扁平足とは?


扁平足(へんぺいそく/フラットフット)とは、足の内側縦アーチが低下、または消失した状態のこと。立位で土踏まずが地面にベタッとついており、アーチが潰れているのが特徴です。
乳幼児はほぼ全員が扁平足で生まれますが、6歳前後までに自然にアーチが形成されるのが一般的。しかし現代では、大人になってもアーチが発達せず、慢性的な扁平足が残るケースが増えています。
扁平足は単なる「足裏の形」ではなく、姿勢・重心・歩き方・疲れやすさ・転倒リスクにも直結します。そのため早期の予防やセルフケアが非常に重要です。
専門メカニズム解説|なぜ足指が扁平足を引き起こす?
1. 足底筋・腱の働きとアーチ支持


これらの筋肉は「足指の曲げ伸ばし」動作と連動して収縮と弛緩を繰り返すことで、土踏まずを動的に保ちます。

筋収縮の種類別による筋力増強運動
●求心性収縮
筋の長さが短くなりながら筋収縮する運動
(例:肘を伸ばした状態からダンベルを持ち上げる時の上腕二頭筋の運動)
●遠心性収縮
筋の長さが伸張しながら筋収縮する運動
(例:肘を曲げた状態からダンベルを下ろすときの上腕二頭筋の運動)
筋肉は負荷をかけながら関節の曲げ伸ばしを行うことで増強していきます。「小股でゆっくり歩きましょう」というのはスロートレーニングの応用で、低強度の負荷でも筋力増強効果は高いとされています。大股歩きとは違い、負荷量が少ないため関節にかかる負担は小さく、整形外科的な障害のリスクが少ないのも利点です。
足指の曲げ伸ばしを繰り返すような単独の動作は、歩くときに地面を蹴って足指で踏み返しを行うときに行われます。この3つの筋肉は、歩行時の足首の曲げ伸ばしも同時に行うので常に鍛えられているということなのです。

2. 親指の変形や機能不全による扁平足

扁平足のもう一つの原因が、足指の変形(外反母趾・親指の浮き指)もしくは親指の機能不全です。親指は足にかかった体重が内側に倒れないようにするためのストッパーなので、親指が使えなくなると、足が内側に倒れて下腿骨(ひざ下の骨)が内側に弯曲すること(わんきょく)します。
そうすると、足は安静時(立ったり歩いたりしていないとき)には正常なアーチを持っていますが、体重を支えながら地面に接触するとアーチは消えてしまいます。これが「隠れ扁平足」です。
3. ウインドラス機構の破綻

- 親指が浮いている/踏み返しできない → アーチの巻き上げ機構が不活性に
- MLA(内側縦アーチ)が崩れて扁平足になる
扁平足のタイプと症状
◾️柔軟性扁平足
- 非荷重ではアーチがあるが、立つと消える
- 成長とともに改善することも
◾️硬直性扁平足
- 常にアーチがない
- 骨・靭帯の異常、先天性変形など
◾️成人後天性扁平足
- 後脛骨筋腱の炎症・断裂などで発症
- 片側に起こりやすく、徐々に進行
◾️主な症状
- 長時間歩行で土踏まずや踵が痛む
- 足首の内側に張りや熱感
- バランスが悪くなる、転びやすい
- 足の疲労感、歩き方の変化
1分セルフチェック|あなたの足、実は「隠れ扁平足」?
1. 濡れ足跡テスト

濡らした足で紙の上に立ち、土踏まず部分の跡がべったり残っていれば扁平足の可能性。
2. つま先立ちテスト

- つま先立ちでアーチが現れる → 柔軟性扁平足
- アーチが現れない → 硬直性扁平足の可能性
3. 足指の変形チェック

足の親指が外側(小指側)に向かって曲がる状態を指します。

足の小指が内側(親指側)に向かって曲がる状態のことを指します。

指が下向きに曲がりっぱなしで伸ばすことができない状態のことを指します。

親指が他の指の爪と比べて上方向に曲がって浮いてしまう状態を指します。

小指が地面から浮いてしまう状態を指します。そのほかの指にも見られることがあります。

指の爪が横を向いている状態のことを指します。特に小指や薬指に多く見られます。
4. 足指の機能チェック



- 足指で「グー・チョキ・パー」ができるか
1つ以上当てはまるなら、“足指の機能不全”が原因の「隠れ扁平足」が疑われます。
【体験談|扁平足と足指の使い方の“変化を記録したケース”】
私が記録として残しているなかに、
扁平足が長年続いていた40代女性のケースがあります。
きっかけは、
「土踏まずがつぶれる感じがずっと気になる」
「歩いた後に足裏が重い」
というご相談でした。
初回の写真では、立位になると内側縦アーチがほとんど見えず、
体重が内側へ流れやすい典型的な“隠れ扁平足”の足型でした。
同時に、
- 親指が軽く浮いている
- 小指が内側へ倒れている
- 歩行時に足が前へ滑る癖が強い
- 指の踏み返しが弱い
といった “足指の使われ方の偏り” が複数ありました。
私はこの方に、
足指が使いやすい環境づくり として、
- ひろのば体操による足指の滑走の確保
- 滑りにくい素材の靴下
- 靴紐の調整(綿平織り+甲でのフィット)
- 室内スリッパをやめる “滑り対策”
- 小股歩きでの自然な踏み返しの再獲得
など、日常動作の範囲でできることをお伝えしました。
■ その後の写真記録(8週間〜24ヶ月)
観察を続けると、
以下のような“構造的な変化の推移”が記録されました。
- 8週間後: 立位でのアーチのつぶれが軽減し、 内側縦アーチ(MLA)のカーブがわずかに現れるように。
- 3ヶ月後: 足指の接地が安定し、 親指の踏み返しが写真上でも確認しやすくなる。
- 6ヶ月後: 初回よりも足長がわずかに変動し、 “アーチ形成時の特徴的な変化”が観察される。
- 12〜24ヶ月後: 立位と非荷重でのアーチの差が大きくなり、 足底の輪郭にも明確な変動が見られる。
もちろん、これらは
個人の生活環境の変化に伴う “構造的な推移の記録” であって、
治療効果を示すものではありません。
ただ、私はこの写真を見返すたびに、
「足指が使いやすい環境」
= 扁平足のように見える構造に影響を与え得る
ということを強く実感します。
■ 本人の言葉として印象に残っていること
3ヶ月後、その方がこう話してくれました。
「土踏まずが“つぶれる感じ”が前より気にならなくなりました」
「歩くときに親指で押せる感覚が初めてわかりました」
「足が前に滑らなくなった気がします」
これらはすべて、
“体の感じ方の変化” であり、
症状の改善を示すものではありません。
しかし私は、この “感覚の変化” が、
アーチの働きを引き出す重要な手がかり
になると考えています。

医療機関に相談すべきタイミングは?——“構造の視点”を持つ重要性
「足裏が痛い」「しびれる気がする」「土踏まずが落ちたように感じる」——
こうした相談を受けると、多くの方がまず医療機関を受診されます。
その際、レントゲンやMRIでは大きな異常が見つからず、
- 「画像上は問題ありません」
- 「しばらく様子を見ましょう」
- 「必要に応じてインソールを使ってみましょう」
といった説明を受けるケースが少なくありません。
これは、医療機関では “画像で確認できる異常” を中心に評価する仕組み があるためです。
一方で、足指の使われ方やアーチの低下などは、画像では捉えにくい“機能的な変化” であることが多く、診断名として明確に示されない場合があります。
私は臨床経験の中で、
滑り・足指の使われにくさ・足元の環境 といった “日常の要因” が、歩行や姿勢に影響しているケースを多く見てきました。
ただし、これは医療的診断とは異なり、あくまで 生活環境の観察としての視点 です。。
それでも医療機関での評価が必要なケース
以下のような症状がある場合は、
骨折・感染・神経疾患などの器質的疾患を除外するために、
整形外科での診察を受けることをおすすめします。
- 安静時にも続く強い足の痛み
- 発赤・腫れ・熱感など、炎症を疑うはっきりした所見
- 転倒後の歩行困難や、左右差のある筋力低下
- しびれが急激に悪化し、排尿・排便に関する異常がある場合
これらは、足指や生活環境とは別に、
医療的な評価が優先される可能性があるサイン です。
結論|足指が使いやすい環境づくりは、アーチの働き方に影響する
足指で立つ感覚を取り戻すことは、
アーチが本来働きやすい状態を目指す上で大切な要素です。
- 足指が整うと、アーチの働き方に“変化の傾向”が生まれる
- アーチの働きが変わると、姿勢や歩行の“感じ方”に変化が起こることがある
- 日常動作が軽やかに感じられた、という声も多い
こうした一連の流れは、
「機能的な変化」 に関するものであり、
特定の症状に対する治療や効果を意味するものではありません。
足指の研究から生まれた「環境づくり」という視点
足指研究所では、20年以上の臨床経験と、東京大学・石井直方名誉教授と実施した観察研究を通して、
「足指が使いやすい環境が整うと、姿勢・重心の安定性に関わる“変化傾向”が見られることがある」
という視点を大切にしています。
足指は本来、「広がる・伸びる・接地する」という生理的な動きを持ちますが、
靴・靴下・床の滑りやすさなどによって、その働きが阻害されることがあります。
私たちは、
「どうすれば日常で足指が動きやすい環境を作れるか」
という点を中心に開発と研究を続けています。
【研究データ|足指・姿勢・筋活動の観察記録】

2020〜2022年、東京大学・石井直方名誉教授の指導下で実施。
延べ96名を対象に、以下の構造的特徴の推移を多角的に観察しました。
- 足指の動き・配置
- アーチ構造
- 姿勢指標
- 体幹支持筋・口腔周囲筋・下肢筋の活動傾向
“足指が使いやすい環境づくり”を行った際、
足指・姿勢・呼吸に関連する筋活動などに構造的な変化傾向が見られました。
【足指が使いやすい体へ|4つのアプローチ】
日常で“足指が働きやすい環境”をつくるための基本ポイントです。
1. ひろのば体操(足指をゆるやかに伸ばす)
2. 靴の見直し(足指が押しつぶされない設計)
3. 小股歩き(足指が自然に使いやすい歩き方)
4. 室内環境の調整(滑りやすい床・スリッパを避ける)
【YOSHIRO SOCKS|構造とものづくり】

——足指が使いやすい“環境づくり”をめざした生活用品
足指の働きを妨げる「環境」そのものに着目し、
奈良の専門工場とともに、糸・密度・摩擦・張力などを精密に検証してきました。
● 構造のポイント

姿勢の安定性に配慮した
摩擦構造

自然な足指の開きを支える
立体フォルム

重心バランスを考慮した
密度・張力設計
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“広げる・伸ばす”動きを引き出す
テンション配置
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開帳・扁平傾向に配慮した
縦横方向テンション

母趾〜小趾が整列しやすい
張力バランス
※ いずれも医療的効果を示すものではなく、あくまで「足指が働きやすい状態をサポートする生活用品としての構造」の説明です。
● 製造のポイント

日本製
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高密度
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極薄
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高耐久

高グリップ
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吸湿・速乾
- 日本製:専門工場が ±1mm 単位でテンション管理
- 高密度:700nmクラスの極細繊維
- 極薄:約2mmの軽さと安定性
- 高耐久:生活用品としての強度
- 扇形フォルム:足指が自然に広がりやすい形状
扁平足と足指変形の関係を示す研究一覧
浮き指やハンマートゥなどの足趾変形は、
アーチ構造の崩れ(扁平足)と関連していることが複数の研究で示されています。
YOSHIRO SOCKSでは、こうした知見を踏まえ、
足趾の接地や安定性が高まりやすい環境づくり
を意識した設計思想を採用しています。
研究でも示されているように、
足趾の使われ方は姿勢・歩行の“感じ方”に影響することがあり、
その意味で、足趾環境の整備は重要な視点といえます。
外反母趾に関する研究例とその関連性
| 論文/研究 | 関連内容・結論 | コメント/限界 |
|---|---|---|
| “Relationship Between Hallux Valgus and Pes Planus: Real or Fiction?” | 扁平足 (pes planus) と外反母趾 (hallux valgus, HV) に高い相関を認めたという結果。 | 相関を示すが、因果を明示するものではない。「さらなる大規模コホート研究が必要」と結んでいる。 |
| “Pes Planus Deformity and Its Association With Hallux Valgus” | 扁平足 (pes planus) の重症度と外反母趾の再発率との関連を検討。扁平足の重症度が高いほど外反母趾の再発率が高い傾向を報告。 | 後ろ向きコホート研究 (Level III) なので、因果関係を断定するには限界がある。 |
| “The association between pes planus foot type and the prevalence of hallux valgus” | フラミンガム・コホート研究を使って、扁平足と外反母趾/外反母趾硬化 (hallux rigidus) の有病率を比較。扁平足の人は外反母趾を持つオッズが1.6倍(95% CI 1.4–1.8)という結果。 | 年齢・性別・BMIを調整後も有意な関連。だが横断的デザインであるため前後関係は見えない。 |
| “Is a Flatfoot Associated with a Hallux Valgus Deformity?” | 扁平足と外反母趾変形の関連を調べた研究。扁平足の“被験者群”では、外反母趾を併存している例が多かったとする報告。 | ただし「すでに変形が進んだ足」を対象にしており、発症初期段階や一般健常者への適用には注意が必要。 |
| “Foot morphology as a predictor of hallux valgus development in adolescents” | 足の形態(扁平足傾向含む)を、青年期における外反母趾発症の予測因子として検討。扁平足傾向を持つ足形態が、将来的な外反母趾リスクを上げることを示唆。 | 若年者対象の研究なので、成人以降の進行との関係を補完する形で参照すると良い。 |
| “Severity of flatfoot and hallux valgus deformities: Is there a correlation?” | 扁平足変形と外反母趾変形の重症度の相関を後ろ向き観察研究で評価。両者には一定の相関がある可能性を示唆。 | 相関を示すが、「足指変形 → 扁平足」か「扁平足 → 足指変形」かを決める証拠にはならない。 |
| “Impact of pes planus on clinical outcomes of hallux valgus surgery” | 外反母趾手術患者における扁平足の付随状態と術後成績との影響を検討。扁平足併存例は多く、扁平足が外反母趾に与える力学的ストレスが議論されている。 | 主に整形外科的観点から、手術後の再発・力学バランスを中心に解析している。 |
浮き指・ハンマートゥと扁平足との関連性を示す研究一覧
| 論文/研究 | 関連内容・結論 | コメント/限界 |
|---|---|---|
| “Relationship between foot alignment and floating toes classified in static and dynamic conditions in females” | 浮き指(floating toe)を静的・動的に分類し、足部アライメント(アーチ高、趾角など)との関連を調査。アーチ高が低い群で浮き指が改善しにくい傾向。 | 女性対象で相関関係を示すが、因果関係は不明。浮き指のタイプ別分類という点で臨床応用しやすい。 |
| “A cross-sectional study on the correlations between FT (floating toe), plantar arch posture, and body composition in children” | 浮き指スコアと足底アーチ(縦アーチ)の関係を調査。アーチ低下傾向と浮き指の関連性を示唆。 | 子ども限定・横断的研究であり、成長後の影響や因果関係の解釈には限界がある。 |
| “An investigation into the hammer toe effects on the lower extremity mechanics and plantar fascia tension” | ハンマートゥ変形がウインドラス機構や足底腱膜の張力に及ぼす影響を3Dモデルで解析。トルク減少と腱膜へのストレス蓄積が示された。 | モデル研究であり、臨床的アウトカムとの整合は検討が必要。理論的には扁平足の進行要因として成立する。 |
| “Foot Disorders, Foot Posture, and Foot Function: The Framingham Foot Study” | 扁平足傾向をもつ足 (pes planus posture) は、ハンマートゥ (hammer toes) や趾の重なり (overlapping toes) のオッズが有意に高いという関連を報告。 | 大規模コホート研究だが、横断的デザインであり、因果関係を断定できない。扁平足とハンマートゥが共存しやすい統計的傾向を示すもの。 |
| “Occurrence of Floating Toe from the Viewpoint of the Structure of Foot Arch” | 成人女性 65 名を対象に、浮き指群 vs 通常指群でアーチ高さ率 (座位 vs 立位) の差異を比較。浮き指群は、立位時・座位時でのアーチ高さ率差 (立位 → 座位変化) が小さめである傾向を報告。 | 被験者数が少数 (65 名) で、相関関係の述べるにとどまる。靴や動的負荷条件での評価は含まれない。 |

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