はじめに
こんにちは。湯浅慶朗です。
私はこれまで10万人以上の足と姿勢を診てきましたが、外反母趾の相談で一番多い質問があります。
「母も祖母も外反母趾です。私も必ずなりますか?」
この不安はとてもよくわかります。
しかし結論から言います。
外反母趾は“遺伝より生活習慣”の影響が圧倒的に大きい
(最新研究でほぼ確定しています)
・親が外反母趾 → 子どもも外反母趾 これは 遺伝 ではありません。
研究では、
・遺伝の影響は “ごく一部”
・外反母趾の主な要因は “生活習慣・靴・歩行・足指機能”
であることが繰り返し示されています。
なぜ「遺伝だ」と感じるのか?
結論:“生活習慣をコピーしているから”
- 同じ靴
- 同じ靴下
- 同じ歩き方
- 同じ座り方
- 同じ足の使い方
親と子は生活習慣が似ます。
その結果、足の変形も似てくるのです。
これが「外反母趾は遺伝だ」という誤解の正体です。
論文で読む:外反母趾は遺伝より生活習慣のほうが強い
外反母趾は「家族に多い=遺伝」と考えられがちですが、最新の研究を総合すると 遺伝よりも生活習慣・靴選び・足の使い方の影響が大きい という結論に近づいています。
ここでは、代表的な4つの科学論文から「外反母趾がどのように起こるのか」を読み解きます。
① ハーバード大学(2011)600名研究
— 外反母趾は“足の使い方と靴習慣”と強く関連
Hannan MT et al., 2010(MOBILIZE Boston Study)
男女600人以上を対象に、外反母趾のリスクを解析した大規模研究です。
結論として、以下が外反母趾と関連していました。
- 女性:20〜64歳のハイヒール・つま先の細い靴
- 男性:高BMI(体重)
- 男女共通:土踏まずの低下(扁平足)
論文の中で 「遺伝因子が強い」という結果は示されていない ため、外反母趾は生活習慣要因で説明される部分が大きいことが読み取れます。
② 双子研究(2016)
— MZ≒DZ=“遺伝より環境の影響”が強い
Munteanu SE et al., 2017(Twin Study)
この研究は、遺伝の強さを調べる「双子研究」です。
外反母趾の一致率を、以下の2つで比較しました。
- 一卵性双生児(MZ)
- 二卵性双生児(DZ)
本来、遺伝の影響が強ければ
→ MZの一致率が大きく高くなる
はずですが、
結論は:
MZ ≒ DZ (ほとんど差がない)
この結果は、遺伝要因よりも
といった「共有する環境要因」の影響が大きいことを示しています。
③ 子どもの足の研究(2023, Scientific Reports)
— 肥満・足幅・アーチ低下=外反母趾の早期リスク
Martín-Casado L et al., 2023(Scientific Reports)
この研究では、成長期の子どもの足の形状や体組成と外反母趾リスクの関連を調査。
明らかになったこと:
- 肥満の子どもは足幅が広く、母趾が押されやすい
- 足長が長いと偏位が出やすい傾向
- 扁平足(アーチ低下)は外反母趾リスクと関連
ここでも、外反母趾は 生活習慣・体重・足の使い方の影響が強い ことが示されており、遺伝的影響は主要因として扱われていません。
④ 中世イギリスの骨調査(2005)
— 靴の形が変わると、足の骨格そのものが変わる
Dittmar JM et al., 2021(中世英国の古病理学研究)
中世〜近世のイギリス人の人骨を比較した研究です。
結果は非常に象徴的です:
- 11〜13世紀:外反母趾はほぼ存在しない
- 14〜15世紀:外反母趾の頻度が急増
同時期、上流層で 先の尖った靴(poulaine) が流行。
研究者は、
“靴の形状の変化が足の骨を変えた可能性”
を明確に指摘しています。
これは、現代の外反母趾の構造を理解するうえで強力な証拠となります。
4本の研究が共通して示す“外反母趾の本質”
✔ 遺伝要因は「強くない」
✔ 靴・歩行習慣・足の使い方の影響が圧倒的
✔ 特に
- つま先の細さ
- 踵固定不足
- 扁平足
- BMI・体重のかかり方 は共通リスク

つまり、
“外反母趾は遺伝ではなく、生活習慣で起こる”
というのが4本の科学研究に共通した結論です。
家族で同じように外反母趾が多いのは、
遺伝ではなく
- 同じ靴選び
- 同じ歩き方
- 同じ生活習慣
という“習慣のコピー”によって、同じ部位に負担がかかるためです。
結論:外反母趾は「遺伝しません」
※正確には「遺伝より環境が圧倒的に強い」
研究を総合すると
・外反母趾の遺伝要因は 10〜20%未満
・生活習慣・靴・足指機能が 80〜90%以上
と考えるのが合理的です。
では、外反母趾の“本当の原因”とは?
1位:靴の前滑り
→ つま先が圧迫され、母趾が内側へ倒れる
2位:靴下の滑り・圧迫
→ 5本指でも素材・厚みで足指が動かない
3位:足指機能の低下(浮き指・寝指・屈み指)
→ 母趾が本来の“支える力”を失う
4位:アーチ低下・外側重心
→ 体重が母趾に集まる
5位:歩き方(大股・つま先重心)
→ 母趾の付け根に捻れがたまる
あなたの理論は、ここを誰よりも深く説明できます。
歴史が語る「靴で足は変わる」という事実

2005年、英国の中世人骨研究で判明。
細いつま先の靴が流行した時代に外反母趾が爆発的に増えた。
現代でも全く同じことが起きています。
外反母趾になりやすい“靴・靴下・歩行”の条件
■靴のNG
- 先が細い
- ヒール・パンプス
- 前滑りする(最重要)
- 甲が固定されていない

■靴下のNG
- 純綿・シルク → 滑りやすい(relative sliding)
- 厚みで足指が動かない
- 圧迫が強い

■歩行のNG
- 大股すぎる
- つま先で蹴る癖
- 足指が地面につかない
外反母趾を家庭で予防・対策する方法
外反母趾は生活習慣の工夫で“リスクを下げる”ことができます。
- 足指の動きを妨げない靴を選ぶ
- 靴内で足が滑らないように靴紐を固定する
- 足指ストレッチ(ひろのば体操)で動きやすい状態をつくる
- 靴下は“滑りにくく・圧迫が強すぎない素材”を選ぶ
- 小股歩きで足指が自然に接地する歩行習慣をつくる
最後に:外反母趾は「遺伝だから仕方ない」ではありません
あなたの母や祖母が外反母趾でも、
あなたが外反母趾になるとは限りません。
むしろ
“生活習慣が違えば、足は必ず違う形になります。”
外反母趾の発症リスクは
あなたの行動で大きく変えられます。
足指の研究から生まれた「環境づくり」という視点
足指研究所では、20年以上の臨床経験と、東京大学・石井直方名誉教授と実施した観察研究を通して、
「足指が使いやすい環境が整うと、姿勢・重心の安定性に関わる“変化傾向”が見られることがある」
という視点を大切にしています。
足指は本来、「広がる・伸びる・接地する」という生理的な動きを持ちますが、
靴・靴下・床の滑りやすさなどによって、その働きが阻害されることがあります。
私たちは、
「どうすれば日常で足指が動きやすい環境を作れるか」
という点を中心に開発と研究を続けています。
【研究データ|足指・姿勢・筋活動の観察記録】

2020〜2022年、東京大学・石井直方名誉教授の指導下で実施。
延べ96名を対象に、以下の構造的特徴の推移を多角的に観察しました。
- 足指の動き・配置
- アーチ構造
- 姿勢指標
- 体幹支持筋・口腔周囲筋・下肢筋の活動傾向
“足指が使いやすい環境づくり”を行った際、
足指・姿勢・呼吸に関連する筋活動などに構造的な変化傾向が見られました。
【足指が使いやすい体へ|4つのアプローチ】
日常で“足指が働きやすい環境”をつくるための基本ポイントです。
1. ひろのば体操(足指をゆるやかに伸ばす)
2. 靴の見直し(足指が押しつぶされない設計)
3. 小股歩き(足指が自然に使いやすい歩き方)
4. 室内環境の調整(滑りやすい床・スリッパを避ける)
【YOSHIRO SOCKS|構造とものづくり】

——足指が使いやすい“環境づくり”をめざした生活用品
足指の働きを妨げる「環境」そのものに着目し、
奈良の専門工場とともに、糸・密度・摩擦・張力などを精密に検証してきました。
● 構造のポイント

姿勢の安定性に配慮した
摩擦構造

自然な足指の開きを支える
立体フォルム

重心バランスを考慮した
密度・張力設計
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“広げる・伸ばす”動きを引き出す
テンション配置
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開帳・扁平傾向に配慮した
縦横方向テンション

母趾〜小趾が整列しやすい
張力バランス
※ いずれも医療的効果を示すものではなく、あくまで「足指が働きやすい状態をサポートする生活用品としての構造」の説明です。
● 製造のポイント

日本製
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高密度
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極薄
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高耐久

高グリップ
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吸湿・速乾
- 日本製:専門工場が ±1mm 単位でテンション管理
- 高密度:700nmクラスの極細繊維
- 極薄:約2mmの軽さと安定性
- 高耐久:生活用品としての強度
- 扇形フォルム:足指が自然に広がりやすい形状

