【医療監修】靴のクッションに関する誤解― クッション性の高い靴が関節負荷を必ずしも減らさない理由 ―

はじめに
長い間、私たちは
「クッション性の高い靴ほど、体にやさしい」
と教えられてきました。

衝撃を和らげる。
関節を守る。
疲れにくい。
そうしたイメージは、
・医療
・スポーツ
・靴業界
を通じて
半ば常識のように広まっています。
しかし近年、
この前提に疑問を投げかける研究が
・生体力学
・運動学
の分野から
数多く報告されています。
本記事では、
「クッション=安全」という思い込み
を整理し、
研究データをもとに
何が起きているのかを構造的に解説します。
クッション性が「衝撃を減らす」と信じられてきた理由

クッション性のある靴を履くと、
着地時の衝撃は確かに
「柔らかく」感じられます。
この感覚から、
衝撃が減っている
関節への負担も軽い
と考えられてきました。
しかし、
ここで重要なのは
「感じる衝撃」と「体内で生じる力」は一致しない
という点です。
クッションは、
衝撃を減らすのではなく、
衝撃を感じにくくしているだけ
という可能性があります。
研究が示す、クッションと関節負荷の関係

クッションは「保護」ではなかった?
1997年、
British Journal of Sports Medicine に掲載された
・クッション性
・機能性
を強調した
高価な運動靴を使用している群で、
傷害の発生率が高い
という結果が報告されました。
研究者らは、
次のような点を指摘しています。
クッションによって
衝撃の感覚が鈍る
その結果、
着地や踏み込みが粗くなり、
体に加わる力が増大する
可能性がある
つまり、
「守られている感覚」が動作を変えてしまう
という構造です。
なぜクッションが負荷増大と関係するのか

この現象は、
ハーバード大学の
詳しく検討されています。
Nature に掲載された研究では、
クッション性の高い靴を履いた場合、
かかと着地になりやすい
上下動が大きくなる
といった変化が観察されました。
これにより、
床反力のピークが
大きくなる
傾向が示されています。
重要なのは、
衝撃が消えているわけではなく、
体の中で処理される場所が変わっている
という点です。
足底感覚の低下が動作を変える

クッションが厚くなると、
足底からの感覚入力が低下
します。
地面の硬さ
接地のタイミング
荷重の偏り
こうした情報が
脳に伝わりにくくなると、
着地が遅れる
踏み込みが強くなる
といった変化が起こりやすくなります。
その結果、
足部で吸収されるはずだった力が
膝や股関節、腰へと
回される
可能性が生じます。
膝関節との関係 ― 裸足歩行研究から

この点は、
膝関節の研究からも示唆されています。
2006年、
裸足歩行
通常の靴を履いた歩行
を比較し、
裸足の方が
膝関節への力学的負荷が
有意に低下する
と報告しました。
研究者らは、
現代的な靴が
下肢関節の生体力学を
悪化させている
可能性に
言及しています。
クッションが「悪」なのではない
ここで誤解してはいけないのは、
クッションそのものを否定
しているわけではない
という点です。
外傷直後
痛みが強い時期
移行期間
こうした状況では、
クッションが役立つ場合もあります。
問題になるのは、
誰にとっても
常に
長期間
クッション性の高い靴が
最適だと考えられていることです。
まとめ
靴の問題は「衝撃」ではなく「使い方」

クッション性の高い靴は、
衝撃を和らげている
ように感じられます。
しかし研究が示しているのは、
衝撃が消えているわけではない
体の中で処理のされ方が変わっている
という事実です。
足底感覚が低下すると、
動作は無意識のうちに変化します。
結果として、
足ではなく
膝や腰が
その負担を引き受ける
構造が
生まれる可能性があります。
大切なのは、
どんな靴か
ではなく、
足が
動けるか
働けるか
使われているか
という視点です。
この視点から見ると、
足指や足底の問題は
「形の問題」ではなく、
機能が使われなくなった結果
として理解できるようになります。
その考え方は、
足指へのアプローチ全体にも
つながっていきます。



