の変形、カラダの歪み、歩行が不安定なのは、靴よりも靴下の影響のほうが大きいため、まずは靴下を変えることをお勧めします。

定期チェック

ひろのば体操を行ったら、定期的に「グー」と「チョキ」をやってみましょう。この筋肉が伸びれば伸びるほど、スムーズに行えるようになるのがわかると思います。

この記事を書いた人

湯浅慶朗のアバター 湯浅慶朗 ひろのば体操の開発者

足指研究の第一人者。理学療法士。病院理事・副院長も歴任。東京大学・国際医療福祉大学と研究を行う。テレビ出演は『NHKガッテン』『NHK BS 美と若さの新常識』『NHK サキどり』『ガイアの夜明け』ほか多数出演、著書は『たった5分の「足指つかみ」で腰も背中も一生まがらない!』(PHP出版)など多数。ハルメクとオシャレな矯正靴を共同開発しています。

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