足指ドクターによる解説
YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗
足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(7万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。
はじめに
モートン病(Morton’s neuroma)は、足の前部に痛みや不快感を引き起こす一般的な問題として広く知られていますが、神経の圧迫が主な原因であるとされることがあります。しかし、この症状は通常、神経症状(麻痺や感覚障害)を伴うことはなく、屈み指による足背の筋肉の炎症が主な原因とされています。多くの場合、手術をせずに足指のケアを行うことで症状を改善することが可能です。ここでは、モートン病と屈み指の関係、そして効果的なケア方法について詳しく説明します。
モートン病とは?
モートン病は、足の第三および第四中足骨の間に位置する神経が圧迫されることで引き起こされる神経腫です。主な症状には、足の前部や指の間に感じる鋭い痛みや焼けるような感覚が含まれます。この病気は、狭い靴や高いヒール、足のアーチの低下などが原因で発生することがあります。主な症状は以下の通りです。
・足の前部に異物感
・足の前部や指の間に鋭い痛み
・焼けるような感覚やしびれ
・歩行や立っているときに症状が悪化
モートン病の誤解
1. 神経圧迫が原因ではない
従来の理解では、モートン病は足の第三と第四の中足骨の間に位置する神経が圧迫されることによって生じるとされています。しかし、多くの研究や臨床経験から、神経の圧迫が痛みの直接的な原因ではないことが示されています。
日本の研究によると、神経が圧迫されても必ずしも痛みが生じるわけではないことが示されています。例えば、滋賀医科大学の研究では、正常な脊髄神経の圧迫が痛みを生じさせないことが明らかにされています。この研究では、バルーンカテーテルを使用して脊髄神経根を圧迫した場合、触覚異常や感覚鈍麻が誘発されましたが、痛みは誘発されませんでした。
2. 痛みの実際の原因
痛覚受容器がある神経終末は、筋・筋膜、粘膜、靭帯、動脈など、身体中のあらゆる軟部組織に存在します。本当に神経の圧迫であれば、知覚や痛覚が減退し、弛緩や萎縮を伴う筋脱力、腱反射の低下などがあるはずですが、モートン病と診断された方のほとんどに、それらの所見は見られません。神経圧迫による症状は、基本的に痛みではなく麻痺性の病態です。
痛みの原因は、足指の変形や筋肉の不均衡、足のアーチの崩れなど、他の要因によって引き起こされることが多いです。基本的に痛みは、神経の周囲の組織や他の生理学的変化(例えば、筋肉の緊張や血流の不足)によって引き起こされる。モートン病の場合には、屈み指(クロー・トー)や足背の筋肉の炎症が主要な原因となることが多いです。
3. 診断が誤診
足趾の付け根の部位で足を横から挟むように圧迫して疼痛(とうつう)が誘発されれば、モートン病と診断されます(Mulderテスト)。圧迫された神経の足趾間に感覚障害があり、隣りあう中足骨の先端の間に痛みのある瘤のような塊と、それと同じ場所にティネルサイン(神経傷害部をたたくとその先に痛みがひびく)があれば診断はほぼ確定です。
しかしよく考えてください。筋肉の炎症や血流障害によっても足趾間に感覚障害は出ますし、長期間の筋肉が過緊張を起こすと痛みのある瘤のような塊もでき、ティネルサインもあります。そのため、単純な筋肉の炎症であるにもかかわらず、多くの方がモートン病と診断されているのが現状なのです。
若い世代も含めて、私の診察室にも「モートン病」が治らないという、たくさんの人がやって来ますが、ほとんどが「誤診」です。誤診というより、「モートン神経腫はあっても、そこから痛みが出ているわけではない」と言い換えまたほうが適切かもしれません。これはヘルニアや狭窄症にも似た問題です。
屈み指とは?
屈み指は、足の指が異常に曲がり、通常の直線状の位置に戻らない状態です。これは足の筋肉や腱の不均衡により引き起こされ、特に第二、第三、第四の指に多く見られます。この状態は、指に持続的な圧力をかけることで悪化することがあります。
・指が曲がっているために靴の中で圧迫感を感じる
・足背の筋肉の炎症
・歩行時の足の前部に痛み
・長時間の立位や歩行での不快感
足指の変形をチェック
まずは自分自身の足指の状態を知ることから始めてみましょう。モートン病は屈み指で最も多くみられますが、浮き指や外反母趾でも同じ症状を訴える方もいます。
指が下向きに曲がりっぱなしで伸ばすことができない状態のことを指します。
足の親指の付け根側(親指の付け根側に向かって)に向かって曲がってしまっている状態を指します。
足の小指が内側(親指側に向かって)に曲がる状態のことを指します。
親指が他の指の爪と比べて上方向に曲がって浮いてしまう状態を指します。
小指が地面から浮いてしまう状態を指します。
指の爪が横を向いている状態のことを指します。
いかがでしたか?屈み指かも、と思う方も多かったのではないでしょうか。モートン病と診断された方を多く見てきましたが、ほとんどの方は「屈み指」を改善させるだけでモートン病の症状がなくなりました。屈み指について詳しく知りたい方は以下の記事を参照してみてください。
屈み指によるモートン病のメカニズム
モートン病は、屈み指による足背の筋肉の炎症が原因となることが多いです。屈み指は、足の指が曲がった状態になり、足の前部に過剰な圧力がかかる状態です。これにより、足背の筋肉が炎症を起こし、痛みを引き起こします。以下にそのメカニズムを説明します。
1. 足のバランスの崩れ
屈み指により、足の正常なアーチ構造が崩れ、足の前部に過剰な圧力がかかります。これにより、足背の筋肉が炎症を起こし、痛みを引き起こします。
2. 筋肉の炎症
屈み指の状態では、足指の筋肉が緊張しやすくなり、足背の筋肉が炎症を起こします。この炎症が痛みの主な原因となります。
3. 足指の不適切な動き
屈み指により、足指が正常に動かなくなり、歩行時に足指で地面をしっかりと蹴ることができなくなります。これにより、足背の筋肉に負担がかかり、炎症が悪化します。
背足骨間筋とモートン病の関係
屈み指になると、足の中足骨の間に位置する小さな筋肉群(背足骨間筋)が過度に緊張し、モートン病の発症や症状に影響を与える可能性があります。
- 背足骨間筋は、各中足骨の間に存在します。通常、第二から第四の中足骨にかけて配置されています。
- 各筋肉は、中足骨の間を走り、指の基底部に付着します。
筋肉の緊張と圧迫
屈み指により背足骨間筋が過度に緊張すると、筋肉が炎症を起こして痛みが発生する可能性があります。特に、第三および第四中足骨の間に位置する骨間筋が過緊張することで、モートン病の典型的な症状である痛みやしびれが発生します。いわゆる骨間筋腱炎というものです。神経が圧迫されている場合には、四六時中で感覚麻痺が起こります。
しかし、ほとんどの人は、1日のうちで靴を履いている時間だけとか、歩く時だけ痛みが出るとかではないでしょうか。1日のうちで痛みが出たり出なかったりする場合には、筋肉の炎症しか考えられないのです。これは医学では常識的な知識ですが、病院で患者さんに説明されることはほとんどありません。
治療法
多くの場合、手術をせずに足指のケアを行うことで、モートン病と診断される症状を改善することが可能です。具体的には、以下の方法が推奨されます。
1. 足指のストレッチ「ひろのば体操」
ひろのば体操は、モートン病の症状を緩和するための有効な方法です。足指の柔軟性を高め、屈み指を改善することで、神経の圧迫を軽減し、痛みや不快感を和らげる効果が期待されます。毎日続けることで、その効果を最大限に引き出し、快適な生活を実現することができます。
1.足指の柔軟性向上
足指が柔軟になることで、歩行時の正しい動作が促されます。
正しい歩行動作が足背の筋肉の炎症を軽減し、モートン病の症状緩和につながります。
2.足全体のバランス改善
足指の筋肉を強化することで、足全体のバランスが改善されます。
足のバランスが良くなることで、特定の部分に過度な負担がかかるのを防ぎます。
3.血液循環の促進
足指や足全体の運動により、血液循環が促進され、痛みや不快感の軽減に寄与します。
2. 矯正サポーター「YOSHIRO SOCKS」の使用
モートン病の症状緩和に非常に効果的であり、日本では唯一の特許庁に登録された商品です。この靴下は、屈み指を改善し、足背の筋肉の炎症を予防するために特別に設計されています。その独自のデザインと効果は、多くの専門家や使用者から高く評価されています。以下に、その効果と特徴について詳しく説明します。
1. 足指の分離と矯正
YOSHIRO SOCKSは、各足指を独立して分離するデザインが特徴です。これにより、足指が自然な位置に戻りやすくなり、足指の変形や圧迫を防ぐことができます。足指が正しい位置にあることで、足指の変形が矯正され、正常な歩行が促進されます。
2. 足指のエクササイズ効果
YOSHIRO SOCKSを履くことで、足指が自然に広がり、足指の筋肉を使う運動が促進されます。これにより、足指の筋力と柔軟性が向上し、屈み指の改善につながり、モートン病の症状が軽減されます。
3. 血液循環の促進
YOSHIRO SOCKSは、指先から足首にかけての圧迫を適度に加えることで、血液循環を促進します。これにより、足全体の血流が改善され、炎症や痛みの緩和に役立ちます。
3.矯正シューズ「YOSHIRO MODEL」での対処法
ハルメク靴のYOSHIRO MODELは、足指・足を自然な位置に保つことでかがみ指の改善と予防し、足のポンピング作用を促進するデザインになっています。この作用により、足の血行が良くなり、快適な履き心地を提供します。また、YOSHIRO MODELは軽量で耐久性があり、歩きやすさとデザイン性を両立させた靴です。
また、足の位置を正しく保持させるインソール(YOSHIRO INSOLE)が標準で内蔵されており、高品質なサポートとクッション性を提供しています。同ブランドのインソールは、足指の変形を改善・予防するだけでなく、靴のフィット感や歩行時の快適さを向上させ、足や膝、腰などの負担を軽減する効果も期待できます。是非、お試しください。
4.睡眠中における対処法
YOSHIRO SOCKS SLEEPは睡眠時に装着することに特化した矯正ソックスです。特に足元の保温性に優れており、冷えやすい足もしっかりと温めてくれます。さらに、履き心地も抜群で締め付け感が少なく、ソフトな着用感を楽しむことができます。モートン病でお悩みの方にはぴったりのアイテムです。是非、試してみてください。
YOSHIRO SOCKSでモートン病が治った私の体験談
私は40代の女性で、数年間足の前部に強い痛みを抱えていました。特に長時間歩いた後や靴を履いた時に痛みが増し、日常生活に支障をきたしていました。整形外科でモートン病と診断され、手術を勧められましたが、どうしても手術を避けたかったため、他の方法を模索していました。
ある日、湯浅先生の診察を受け、「屈み指」と診断されました。それまで足指のことを気にかけたことがなかったので、この診断に驚きました。湯浅先生はYOSHIRO SOCKSを勧めてくれましたが、こんな簡単な方法で治るのかと疑心暗鬼でした。しかし、先生がその場でひろのば体操を施術してくださり、その瞬間に痛みが和らいで希望が持てました。
早速YOSHIRO SOCKSを購入し、毎日履くことにしました。足指がしっかり広がり、驚くほど快適でした。数週間後、痛みが徐々に和らぎ始めました。1ヶ月後には、歩行時の痛みが大幅に軽減され、3ヶ月後には痛みがほとんど感じられなくなりました。「モートン病が治った!」と実感し、心から感動しました。手術を回避し、普通の生活に戻れたことに心から感謝しています。
YOSHIRO SOCKSと湯浅先生のおかげで、私の足は救われました。今では、痛みなく自由に歩くことができる幸せを日々実感しています。もし同じような症状で悩んでいる方がいれば、ぜひ一度試してみることをお勧めします。YOSHIRO SOCKSは私の救世主です。
参考文献
1. 外反母趾の機能解剖学的病態把握と理学療法.湯浅慶朗.理学療法 第31巻 第2号 2014.2 P159-165
2.『足指をそらすと健康になる』湯浅慶朗/著 PHP研究所 2014.6
3.『たった5分の「足指つかみ」で腰も背中も一生まがらない!』湯浅慶朗/著 PHP研究所 2021.6