足指ドクターによる解説

YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗
足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、YOSHIRO SOCKS・ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。MRC認定歯科医院の顧問の経歴もあり。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(7万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。東京大学石井直方名誉教授の弟子でもある。
はじめに
関節は生涯にわたり損傷と修復のサイクルを繰り返しますが、加齢や生活習慣の影響で修復機能が低下すると、関節の形状や構造に変化が生じます。膝の場合、これが変形性膝関節症として現れ、一般的には「軟骨がすり減って痛みが出る」と考えられています。しかし、実際のところ、膝の軟骨自体は神経がほとんど存在しないため痛みの直接の原因とはならず、別の要因が痛みを引き起こしているのです。以下では、膝関節の痛みや変形の本当の原因、すなわち足指の変形とその影響について詳しく解説します。
知っておくべき事実——新たな視点からの再考
膝の軟骨のすり減りと痛みは直接関係しない
2011年にミシガン大学公衆衛生学部疫学部のMaryfran Sowersらによって行われた研究の結果は、膝の軟骨のすり減りと痛みが必ずしも一致しないことを示唆しています。健康な女性であってもMRIで膝の病変が確認されており、関節液の貯留や滑膜炎、軟骨の欠損、半月板の損傷などが一定の割合で見られました。しかし、これらの病変があっても必ずしも痛みを感じているわけではなく、軟骨のすり減りが膝の痛みの直接的な原因であるとは言い切れません。

つまり、膝の痛みの原因を「軟骨がすり減っているから」と単純に考えるのは適切ではなく、炎症の有無や滑膜の状態も重要な要素として考慮する必要があります。今回の研究は、膝関節症の診断や治療において、単に画像診断に頼るのではなく、患者の症状や機能障害を総合的に評価することの重要性を示しています。
50歳以上の710人を対象にMRIを実施した結果、89%に何らかの異常が見られ、**骨棘(74%)、軟骨損傷(69%)、骨髄病変(52%)**が特に多く検出されました。年齢が高いほど異常の発生率が増加しましたが、BMIとの関連は認められませんでした。また、膝の痛みの有無にかかわらず、異常の発生率は高かった(痛みあり90~97%、痛みなし86~88%)。このことから、X線で異常がない中高年者でもMRIではOAに関連する病変が多く見つかることが示唆されました。
体重よりも膝のアライメントが重要
2004年にボストン大学臨床疫学研究・研修センターのDavid T Felsonらが行った研究の結果では、単に体重がOAの進行を加速させるのではなく、膝関節のアライメントがどの程度ずれているかによって、その影響が変わることを示唆しています。特に、中等度のアライメント不良を持つ人では、体重の増加が局所的な負荷を強め、膝OAの進行を促す可能性があります。一方で、正常なアライメントの膝では関節への負荷が均等に分散されるため、体重の影響は少なく、重度のアライメント不良の膝では、既に異常な力学的ストレスがかかっているため、体重増加の影響が相対的に小さくなるのかもしれません。
アライメント(alignment)とは、関節や骨の整列状態を指す言葉です。特に膝関節においては、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の位置関係を表し、「膝の軸のズレ」を意味します。

この知見は、OAの進行を防ぐための治療や予防策を考える際に重要になります。単に体重を減らすことだけでなく、膝のアライメントを適切に評価し、矯正することで、OAの進行リスクを抑えられる可能性があることを示しています。これにより、膝OAの管理において、アライメントの調整(ひろのば体操やYOSHIRO SOCKSによる足趾機能の向上)を含めたアプローチの重要性がより強調されるべきであると考えられます。
この研究は、肥満(BMI)と膝のアライメント(整列具合)が膝の変形性関節症(OA)の進行に与える影響を調査しました。対象は、膝OAを持つ退役軍人と新兵228人(394膝)で、30ヶ月間追跡調査を行いました。結果、BMIが高いほど膝OAの進行リスクは増加しましたが、この影響は中等度のアライメント不良(3°~6°)の膝でのみ認められ、正常アライメント(0~2°)や重度のアライメント不良(≥7°)では影響がなかったことが判明しました。
私の臨床経験でも、膝OAの患者の多くが足部や下肢のアライメント異常を抱えており、それが膝関節に過剰な負荷をかけることで症状を悪化させています。このことから、膝OAの予防や進行抑制には、体重管理よりも、アライメントを整えることが重要であると考えます。足指の機能改善や適切な靴・靴下・インソールの使用、運動療法によるアライメントの調整を行うことで、膝関節への負担を軽減し、OAの進行を防ぐ可能性があるのです。
Brouwerら(2007)の研究では、内反アライメント(O脚)や外反アライメント(X脚)が、膝OAの発症リスクを高めることが報告されました。特に内反アライメントは、正常なアライメントに比べてOAの進行リスクを約2.9倍に増加させることが示されています。
膝関節症の原因は筋力低下だけではない
近年、大腿四頭筋の筋力低下が膝の変形性関節症(OA)の進行に影響を与えるとする研究が多く報告されています。しかし、Zuhaら(2022)の研究では、大腿四頭筋の筋力と膝OAの症状との間に統計的に有意な関連は認められませんでした。
これは、膝OAの症状が単に筋力低下だけで説明できるものではなく、アライメント(整列)や炎症、神経的要因 など、より複雑な要素が関与している可能性を示唆しています。特に、関節の負荷分散や安定性を考慮すると、筋力よりも足部のバイオメカニクスや姿勢の調整 が重要な役割を果たす可能性があります。この研究結果は、従来の「筋力低下=膝OAの進行」という単純な図式を見直す必要性を示唆しており、治療アプローチの再考を促します。
196名を対象にした横断研究では、膝の変形性関節症の診断と徒手筋力検査(MMT)を用いた大腿四頭筋の筋力評価が行われました。その結果、大腿四頭筋の筋力低下と膝OAの症状との関連性を示す統計的な証拠は得られませんでした(p値=0.097)。つまり、この研究では膝の変形性関節症の症状が大腿四頭筋の筋力低下と直接的に関係しているとは言えないという結果になりました。
見落とされている本当の原因 ー 変形性膝関節症と下腿骨の傾き

膝の痛みで病院に行ってレントゲンで見せられるのがこの画像です。そして「軟骨がすり減っています、変形性膝関節症ですね」と診断されます。加齢・筋力・肥満のいずれかのせいにされるでしょう。
まさに木を見て森を見ずな医療です。


上の写真を見てください。正常と変形性膝関節症の人で何が違うのか一目瞭然です。


膝から下の「下腿骨」という骨の傾きが違うのです。つまり、変形性膝関節症の原因は「下腿骨の傾き」にあるということなのです。
では、下腿骨が傾いてしまう原因とは何でしょうか?
実は、その答えは 「足」 にあります。膝の痛みや変形性膝関節症の根本的な原因は、膝そのものではなく 足部の機能不全 にあるのです。しかし、この視点を持つ医療機関はほとんどありません。
足の問題が下腿骨の傾きを引き起こし、その結果として膝に負担がかかり続けることで、軟骨がすり減り、膝関節の変形が進行していきます。つまり、膝の軟骨を守るためには 下腿骨の傾きを修正すること が必要であり、そのためには 足の機能を正常化すること が欠かせません。
では、どのような要因が足の機能不全を引き起こし、下腿骨の傾きを生じさせるのでしょうか?
次の章では、その 「発生要因」 について詳しく解説していきます。
発生要因とメカニズム
変形性膝関節症の最も一般的な原因は加齢といわれています。ほぼすべての人が、最終的にはある程度の変形性関節症を患うことになります。そして、いくつかの要因により、早期に重大な関節炎を発症するリスクが高まるとも考えられています。
・肥満(発症する可能性が 7 倍高くなる)
・膝に負担がかかる仕事やスポーツをしている
・関節のアライメント異常(外反/内反足など)
・膝を怪我している、または膝に古傷がある
・家族の歴史
・代謝異常(くる病など)
しかし、ここで考えてもらいたいことがあります。上記のように一般的な原因とされる要因があっても、変形性膝関節症の人とそうでない人がいるのはなぜでしょうか。
先ほどもお話ししましたが、足指の変形(外反母趾・内反小趾・かがみ指・浮き指)が大きく関係しています。膝の痛みを訴える方の90%以上が、仙腸関節の機能障害と足指変形による膝周囲の筋肉の炎症が混じっていることが原因です。そして、足指が変形したり、仙腸関節の機能障害が起こる元をたどれば、最終的には「靴下」や「靴」にたどり着くのです。

靴が変形性膝関節症の原因であることは米国整形外科学会でも明らかにされています。日本はまだまだ遅れています。
変形性膝関節症=膝関節の軟骨が薄くなっている状態
O脚=膝がひらいている状態(軟骨はすり減っていない)
※どちらも原因は同じです
メカニズム 1-1 軟骨のすり減りは下腿骨の傾きが原因!

実は、変形性膝関節症と膝の痛みの原因は、「足指の変形」にあります。上記のイラストを見てください。変形性膝関節症が重度になるにつれて、下腿骨(膝の下の骨)が外側に倒れていくのがわかると思います。下腿骨が外側に倒れることで大腿骨も外側に倒れ、膝の内側部分の軟骨に大きなストレスが加わり続けるので、軟骨を修復する機能が働きにくくになり、膝関節の形状や構造に変化が生じるのです。逆に言えば、膝の内側部分のストレスを除くことができれば、軟骨を修復する機能が働くようになり、膝の軟骨が再生した人もいるのです。

下腿骨が外側に倒れる原因を考えなければ、根本的な治療はできないですよね。
メカニズム 1-2 下腿骨の傾きは踵の変形が原因!
では下腿骨が倒れる原因は?それには2つの原因があります。一つは「外反足(がいはんそく)」という踵の骨の変形、もう一つは「回外足(かいがいそく)」という足そのものの変形です。
下腿骨は「距骨(きょこつ)」と「踵骨(しょうこつ)」の骨の上に乗っています。そのため、一番下にある「踵骨」が傾けば、それに連動するかのように下腿骨も倒れていきます。

外反足は足部の筋力が低下することで、足の骨同士を本来の形状に保持できなくなり、踵の骨が内側に倒れ、バランスを取るために下腿骨が外側に倒れる状態(姿勢制御)のこと。足の筋力低下は足指変形が原因で起こるので、踵の骨をまっすぐに戻すには、足指の変形・機能を元に戻していく必要があります。

足が外側に倒れる原因の一つが「足部の筋力低下」です。医学の世界ではあまり知られていないのが現状です。
メカニズム 1-3 下腿骨の傾きは足趾機能不全が原因!

回外足は小指の機能不全や内反小趾という足指の変形によって起こります。小指は足が外に倒れないようにするための「ストッパー」の役割があるので、小指が使えなくなると歩行の踏み返しの時に足が外側に倒れてしまいます。

この場合、下腿骨も一緒に外側に倒れるので、下腿骨をまっすぐにするには、小指の変形・機能を元に戻していく必要があります。

足が外側に倒れるもう一つの原因が「小指の機能不全」です。これも医学の世界ではほとんど知られていません。
まとめ
変形性膝関節症の根本的な原因は、膝だけにあるのではなく、「足指の変形」による影響が大きいことが分かります。下腿骨の傾きが膝の軟骨に過度なストレスを与え、それが長期的に続くことで軟骨のすり減りや関節の変形につながるのです。そして、その下腿骨の傾きを引き起こしているのが「踵の変形(外反足)」と「小指の機能不全(回外足)」です。
つまり、膝の問題を本質的に解決するには、足部の機能を正常に戻すことが不可欠です。特に足指の変形を改善し、足の筋力を回復させることで、踵の骨や下腿骨の傾きを修正し、膝関節への負担を軽減することができます。
①小指の機能不全→足部が外側に倒れる→下腿骨が外側に倒れる→膝関節が変形する
②小指の変形→足部が外側に倒れる→下腿骨が外側に倒れる→膝関節が変形する
③足指の変形→足部の筋力低下→踵骨が内側に倒れる→下腿骨が外側に倒れる→膝関節が変形する
③に関しては、浮き指や屈み指などの足指変形により起こるものです。いずれにしても、足指の変形を治さないとO脚の根本的な解決には至らないとも言えます。
足指が変形する原因

残念なことに、ほとんどの現代人は、間違った靴の選び方、履き方などによって足指が変形し、土台が崩れています。靴の中で足が前後に滑ると、足指が滑りを止めようとして、かがみ指(ハンマートゥ)や浮き指になります。また、靴下やスリッパによっても、足指が曲がることがあります。
特に以下のような靴を履いている方は、歩くときに足が外側に倒れる危険性が高くなるので要注意です。
足の骨はたくさんの筋肉で支えられてまっすぐな形をしていますが、ほとんどの筋肉が足指に付着しています。そのため、足指を機能的に使わず歩くと、足の筋力が落ちて内反小趾→回外足→変形性膝関節症になるのです。
・筒型の靴下(チューブソックス)は、足指に4g~9gf/㎠の力がかかり、足指を圧迫する。
・綿やシルクの靴下にはシルケット加工が施されており、靴や靴下の中で足が滑りやすくなる。
・滑りやすく、足指に圧力のかかる靴下は、足指機能不全を引き起こす・
・ブカブカのチューブソックスでは、靴下の中で足がズルズルと滑る。
つまり、変形性膝関節症をよくするには、手術でも再生医療でもなく、「足指」ということになるのです。病院で行うリハビリ・マッサージ・筋膜リリースなどは一時的に膝の痛みが和らぐこともありますが、「足指」を治療しない限りは、何の意味も持たないことがわかるでしょう。
治療
治療には、主に「保存療法」と「手術療法」に分けられます。進行度にかかわらず、まず保存療法を行いますが、保存療法を行っても痛みが軽減せず日常生活に支障をきたす場合には、手術療法が考慮されます。
保存療法では「生活指導」を基本として、「食事療法」「運動療法」「物理療法」「薬物療法」「装具療法」を組み合わせて行います。
いずれも第一の目的は根治ではなく、痛みを緩和する事なので、疼痛緩和には一時的な効果はあるものの再発を繰り返します。変形性膝関節症という変形そのものを解決し、再発をしないようにするためにはセルフケアによる足ゆびストレッチをお勧めします。それに合わせて正しい靴の選び方、靴の中で足が滑らないようにするための正しい靴下選びも大切です。
自宅でできるO脚の改善法①:ひろのば体操
変形性膝関節症の90%以上は、保存療法・再生医療などの治療に関係なく加齢とともに進行していきます。私自身が妻の変形性膝関節症の改善をきっかけに足指の研究をスタートしたのは2006年。変形性膝関節症は「小指」という根本原因があり、足の筋力をつけていけば十分にセルフケアで改善できるものなのです。足ゆびストレッチは変形性膝関節症の最良の治療法の1つです。

変形性膝関節症を改善する足指ストレッチ「ひろのば体操」
1日1回5分を目安にやってみましょう。2〜3日やってみて症状に変化が見られないときは、1日2〜3回に回数を増やしてみることをお勧めします。目標は足指のパーが30秒間できるようになることです。
自宅でできるO脚の改善法②:YOSHIRO SOCKS

これまで綿やシルクで機能性5本指靴下を製作し、臨床現場で多くの患者様に試してきましたが、靴や靴下の中で足が滑るという問題を解決することができませんでした。そこで、繊維会社と2年の歳月をかけて理想的な繊維を完成させ、矯正5本指靴下「YOSHIRO SOCKS」が誕生しました。
自宅でできるO脚の改善法③:正しい靴の選び方

足指が変形するいちばんの原因は、靴の選び方と履き方にあります。足腰などのトラブルの多くは、足の指をちゃんと使っていないことが原因です。靴をはいた状態で脚の指の動きを保つには、正しい靴選びが重要です。
自宅でできるO脚の改善法④:正しい靴下の選び方
純綿やシルク素材のものは滑りやすい
シルケット加工(またはマーセライズ加工)というものがあります。シルケット加工とは、シルクの様な光沢を持たせる加工のことで、糸を苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)の液に浸し、手延べうどんのように糸を伸ばして糸の断面を整える加工のこと。主に綿やシルク繊維(コットン)に対して加工をすることが圧倒的に多いです。
綿の断面が整い発色性もよくなり、加工をすると毛羽も抑えられるため、見た目に高級感があります。なめらかですべるような履き心地なのですが、なめらか(滑らか)ですべる(滑る)というように読んで字が如く、靴の中や靴下の中で足が滑りやすくなります。つまりは足指の変形を起こしやすい素材ということなのです。
もちろんシルケット加工をしていない綿やシルク素材もありますので、そういった素材を選ぶことも変形性膝関節症の予防には大切な要素です。
5本指靴下で足指の機能を発揮させる
一般的な靴下はチューブソックスとも呼ばれ、世界中の方のほとんどがこのタイプの靴下です。長年使われてきた形状なのですが、チューブタイプは足指をうまく使うことができなくなります。そのため5本に分かれた靴下が良いのですが、このタイプにも色々なものがあります。
一番大切にしたいのは、自分自身の足にジャストフィットするか。指先や甲まわりがゆるかったりすると、せっかくの5本指靴下でも「滑り」が発生してしまいます。逆にフィットしすぎて圧迫感を感じる5本指靴下も血行を妨げてしまうためオススメできません。自分が使ってみて「心地よい」と感じる5本指靴下を見つけることが大切です。
矯正力のある靴下も増えてきましたが、試してみると意外にも強力に圧迫するものが多いと思いました。特に土踏まずの部分。アーチをサポートすることは大切なのですが、アーチ構造というのは強く持ち上げすぎると機能を失ってしまう特性があるので、アーチ部分もあまり圧迫感がないものを選ぶようにしましょう。
脱いだ時に「は〜、スッキリした!」と感じたら圧迫が強いということになります。
予防
足指ストレッチや矯正5本指靴下(YOSHIRO SOCKS)を履きながら、日常生活を少し変えることで、膝関節を保護し関節炎の進行を遅らせることができます。
・小股で歩くようにする
・坂道や階段を上るなど足指先を使う活動を行う
・室内で履き物を履かないようにする
・1日6,000歩以上歩くように心がける
・靴紐をしっかり絞めるようにする
・オーダーの枕やマットを使わないようにする
・正しい靴選びを心がける
・靴べらを使って靴を履くようにする
変形性関節症では、痛みと機能を改善するために運動が推奨されます。足指のストレッチや矯正5本指靴下(YOSHIRO SOCKS)を履いていれば、膝への負担軽減を考えずにアクティブに活動できるようになります。バランス、敏捷性、調整運動を従来の足指運動と組み合わせると、機能と歩行速度の向上に役立ちます。
理学療法
病院やクリニックでのリハビリは、変形を遅らせたり痛みの軽減を図ることが可能ですが、変形性膝関節症の治療は手術療法以外では骨の変形を治すことはできないと結論づけています。病院に通うことを辞めて、その時間を足指ストレッチや小股ウォーキングに使うことをオススメします。
補助装具
杖などの器具を使用したり、装具や膝スリーブは安定性と機能を補助し、関節炎が膝の片側に集中している場合に役立ちますが、長期間の使用により膝関節周囲の筋肉や靭帯を弱らせてしまいます。また膝の変形を軽減するために、靴にオーダーインソールを入れることはお勧めできません。
体験談
変形性膝関節症と診断された一人の女性が相談にいらっしゃいました。
膝が痛くて2年ほど前から正座ができなくて、階段の上り下りにも苦労している状態。膝の後ろが腫れていて痛く、整形外科に行って調べてみても理由が分からないんだそうです。
「太ってるからじゃない?」と言われたことも。
肥満でひざに痛みが出ることはありません。それであればアメリカ人は全員ひざ痛で悩んでいるはず。でもそうではないですよね。受診した病院が悪かったのかもしれませんが、ひざの痛みには必ず「原因」があります。とにかく膝はじっとしていても痛いままの生活が続いているという事でした。
膝から水を毎週抜いて、ヒアルロン酸を打ってもらったこともあるそうです。ひざ痛は「結果」ですから、そうなった「原因」を探ることが最優先です。その「原因」は、ほとんどが靴です。

靴の選び方や履き方によって「足指」が変形し、カラダのバランスを崩しているだけなのです。足指を見ると「内反小趾」という変形を引き起こしていました。足指のパーもできないので足が外側に倒れやすい状態です。
そこで「ひろのば体操」と「YOSHIRO SOCKS」で足指が使えるようにしていきました。
すると2週間後…

普通に正座ができるようになりました。ご本人も信じられないような表情でした。その後3か月経過を見ていますが、とても調子よく歩けていて、畑仕事などにも復帰したそうです。人間の回復力は無限です。諦めずに、足ゆびを伸ばしてみてはいかがでしょうか。
一般人を対象にした調査によると60歳以上では女性の約40%、男性では20%に膝の変形が見られます。80歳代では女性は60%以上、男性は50%近くです。しかし、そのうち痛みなどの自覚症状がある方は20%程度です。つまり変形していても痛くない方はたくさんいるのです。
変形性膝関節症の概要

すべての人の関節は、生涯にわたって損傷と修復のサイクルを繰り返しますが、関節を修復する機能が働きにくくになり、関節の形状や構造に変化が生じることがあります。これらの変化が 1 つ以上の関節で起こる場合、それは変形性関節症として知られています。
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨が薄くなり、関節の表面が粗くなるため、膝がスムーズに動かなくなり、痛みや硬さを感じるとされています。変形性関節症は、どの年齢でも誰でも罹患する可能性がありますが、50 歳以上の女性でより一般的です。
関節とは、2つ以上の骨がしっかりつながっている部分で、膝の場合は大腿骨とすねの骨です。膝の前には、膝蓋骨または膝蓋骨と呼ばれる小さな骨もあります。私たちの骨の端は、軟骨(なんこつ)として知られる滑らかで滑りやすい表面で覆われています。これにより、骨が摩擦なく互いに動くことができ、関節をストレスから保護します。
膝には、半月板または半月板として知られる別の種類の軟骨でできた輪が他に 2 つあり、膝関節全体で体重を均等に分散するのに役立ちます。また、膝蓋骨の下にも軟骨があります。

軟骨がある程度すり減るのは、歳をとって白髪が生えるのと同じことですよ、ってことです。
この研究は、MRIで確認できる膝の異常(軟骨損傷や炎症など)が、痛みや機能低下とどの程度関係するかを調べました。87人の女性を対象に検査した結果、MRIの異常と痛みや筋力低下との関係は弱く、一部の異常(半月板の損傷や炎症など)のみ影響が確認されました。つまり、MRIは膝の状態を詳しく映し出せても、実際の痛みや機能低下を正確に予測するのは難しく、診断には患者の症状を重視することが重要であることが示されました。

軟骨のすり減りと肥満は、膝の痛みとは無関係ということは2012年から言われていることなんです。日本はまだ軟骨ビジネスが蔓延しています。
変形性膝関節症の治療は保存的方法から開始し、保存的治療が効果がない場合には外科的治療の選択肢に進むのが一般的です。薬物療法はRA(リウマチ)および他の炎症状態の進行を遅らせるのに役立ちますが、変形性膝関節症の治療で効果があったと証明された薬は存在しないのが実情です(一時的な症状緩和はある)。
変形性関節症の一般的な症状
痛みは膝の変形性関節症の最も一般的な症状とされています。膝を動かしたり、じっと座っているだけでも膝が痛むことがあります。その他の症状は次のとおりです。
・特に最初に立ち上がったときや、長時間座っているときに膝が硬く感じる
・関節が硬くなって腫れ、膝の曲げ伸ばしが困難
・膝を動かすとパキパキと音がしたりする
・膝に脱力感が生じたり、膝がガクッと曲がったりする
・膝がロックしたり、引っかかっているように感じる
・天候の変化に伴って関節の痛みが増す
症状が膝関節あたりに出ているので、膝関節が悪くなったと感じる人が多いと思いますが、実は上記の症状は変形性膝関節症による軟骨のすり減りが原因ではありません。関節内の軟骨には神経は少なく、軟骨は痛みを発しないのです。軟骨がすり減ることによって、その周辺にある組織(関節包や滑膜、靱帯、筋肉、筋膜など)に炎症が起こり、それによる痛みが出るとされています。

実際には膝に問題があるわけではないんです。原因は遠く離れた場所にあり、膝の治療をしても改善するわけではありません。
検査・診断
レントゲン検査(X線撮影)では、膝関節の状態を観察します。X線撮影は立った状態で行います。O脚の場合には、X線写真で軟骨の下にある骨が硬くなる「軟骨下骨硬化」や、関節のすきまが狭くなる「関節裂隙の狭小化」、とげ状の骨である「骨棘」などがみられます。
レントゲン検査(X線撮影)以外に、必要に応じてMRI検査、関節液検査、血液検査を行う場合があります。
変形性膝関節症の進行度

変形性膝関節症の診断基準として使われるのは、X線撮影によるKellgren-Lawrence(KL)分類です。KL分類では骨棘(こつきょく)の形成や関節裂隙(かんせつれきげき)の狭小化、軟骨下骨の骨硬化を基準として5段階で重症度を評価します。一般的に、グレードⅡ以上の場合に変形性膝関節症(O脚)と診断されます。
膝の痛みは,内側関節裂隙や膝窩部を中心として広範囲に発生し、KL分類で重症度が高い例ほど痛みが発生する傾向が見られますが、ROAD(Research on Osteoarthritis Against Disability)StudyでKL分類3以上の群の疼痛保有率が男性約40%、女性約60%というデータから、重症度が高ければ必ず痛みがあるわけではありません。
参考文献
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